Bengü Yücens, Ahmet Üzer, 2018, The relationship between internet addiction, social anxiety, impulsivity, self-esteem, and depression in a sample of Turkish undergraduate medical students, Psychiatry Res. 267:313-318.
データ
2017-2018年の間。クロスセクショナル。トルコ、Afyon Kocatepe大学医学部の627人の学生。
尺度
- Internet Addiction Test (IAT)
- the Liebowitz Social Anxiety Scale (LSAS)
- the Barratt Impulsivity Scale-II (BIS-II) 衝動性
- the Rosenberg Self-Esteem Scale (RSES)
- the Beck Depression Inventory (BDI)
- the Beck Anxiety Inventory (BAI)
結果
参加者の27%(n=106)がインターネット依存症群に分類され、73%(n=286)が非インターネット依存症群に分類。インターネット依存症群では3.3%(n=13)が高水準、23.7%(n=93)が中等水準のインターネット依存症だった。
属性で関連がなかったものが以下。
- 性別
- 出世地
- 試験の成績
- アルコールの使用
- ニコチンの使用
- 居住場所
- 居住形態
- 宿題のリソース
- オンラインの時間
関係があったものは以下。
- 家族の平均年齢(高い)
- 年齢(高い)
線形回帰モデルにおいて、IATスコアを従属変数とし、年齢、性別、BIS-11、LSAS-total、BDI、BAI、RSESを独立変数としたとき、LSAS-total(B=0,248、SE=0,032、β=0. 383、t=7,775、p<0.001)、BDI(B=,281、SE=,067、β=.207、t=4,208、p<0.001)、RSES(B=-,460、SE=,138、β==-.153、t=3,342、p=001)が有意で、F=24,810、p=0.000、調整済みR2=0.299であった。
ステップワイズ法による2つの階層的線形回帰モデルを行っている。
1つ目のモデルでは、LSAS-total scoreを独立変数、2つ目のモデルでは、LSAS不安領域と回避領域を独立変数としている。その結果、1つ目のモデルでは、LSAS-total score、BDI、RSESがIATを予測した(調整R2=0.291)。 436)、ステップ2(LSAS-回避とBDI)はIATスコアの45.7%(調整後R2=0.457)、ステップ3(LSAS-回避、BDI、RSES)はIATスコアの46.4%(調整後R2=0.464)を説明した。社会不安とインターネット依存症との関連は、インターネット依存症とうつ病や自尊心との関連よりも顕著であり、特に社会不安の回避領域は、インターネット依存スコアの全分散の43%を説明し、インターネット依存症に対する顕著な予測効果があった。
議論
社会的回避傾向の強い被験者ほどIATのスコアが高く、社会不安に関連した回避が分散の43%を予測していたのに対し、うつ病と組み合わせると45%になったことであった。オンラインコミュニケーションは、不安な対面の相互作用を回避する手段を提供し、本研究で決定されたように、脅迫的な社会的相互作用を中和または回避するために採用された多くの安全行動の一つである可能性がある(Lee and Stapinski, 2012)。
- Lee, B.W., Stapinski, L.A., 2012. Seeking safety on the internet: relationship between social anxiety and problematic internet use. J. Anxiety Disord. 26, 197–205. doi:10.1016/j.janxdis.2011.11.001
この研究の医学生の標本ではインターネット依存症の重症度は衝動性と相関していなかった。Dalbudak et al. (2013) は、インターネット依存症の重症度が衝動性と関連し、衝動性はInternet Addiction Scale(IAS)スコアの有意な予測因子であった。
- Dalbudak, E., Evren, C., Topcu, M., Aldemir, S., Coskun, K.S., Bozkurt, M., Evren, B., Canbal, M., 2013. Relationship of internet addiction with impulsivity and severity of psychopathology among Turkish university students. Psychiatry Res. 210, 1086–1091. doi:10.1016/j.psychres.2013.08.014
本研究では、インターネット依存症の者は有意に低い自尊心であり、自尊心はインターネット依存症は相関していたが、自尊心の尺度で説明された分散はわずかであった。AydınandSar (2011)は自尊心との関連を示しているが、Armstrong et al.(2000)や Niemz et al. (2005) は関連を示していない。
雑感
オンラインでどの程度時間を過ごすかと、インターネット依存の度合いには関連はないというところが興味深い。Caplan et al. (2009) は、問題のあるインターネット使用の分散の2%がオンライン活動によって説明されたが、分散の36%は、個々の「心理的プロファイル」説明されたとしている。
- Caplan, S., Williams, D., Yee, N., 2009. Problematic Internet use and psychosocial well-being among MMO players. Comput. Human Behav. 25, 1312–1319.doi:10.1016/j.chb.2009.06.006
先行研究との違いは医学生という標本の特殊性が多少なりとも関係していそうだ。医学生という社会的な属性が均質な人たちの調査ではなく、様々な人たちを調査するとどのような結果が出てくるか、という点には興味がある。おそらく不安で説明される分散は大きいのだろうが、他の要因も出てくるだろう。これは社会学的な問である。
分析では、ステップワイズ回帰分析が使われているが、最近はLassoやリッジ回帰が推奨されていると思うので、分析法は再考が必要かもしれない。あくまで一般論だが、ステップワイズ回帰、Lasso、リッジ回帰の結果はわりと違う印象がある。
臨床面では、不安が分散の多くを説明するという結果が意味していることは、認知行動療法が有効であるということだ。特に認知療法の部分に価値が見いだせる。文中にも下記のような記述がある。
インターネット依存症の評価では社会不安やうつ病を考慮に入れるべきであり、治療過程においてこれらの特徴を無視してはならない。認知行動療法(CBT)はインターネット依存症の治療に有効であり、時間管理能力の改善、感情、認知、行動症状へのプラスの効果があると結論づけられている(Young, 2007)。
- Young, K.S., 2007. Cognitive behavior therapy with Internet addicts: treatment outcomes and implications. CyberPsychology Behav. 10, 671–679. doi:10.1089/cpb.2007.9971
インターネットのヘビーユーザーではなく、嗜癖的な使用をしている人の不安が高いことは理路としてはよくわかるし、その人たちにCBTが有効なのも説得的である。不安が高くてネット依存的であっても生活が成り立つならそれはそれでいいではないか、という反面、場合によっては不安が高いと生活が成り立っていかない場合もあるだろう。もちろんインターネットはネガティブなことばかりではなく、不安を軽減したり、生活を豊かにしている側面があることも忘れてはならない。
といったことを考えていくと、臨床的な問いは結局のところ、不安症/不安障害の臨床の取り組みとほとんど同じものになっているように思う。