可知悠子ほか「摂食障害患者におけるアレキシサイミアの特徴」

可知悠子・前田基成・笹井惠子・後藤直子・守口善也・庄子雅保・廣山夏生・瀧井正人・石川俊男・小牧元,2006,
「摂食障害患者におけるアレキシサイミアの特徴」
『心身医学』 46(3),215-222.


アレキシサイミアと摂食障害についての論文。
以前のエントリはこちら。

 今回の調査では,摂食障害患者におけるアレキシサイミア傾向ならびに食行動異常について,健常女子学生を対照群として比較検討した.その結果,アレキシサイミア傾向については,摂食障害患者群は各病型間で統計的に有意な差はみられないものの,全体として対照群よりアレキシサイミア傾向が強いことが示された.特にTAS−20の下位尺度である"感情の同定困難"と"感情伝達困難"において,摂食障害患者群が対照群よりも高値を示した.さらに,"感情の同定困難"とEAT−26の下位尺度"ダイエット"と"過食と食べ物への没頭"の間に正の相関がみられ,"感情の同定困難"が摂食障害の症状と最も関連があることが示唆された.

他の論文と類似した結果が出ている。

 今回の結果から,TASの総得点および下位尺度とBMIの間に相関がみられなかった.これは,アレキシサイミアはBMIとは関連がないという過去の報告と一致する.


TASとBMIとの相関がないというのは、例えばやせてればやせてるほどアレキシサイミアの傾向が強いという訳ではないということだ。同じく病型(拒食や過食)との相関もないため、アレキシサイミアに関しては摂食行動に問題がある人というカテゴリーでの相関を考えれば良いのだろう。


過去の報告とはこちら*1

アレキシサイミアと摂食障害の関連は以下の4点に集約される。(「……」以下は論文とは関係ない個人的な意見)

  1. 摂食障害当事者はアレキシサイミア傾向がある
    ……感情を言語化しないことによって代わりに摂食障害という表現がなされている(心身症)
  2. 病型(拒食や過食)によって差は無い
    ……病型の差異は他の要因によると考えられる。そのことと共に、病型の違いは摂食障害社会学的説明にはあまり寄与しないのではないかと推測される。
  3. 感情の同定と感情伝達に問題がある
    ……自身の問題を認識し、それを言語化することにガス抜き的な意義がある。平たく言えば愚痴ることが非常に重要。
  4. 特に感情同定困難が摂食障害との関連が指摘される
    ……感情を他者に伝えるよりも、まず自身の問題を見極めることに状態改善のポイントがある。

日本語TAS−20の問題点についてメモ。

日本語版TAS−20における"外的志向"としてあらわされる因子が一つの概念ではなく,いくつかの概念に分離できる可能性などが考えられ,本因子の結果の解釈には注意が必要であろう.EAT質問項目のα係数については,特に問題なかった.


日本語版のTAS−20の"外的志向"はクローンバッハのαの値が低く、改良の余地があるようだ。英語版には無いので、翻訳で解決する問題なのか、文化的変数が関わっている問題なのかだろう。改良を望みたい。
摂食障害との関連に関しては、感情の同定と感情伝達の2つの因子のみが関連しているというのが英語・日本語論文通しての指摘なので、ひとまずは外的志向の内的一貫性の問題はスルー出来る。



日本語版TASの論文を読まなきゃ。

  • 小牧元・前田基成・有村達之・中田光紀・篠田晴男・緒方一子・志村翠・川村則行・久保千春,2003,「日本語版The 20-item Toronto Alexithymia Scale (TAS-20)の信頼性,因子的妥当性の検討」『心身医学』 43(12),839-846.

*1:Rastamkの方は昨日のエントリでも扱っている