井出草平の研究ノート

問題のあるオンラインゲーム使用のうち使用時間などネット使用に関するもので説明できるのは2%程度と軽微

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  • Caplan, S., Williams, D., Yee, N., 2009. Problematic Internet use and psychosocial well-being among MMO players. Comput. Human Behav. 25, 1312–1319.doi:10.1016/j.chb.2009.06.006

MMO-RPGエバークエスト2(EQ2)」を対象とした研究。MMO-RPGの問題のあるプレイは、ネットの使用時間などネット使用に関するもので説明できるのは2%程度であり、心理社会的幸福などパーソナリティに関するものなどの説明力は36%である、という内容。

尺度

孤独感

UCLA Loneliness Scale (Russell,Peplau, & Cutrona, 1980)

内向性

Eysenck Personality Questionnaire (EPQR-A; Francis, Brown, & Phil-ipchalk, 1992)

攻撃性

Aggression Questionnaire (Buss & Perry, 1992)

共同体感覚 ense of community

National Election Studyの標準的な質問票を使用。 自分の共同体感覚がどこから来ているかについて、3つの記述にどの程度同意しているかを評価してもらった。各項目について、参加者は3点満点で回答。(1) 「ない、しない」(2) 「強い感情はない」(3) 「ある、している」の3つの項目について、参加者は3点満点で再回答した。「一緒に仕事をしている人や学校に通っている人には共同体感覚がある」、「ネットで知り合った人には共同体感覚がある」、「近所の人には共同体感覚がある」。

(1) ‘‘No, they don’t,” (2) ‘‘It depends/I have no strong feelings,” or (3) ‘‘Yes, they do.”: ‘‘The people I work with or go to school with give me a sense of com-munity,” ‘‘The people I have met online give me a sense of com-munity,” and ‘‘The people in my neighborhood give me a sense of community.”

問題のあるインターネット使用

Generalized Problematic InternetUse Scale 2 (Caplan, 2005b)

結果

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問題のいるインターネット使用の強力な予測因子は、年齢、インターネット利用のパターン、心理社会的幸福だった。ゲーム関連変数の標準化回帰係数を調べたところ、MMOでは「没入感」が最も強いPIU予測因子であり、次いで「ゲーム内での音声技術の使用」、「週にゲームをプレイした時間数」の順であった。達成動機と社会的動機のいずれの変数もPIUの有意な予測因子ではなかった。

また、うつ病、物質依存症、行動依存症の診断は問題のあるインターネット使用の予測因子であったが、不安障害の診断は有意な予測因子ではなかった。身体的攻撃性と言語的攻撃性の両方が有意な正の予測因子であった。

私たちが注意を払うべきは、ゲーム関連の変数の2%よりもむしろ、ゲームに関連しない変数の36%です。このデータが示唆しているのは、問題のあるインターネット利用は、ほとんどがインターネット以外の要因によって引き起こされているということである。

先行研究

MMOプレイヤーを対象とした調査では、「多くのプレイヤーにとって、ゲームの社会的側面がプレイする上で最も重要な要素であった」(Griffiths, Davies, & Chappell, 2004, p. 87)という結果が出ている。

  • Griffiths, M. D., Davies, M. N. O., & Chappell, D. (2004). Online computer gaming: A comparison of adolescent and adult gamers. Journal of Adolescence, 27(1), 87–96.

Lo et al. (2005)が述べているように、「プレイヤーは匿名で静的に他者と交流し、仮想的な対人関係を形成し、仮想コミュニティを形成する」(p. 15)のである。

  • Lo, S., Wang, C., & Fang, W. (2005). Physical interpersonal relationships and social anxiety among online game players. CyberPsychology & Behavior, 8(1), 15–20.

多くの研究では、低ソーシャルスキル、内気、内向性、社会不安がすべてPIUに正の関連性があることを発見した(Anolli、Villani & Riva 2005; Caplan 2005a,2005b; Chak & Leung、2004; Ebeling-Witte et al. 2007; Robertset et al. 2000)と社会的困難を経験した個人がより高いPIUスコアを報告する可能性が高いことを示唆している。

Charlton and Danforth(2007)は、MMOゲームの問題点として、ゲームに没入することで得られる快楽(多幸感)ではなく、ゲームに没入することで得られる逃避性に関係していると指摘している。

  • Charlton, J. P., & Danforth, I. D. W. (2007). Distinguishing addiction and high engagement in the context of online game playing. Computers in Human Behavior, 23, 1531–1548.