井出草平の研究ノート

心理学

村山綾・三浦麻子『日本語版道徳基盤尺度の妥当性の検証』

www.jstage.jst.go.jp 村山綾, & 三浦麻子. (2019). 日本語版道徳基盤尺度の妥当性の検証. 心理学研究, 90(2), 156–166. https://doi.org/10.4992/jjpsy.90.17234 (c)類似した項目のみを用いて内的一貫性を高めるというよりは,内的一貫性が低くなったとし…

Lindstromによるレビュー: ケネス・ガーゲン『飽和する自己:現代生活におけるアイデンティティのジレンマ』

philpapers.org Kenneth J. Gergen の著書「The Saturated Self: Dilemmas of Identity in Contemporary Life」についてのJeffrey P. Lindstromの評論。 1. 重要な貢献 Gergenの本は、心理学における自己の概念に関する重要な貢献をしている。彼の視点は広く…

ケネス・ガーゲン『飽和する自己:現代生活におけるアイデンティティのジレンマ』

The Saturated Self: Dilemmas Of Identity In Contemporary Life作者:Gergen, Kenneth JBasic BooksAmazon 第1章 自己概念の変化 私たちが他者に自己をどのように理解させるかが重要であり、その変化は社会生活に大きな影響を与える。自己表現の語彙が増え…

Ryffの心理的ウェルビーイングについてのメモ

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/016502548901200102 Ryff, C. D. (1989). Beyond Ponce de Leon and life satisfaction: New directions in quest of successful ageing. International journal of behavioral development, 12(1), 35-55. ht…

デジタル・ウェルビーイングを計測する尺度

ウェルビーイングの捉え方の学派 Alexandrova (2015)はウェルビーイングの捉え方に3つ学派があるといっている Alexandrova, A. (2015). The science of well-being. In G. Fletcher (Ed.)The Routledge handbook of philosophy of wellbeing, (pp. 389–401).…

DASS: The Depression Anxiety Stress Scalesの日本語版の状況

DASS: The Depression Anxiety Stress Scalesについて調べてみた。 オリジナルはこちら pubmed.ncbi.nlm.nih.gov オリジナルは42項目である。 DASS-21 DASS-21は21項目の短縮版である。オリジナルの論文Lovibond and Lovibond(1995)の中ですでに作られている…

家族のアコモデーションを計測する尺度FACLIS

www.ncbi.nlm.nih.gov 要旨 親の適応 Parental accommodation(すなわち、子どもの苦痛を防止または軽減しようとする親の行動の変化)は、OCDとの関連で最も多く研究されてきた。最近の研究では、強迫性障害以外の不安診断を受けた子どもの親も収容に関与して…

不登校アセスメント尺度改訂版(SRAS-R)

link.springer.com この尺度は日本語化されており、下記の論文に収録されている。 ci.nii.ac.jp 登校拒否行動の機能を明らかにする:登校拒否評価尺度の改訂について 臨床家が子どもの登校拒否行動 school refusal behavior の主要な機能を特定するために考案…

ゲーム時間が長いと社会的能力が低くなるわけではない

ゲーム時間が長いと友達と遊ぶ時間が少なくなり、社会的能力が低くなるのではないか、という心配があったり、逆に、社会的能力が低いからゲーム時間が長くなるという推測がされたりする。この論文は6-12歳の子どもを6年間(4時点、2年おき)に追跡して検証した…

Fornell & Larcker基準とHTMT基準の使い分け

iopscience.iop.org M R Ab Hamid, W Sami and M H Mohmad Sidek, 2017, Discriminant Validity Assessment: Use of Fornell & Larcker criterion versus HTMT Criterion, Journal of Physics: Conference Series, Volume 890, 1st International Conference…

デジタル・デトックスでは幸福にもならないし、充実した社会生活が送れるわけでもない

山根信二さんのTwitter経由で知った情報(https://twitter.com/shinjiyamane/status/1359845316296470529)。 www.oii.ox.ac.uk Andrew K. Przybylski, Thuy‑vy T. Nguyen, Wilbert Law, and Netta Weinstein, 2021, Does taking a short break from Social Me…

重みづけκ係数

コーエンのκ係数(Cohen's kappa)の拡張版である。。 重みづけκ係数の使いどころ Cohen's kappaはセルの完全一致を指標化したものである。 例えば、こちらの例のように評価者が精神疾患の評価をして 1. Depression 2. Personality Disorder 3. Schizophrenia …

アドルノFスケールの次元性

ci.nii.ac.jp 西山俊彦「カリフォルニア権威主義尺度の包括的検討」 アドルノのFスケールは因子分析はされていないが、aからiまでの9クラスターに分類されている。因子分析の研究は後生になってからである。 因襲尊重(Conventionalism) 伝統的,中産階級的価…

アドルノのFスケール

en.wikipedia.org カリフォルニアFスケール(California F-scale)は、1947年にテオドール・W・アドルノらによって考案された権威主義的性格を測定するための性格検査である。F-スケールは、従来主義、権威主義的な攻撃性、反侵入、迷信とステレオタイプ、権…

