井出草平の研究ノート

ストレス発散のためにゲームするが、意図せざる結果としてストレスが逆に増幅する

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World of Warcraft (WoW)プレイヤーのエスノグラフィー。この例では、ストレスの少ない人はオフラインでの生活を充実させるためにWoWをプレイしているが、そうでもないケースもあるようだ。高ストレスのプレイヤーは、オフラインでの問題からの避難場所を探してオンラインゲームをプレイするが、そのためにストレスが増幅したり、生活に支障が出たりするようだ。

モデル

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ストレス発散

仕事から帰ってくると、頭の中がフル回転してしまうんですよね。仕事から帰ってくると頭の中がフル回転していて、やらなきゃいけないこと、やらなかったこと、言っておけばよかったことなどが頭の中に浮かんでいて、それが頭の中をグチャグチャにして、フォーカスを変えることができるんです.... 先ほども言いましたが、仕事から帰ってくると頭の中がグルグルしていて、WoWをプレイしていると頭の中が整理されてきます。夕方には家事や他のことに取りかかることができます。その頃には脳がシャットオフされていて、通常通りに物事をすることができます。

多くの回答者は、インタビューの例を挙げると、最近の家族の死、仕事を休んでいていつも家にいる父親の惨めさ、大切な人との別れの辛さなど、手に負えないほどの人生のストレスが、ゲームに癒しを求めすぎたことに言及していました。

ストレス増幅

ちょっとしたストレス発散のために何かから心を解放したいと思っているなら、気分転換をすることは間違いなくセラピー的な側面があると思うんだ。でも、ゲームに多くの時間を費やしているからといって、周りで起きていることや現実の生活の中で起きていることに取り組む気がない場合は、問題があると思うんだけど、それは有害だ。正直に言うと、ゲーム内の競争力を維持するためには、本当に時間を投資しなければならないし、それを回避することはできないよ。

量的分析

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雑感

モデルがSEMなので、SEMで分析すれば良かったのではないかと思う。インタビューと計量分析が掲載されているが、エスノグラフィーだけでは経時的な変化(ストレス発散→意図せざる結果としての生活の支障の発生)のインタビューを取った方よかったのではないだろうか。

先行研究

問題のあるオンラインゲームのインターネット利用(PIU)が、知覚されたライフストレスの行動的症状であることを示唆している以前の研究(Griffiths, 2005; Widyanto & Griffiths, 2006)に基づいて構築している。

多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMO)は、リラクゼーションを提供することができ、したがって、ストレスの緩和につながる(Snodgrass et al., 2012, 2013; Yee, 2006a, 2006b,2006c)。

オンライン世界に没頭することでオフラインの問題や責任から逃れようとする動機付けは、問題遊びの上位にリンクしている(Caplan, 2010; Caplan et al., 2009; Charlton &Danforth, 2007; Chou & Ting, 2003; Parsons, 2005; Seay & Kraut, 2007; Snodgrass et al.)

「レイド」のようなマルチプレイヤーの達成感重視のイベントで見られるような「ポジティブな」ストレスの覚醒状態や関与した状態もMMOプレイの大きな要因となっている(Charlton & Danforth,2007; Charlton & Danforth,2010; Snodgrassら, 2012, 2013; Yee, 2006a, 2006b, 2006c)。

そのような動機や競争的な関与は、MMOプレイの中毒性のパターンと一貫して関連している (Bartle, 1996; Charlton & Danforth, 2007; Deci, Koestner, & Ryan, 1999; Kelly, 2004; Snodgrass, Dengah, Lacy, &Fagan, 2011; Snodgrass et al al. 2012, 2013; Yee, 2006a, 2006b)。