併存妥当性に回帰分析を利用する手法があると教えてもらったのでエントリを入れておきたい。
この論文はパニック障害の尺度を作成するという論文である。PDSS(Panic Disorder Severity Scale)という尺度があり、その日本語版、かつ、自記式版のPDSS-SR-Jを作成するというもの。
回帰分析が利用されているのは、PDSS-SR-JとCGI-Sとの併存妥当性のところである。
CGI-S
CGI-S(Clinical Global Impressions-severity Illness Scale)は精神障害の重症度を1(正常)~7(最重度)の7段階で評価する尺度である。
下記分析
下記のものは、パニックのPDSS-SR-Jを縦軸、重症度のCGI-Sを横軸にとったプロットである。
本文には下記のように書いてある。
次に併存的妥当性に関しては, まずCGI-S得点とPDSS-SR-J得点の回帰分析を行ったこ ろ,Pearson の相関係数は0.85 となり有意な相関を認めていた.また,CGI-S得点をX 軸,PDSS-SR-J得点をY軸とした場合の散布図をFig2 に示した.回帰式はy=6.1x-13.4で表現され,これはPDSS-SR-J得点が6点変化するとCGI-得点が1点変化することを示している.この結果から,CGI-Sの軽症はPDSS-SR-J得点が5点前後,中等症は11点前後,重症は17点前後にあたると概算された. 一方で,CGI-S得点群別のPDSS-SR-J得点の平均はCGI-Sの軽症(3点)が4.8 点(n=58),中等症(4点)が11.1 点(n=17),重症(5点)が16.9 点(n=18)であり,一元配置分散分析において各CGI-S得点群別のPDSS-SR-J得点に有意差が認められ(p < 0.001),Scheffeによる多重比較の結果,CGI-Sの軽症,中等症,重症の3 群間ですべての比較において有意差が認められた(p<0.001).
何をしているかというと、要するに予測式である。
重症度 | PDSS-SR-J得点 |
---|---|
軽症(3) | 5点前後 |
中等症(4) | 11点前後 |
重症(5) | 17点前後 |
重症度が分かればパニックの度合いもわかるということである。 パニックの度合いが分かれば重症度もわかるため、併存的妥当性ということになるわけだ。
併存的妥当性を確かめのによく使われるのは相関係数であるが、その代わりに単回帰をしてもよいということだろう。目的が違うので、代替というわけにはいかないが、単回帰の方が直感的にわかりやすいというのはありそうだ。
予測的妥当性
余談だが、予測的妥当性という言葉もあるらしい。例えば、新入社員にテストを実施し、その後の仕事のパフォーマンスを予測できれば、予測的妥当性があるといえるらしい。「併存的」はだいたい同時に計測したもの、「予測的」は計測に時差があり、予測の要素があるものである。
Samuel Messickによる妥当性モデルを反映したStandards for Educational and Psychological Testingでは予測的妥当性という言葉は使われていないらしい。妥当性を裏付ける "テストスコアとその他の変数との関係に基づくエビデンス"(validity-supporting "Evidence Based on Relationships [between the test scores and] Other Variables.")という言葉が使われているようだ。そのままの表現で術語は使わないといったところだろうか。