- Russoniello, Carmen V., Matthew T. Fish, and Kevin O’Brien. 2019. “The Efficacy of Playing Videogames Compared with Antidepressants in Reducing Treatment-Resistant Symptoms of Depression.” Games for Health Journal 8 (5): 332–38.
治療抵抗性うつ症状に対しての治療効果の比較がされた論文。second antidepressant medicationとあるので、1剤目が不発だった時の次の抗うつ剤(いわゆるスイッチ)だと思われる。
- 2つ目の抗うつ薬を服薬する群
- ゲームをする群
ゲームはPlants vs. Zombiesが選ばれている。
計測と設定
PHQ-9の頻回測定。
ゲームと薬の選択は患者によって選ばれている。
結果
抗うつ薬群の治療抵抗性うつ症状は有意に改善された。注目すべきは、ゲーム群の治療抵抗性うつ症状が、T1とベースラインを除くすべての測定時刻において、対照群より有意に改善したことである。 また、抗うつ薬群の行った米国国立精神衛生研究所(NIMH) のうつ病に関してのウェブサイトを閲覧する行動とに比較して、ゲーム群の1回30分のプレイは、急性期の治療抵抗性うつ症状の減少に有意に有効であった。
PvZ(ゲーム)と2番目の抗うつ薬の4時点での比較
PHQ-9の推移
雑感
ゲーム療法の有望さがよくわかる論文である。
ただ、いくつか問題点があるように思われる。
一つ目はセッティングの問題である。ゲーム群はPlants vs. Zombiesというゲームに統一されているが、抗うつ剤群は統一されておらず、どのような薬を飲んでいるのかも分からないため、実際のところよくわからない、のである。
用語として問題が残るのは治療抵抗性うつ症状という用語である。治療抵抗性うつ病は2種類の異なる抗うつ剤を服用しても効果が見られないという定義が通常使われるため、1つ目の抗うつ剤が不発だったとしても、治療抵抗性とは呼ばないルールになっているからだ。そのあたりについてちゃんと書いていなかったのが残念なところ。
きちんと統制すると抗うつ薬にゲームが勝てるはずはないため、心理療法との対決をセットするのが、研究として成立するのではないかと思った。心理療法は高価であるが、ゲームは安価であるため、医療費の節減という点からも正しいセッティングだろう。