AmazonのPrime会員になっていると無料で読めるAmazon Readingを利用してみた。内海聡『大笑い!精神医学』がラインナップにありを少し読んでみた。
- 作者: 内海聡,めんどぅーさ
- 出版社/メーカー: 三五館
- 発売日: 2015/04/17
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
精神医学への誹謗中傷はメインテーマだが、他にも、子宮頸がんワクチンが無効で害があるかもしれない、ワクチンで自閉症が生まれる、ポリオも破傷風も同じだと主張されている。
パブロフの犬について次のような記述があった。
さて、パブロフの犬の実験、何が捏造だったのかを説明しましょう。 頰に穴をあけられた犬の中で、ベルが鳴らされたあと、唾液を出して食事を優先した犬は、30頭中2頭しかいなかったのです。犬たちがもっとも多く取った行動、それはベルを鳴らされ自由になった瞬間に研究者たちに噛みついたことでした。 このような情報の捏造、誘導行為は現代の精神医学、心理学においても日常的に行なわれています。こうした行為を精神医学や心理学は、果てしなく繰り返してきたわけです。
この話はSNSで昔流れていて情報のソースが気になっていた。インフルエンサーは内海聡であることがわかった。内海聡が流しているということは、おそらく日本語で内海よりも先に書いた人がいるはずなのだが、そこまでは見つけられなかった。
言うまでもなく、この話も当然デマである。
ジョンズ・ホプキンス医学部の医学史の研究者であるダニエル・トーデスがパブロフについての伝記を書いている。
Ivan Pavlov: A Russian Life in Science (English Edition)
- 作者: Daniel P. Todes
- 出版社/メーカー: Oxford University Press
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
私たちが良く知っているとパブロフの実験はベルを鳴らすとエサがもらえるので、犬は唾液を垂らしたというものだ。内海聡もそのエピソードに基づいて書いているが、そのエピソードそのものが誤りなのだそうだ。
トーデスによるとパブロフはベルの音に反応させて唾液を流す訓練をしたことはないそうだ。また条件反射という言葉をパブロフは使たこともないそうである。トーデスの研究が一般的に知られるようになれば、現在の心理学の教科書も書き換える必要を迫られそうである。
ちなみに、こうった誤解が生まれた原因は、ロシア語からの翻訳が粗悪であったことにあるそうだ。