井出草平の研究ノート

DASS: The Depression Anxiety Stress Scalesの日本語版の状況

DASS: The Depression Anxiety Stress Scalesについて調べてみた。

オリジナルはこちら

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

オリジナルは42項目である。

DASS-21

DASS-21は21項目の短縮版である。オリジナルの論文Lovibond and Lovibond(1995)の中ですでに作られている。

日本語版

DASS フルバージョン
www2.psy.unsw.edu.au

DASS-21
http://junhara.net/nodasemi/dass21.pdf

DASS 日本語版の妥当性の検討

この2つの学会発表で妥当性の検討が行われているらしい。

jglobal.jst.go.jp

jglobal.jst.go.jp

この2つの学会発表要旨はCiNii、 JGLOBAL、学会のウェブサイトにもなく、国会図書館にも納品されておらず、確認がされない状態にある。

ndlonline.ndl.go.jp

別のグループの研究

jglobal.jst.go.jp

https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2017/0076s1/252/0229-0229.pdf

そのパイロット調査ではDepression Anxiety Stress Scalesを使用した。その尺度の日本語訳版は尺度を開発した研究者グループによってウエブ上に提供されてはいるが、その信頼性と妥当性は検証されていない。そこで、この尺度を中学生に適応した場合の内的性整合性と構成概念妥当性について検討したので報告する。

内的性整合性と構成概念妥当性は確認されていないようだ。

【結論】
Depression Anxiety Stress Scalesの日本語版を中学生に用いる場合には、ウエブ上に掲載されている質問項目を修正して使用する必要があることが明らかとなった。

注意が必要であるようだ。

DASS-21 日本語版の妥当性の検討

妥当性検討の書誌はこちら。

jglobal.jst.go.jp

複写ができる。

また国会図書館にも所蔵が確認できる。

ndlonline.ndl.go.jp

こちらの内容は確認できそうだ。

DASS-15

おそらく日本語翻訳チームが作成した短縮版のようだ。
こちらの論文で使用されている。

  • Adachi, Keiichiro, Hironori Yada, and Ryo Odachi. 2021. “Examination of the Japanese Version of the Fear of COVID ‐19 Scale among Adults Using Classical Test Theory and Item Response Theory 1 2.” Japanese Psychological Research. https://doi.org/10.1111/jpr.12398. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdfdirect/10.1111/jpr.12398

  • Adachi, K., & Ueno, T., (2011). Validation of the Japanese DASS (Depression Anxiety Stress Scales) 1. Proceedings of the 24th Annual Convention of the Japanese Association of Health Psychology (Tokyo, Japan), 144. (In Japanese.)

  • Adachi, K., Yoshino, M. & Ueno, T. (2013). Validation of the Japanese DASS (Depression Anxiety Stress Scales) 2. Proceedings of the 26th Annual Convention of the Japanese Association of Health Psychology (Hokkaido, Japan), 125. (In Japanese.)

この2つの学会発表は先に示したものを英語にしただけなので、中身の確認はできない。
しかし、下記の2014年の科研報告書でも妥当性や信頼性が示されていないため、2011年と2013年の論文でそれらが示されているということはなさそうだ。

科研報告書でのDASS-15

2014年(平成26年)3月の報告書でDASS-15の開発について触れられていた。

https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-23653216/23653216seika.pdf

サンプルは大学生443名・社会人290名・精神科クリニックに通院するものであり、因子分析をして項目数を減らしたこと、BDI-IIとSTAIとの相関を測ったことが記載されている。相関係数だけ測って妥当性や信頼性の検討を行うというMTMM Matrixになるが現実的には不可能である。DASS-15に関しては妥当性や信頼性の検討がされていないようだ。

問題点

すべての資料が手元にあるわけではないが、少なくとも言えることは尺度の信頼性・妥当性に関しては論文として公刊されないと、示したことにはならないということである。
DASS日本語版を使っている論文はすべてに問題を抱えることになる。

またDASS-15に関しては妥当性・信頼性は確認されていない。下記の論文では"Fear of COVID ‐19 Scale"との関連が示されていたが、妥当性・信頼性が確認されていない尺度を新しい尺度と比較検討するというは不適切である。

  • Adachi, Keiichiro, Hironori Yada, and Ryo Odachi. 2021. “Examination of the Japanese Version of the Fear of COVID ‐19 Scale among Adults Using Classical Test Theory and Item Response Theory 1 2.” Japanese Psychological Research. https://doi.org/10.1111/jpr.12398.