井出草平の研究ノート

ゲームの熟練者の持つストレス解消法

スタークラフト2をプレイしているプレイヤーのストレスとその処理についての論文から。

Adam LobelIsabela GranicRutger ,EngelsRutger Engels, Stressful Gaming, Interoceptive Awareness, and Emotion Regulation Tendencies: A Novel Approach November 2013Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking 17(10) https://www.researchgate.net/publication/258821953_Stressful_Gaming_Interoceptive_Awareness_and_Emotion_Regulation_Tendencies_A_Novel_Approach

ja.wikipedia.org

ゲーム中で失敗するなどネガティブな感情を持った時に、ゲーム熟練者にはストレスのコーピング(処理)をしていおり、そのの方法に傾向がみられたそうだ。

結果

最も有用な戦略は以下の2点だった。

  1. ネガティブな感情の解決を求めるもの。問題解決でコーピングするもの。
  2. 他のプレイヤーからのサポートを求めるもの。

うまく対処でき効果的な対処ができた人は、自分の感情や内的状態をモニタリングする能力である内受容感覚(interoceptive awareness)が高い人であったようだ。

内受容感覚が高いと、状況を好転させるための決断をしたり、適切なサポート仲間に求めたることができたため、ストレス処理が上手くいくようだ。

内受容感覚の概念の歴史などはよく知らないが、おそらくマインドフルネスでも出てくる概念である。

www.frontiersin.org

マインドフルネスというと瞑想である。ゲームで失敗してしまったら、瞑想しなければならないのかというとそういうことではない。ほとんどのゲームでは、ストレスに直面しても自身の感情を管理し、解決に向けて努力することができたプレイヤーに報酬を与えるシステムになっているという。

個人的な考察

あまりこういったゲームには詳しくないが、確かに、ゲームをやっているとうまくいかずにストレスを抱えることもあるものの、最終的にはうまくいって、爽快感を得ることが多いと思う。ストレスを感じない簡単なゲームであれば、面白くもないので、ゲームにはストレスがある程度必要なのだろう。ただ、ストレスを感じるだけであれば、フラストレーションが溜まるだけなので、プレイヤーは次々とコントローラーを投げて怒りをぶつけるだろう。ゲームの面白さはそのあたりの匙加減なのだろうし、製作者はうまく作っているのだろう。

課題があってそれを成し遂げたということだけではなく、他のプレイヤーからのサポートというのも重要である。失敗しても仲間に救われるという体験をするのは、困難に立ち向かう仲間意識を強く持つことができる。ストレスがあっても、仲間がいるというだけで解消できるようになるのだろう。

自身の感情のモニタリングできる能力が十分あることが前提だが、ゲームの熟練者が持っているコーピング戦略には学ぶことが多いように思う。

このことはゲーム内に留まる話ではない。

日常的な生活でのストレスを解消するにも、同じようなやり方が有効だと思う。また、現在のストレスの高い社会状況では、仲間からのサポートが存在するゲームはストレス解消の方法としては非常に有効だと考えられる。ただ、ゲームをするだけではなくいくつか条件がある。

  1. 他のプレイヤーからのサポートがあるゲームを選ぶこと。
  2. 仲間を持つためにはゲームのプレイに習熟してゲーム内の適切なふるまいを学習することが必要であろう。
  3. この論文の最も力点が置かれているのは、内受容感覚であるが、おそらく感情の言語化の訓練をすることで、誰でもある程度まで感情のモニタリングは上達する。

こういった条件があえば、ゲームはストレス軽減の有効なツールになると考えられる。

尺度

感情調節質問票(Emotion Regulation Questionnaire)

22項目リッカート尺度4件法。 1. 物理的な社会的支援を求める / 感情的な社会的支援を求める / 積極的に解決を求める 2. 撤退(私は対処できないことを自分自身に認め、挑戦するのをやめる、など) 3. 受容 https://fetzer.org/sites/default/files/images/stories/pdf/selfmeasures/Self_Measures_for_Personal_Growth_and_Positive_Emotions_EMOTION_REGULATION.pdf