キャンプではインターネット依存症は治らない(Global Times)

Global Timesの記事。Global Timesは環球時報の英語版で中国共産党の機関紙『人民日報』系列の紙である。共産党、中国政府の意向が反映された紙面づくりをしていると考えてよい。 そういったポジションの新聞がキャンプや入院をさせても依存症は治らないと主…

インターネットゲーム障害の人はストレスが高くレジリエンスが低い

www.ncbi.nlm.nih.gov イタリアの研究。ストレスに対する脆弱性とインターネット・ゲーミング障害(IGD)との関連についての論文。605名の参加者(男性=82%、Mage=24.01歳、SDage=6.11)を対象にオンライン調査を実施。 尺度 知覚ストレスは、the Perceived …

回帰分析を利用した併存的妥当性

併存妥当性に回帰分析を利用する手法があると教えてもらったのでエントリを入れておきたい。 ci.nii.ac.jp この論文はパニック障害の尺度を作成するという論文である。PDSS(Panic Disorder Severity Scale)という尺度があり、その日本語版、かつ、自記式版の…

弁別的妥当性

WikipediaのDiscriminant validityの翻訳。 en.wikipedia.org 弁別的妥当性 心理学では、弁別的妥当性は、関連していると思われない概念や測定値が実際には関連していないかどうかをテストすることがある。 Campbell and Fiske (1959) は、検定妥当性の評価…

ゲームと視覚可塑性

ゲームをしていると視力が悪くなるなどゲームのネガティブな面ばかりが言われるが、眼に良いゲームがある、ゲームを使って視力回復、視覚可塑性の実験などポジティブな研究結果もある。今回は視覚可塑性について。この種の実験系の論文は、個人的な好み以上…

アクションゲームをすると課題に対する反応が早くなり、集中力が持続し、ミスも増えない

アクションゲームに関する実験心理の論文。 www.ncbi.nlm.nih.gov https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2871325/(全文) アクションゲームとはゴッド・オブ・ウォー、Halo UT、グランド・セフト・オート、コール・オブ・デューティなどのことを指す…

10代の若者が暴力的ゲームをプレイしても攻撃性は上がらない

ゲームが暴力性を高めるのではないかという議論がある。一昔前はDoomがやり玉にあがり、現在ではFPS全体に憂慮されていることである。 www.ncbi.nlm.nih.gov 方法 12~18歳の若者43名を対象とした調査。先行研究は大学生の研究が多い。暴力的なゲームと暴力…

ゲームの熟練者の持つストレス解消法

スタークラフト2をプレイしているプレイヤーのストレスとその処理についての論文から。 Adam LobelIsabela GranicRutger ,EngelsRutger Engels, Stressful Gaming, Interoceptive Awareness, and Emotion Regulation Tendencies: A Novel Approach November …

ストレスからの回復とゲーム

1614人の参加者を対象としたオンライン調査。ゲームがストレスからの回復にどのように関連しているか調べた研究。 Leonard Reinecke, Games and Recovery: The Use of Video and Computer Games to Recuperate from Stress and Strain, Journal of Media Psy…

オープンダイアローグによる介入によりひきこもりが著効した例

オープンダイアローグがひらく精神医療作者: 斎藤環出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2019/07/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 以下は斎藤環さんが実際に介入した事例である。 最初の事例はひきこもりの男性だった。家族内暴力を振るい、家…

心理療法の介入研究の問題点と展望

オープンダイアローグのエビデンス オープンダイアローグはエビデンスが弱いと言われる。 また、オープンダイアローグはエビデンスを作るのに向いていないとも言われる。 では、介入の科学的エビデンスを作るにはどのようにすればよいか? ということを考え…

献本御礼:セイックラ、アーンキル 『開かれた対話と未来 今この瞬間に他者を思いやる』

開かれた対話と未来 今この瞬間に他者を思いやる作者: ヤーコ・セイックラ,トム・アーンキル,斎藤環出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2019/08/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 監訳者の斎藤環さんにいただきました。350ページを超える本なの…

調査における反応歪曲

Satisficeのことを書きながら、「ちゃんと調査を受けてくれない人がいる」というののは、MMPIでも似たような議論があったぞ、と思い出したので、メモをしておこうと思う。 心理尺度のつくり方作者: 村上宣寛出版社/メーカー: 北大路書房発売日: 2006/09/01メ…

パブロフの犬はベルに反応したのか

AmazonのPrime会員になっていると無料で読めるAmazon Readingを利用してみた。内海聡『大笑い!精神医学』がラインナップにありを少し読んでみた。 大笑い!精神医学作者: 内海聡,めんどぅーさ出版社/メーカー: 三五館発売日: 2015/04/17メディア: Kindle版…

フロイトはヒッピーである

フロイト先生のウソ (文春文庫)作者: ロルフデーゲン,Rolf Degen,赤根洋子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/01/10メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 46回この商品を含むブログ (42件) を見る フロイトは話のフックであって、この本にはフロイトそのも…