- Tian, H., & Wang, Y. (2023). Mobile Phone Addiction and Sleep Quality among Older People: The Mediating Roles of Depression and Loneliness. Behavioral Sciences, 13(2), 153. https://doi.org/10.3390/bs13020153
研究の背景と目的
スマートフォンは高齢者の日常生活に欠かせない存在となっている一方、過度の依存は睡眠の質を低下させる懸念がある。本研究は、中国の高齢者459名を対象に、モバイル依存と睡眠の質の関係を調査し、その背後にある抑うつと孤独感の媒介効果を明らかにすることを目的とした。
方法
主な結果
直接効果
- モバイル依存は高齢者の睡眠の質を有意に悪化させた(β = 0.22, p < 0.001)。
媒介効果
全体像
議論
- スマホの過剰使用は認知・行動・生理的覚醒を高め、睡眠リズムを阻害する。
- 抑うつは注意力低下や日中の眠気を引き起こし、睡眠をさらに乱す。
- 孤独感は現実の対人交流の不足から生じ、過度のオンライン交流依存によって増幅され、睡眠の悪化につながる。
- 文化的背景(中国の高齢者コミュニティ)に依存する側面もあるため、他国での再検証が必要とされる。
結論
- 高齢者のスマホ依存は直接的に睡眠の質を低下させるだけでなく、抑うつと孤独感を介して間接的にも悪影響を与えることが確認された。
- 適度な利用は交流促進などの利点がある可能性を残しつつも、過度な使用は「心身の悪循環」を生み出す。
- これは「デジタル・ゴルディロックス仮説」を支持する結果であり、適度な利用は望ましいが、過剰な使用は睡眠と精神健康に有害であることを示している。