井出草平の研究ノート

マートンのアノミー論に関する覚え書き


まだ書き中


社会理論と社会構造

社会理論と社会構造


『社会理論と社会構造』に収録されているマートンアノミー論の論考。


マートンアノミー論は社会学理論の中で最も有名なものの一つであるが、もっとも批判の多い理論の一つである。
本エントリは読書会に向けてり覚え書きであるが、ひとまず、デュルケム研究者のフィリップ・ベナールによるマートンアノミー論についての論文を足がかりにしたい。


所収はフィリップ・ベナール『デュルケムと女性、あるいは未完の『自殺論』』第3章「アノミー研究におけるマートン」。

 「社会構造とアノミー」という表題のもとに、マートン理論の侯初の形の説明が発表きれるのは一九三八年である(マートン、一九三八)。この境初の形の説明と以後のものとの相適は後で明らかにするが、後に加えられる修正がどれほどの大ききであったか概略をつかむために、きしあたってこの最初の論文は全体として、同一の表題のもとでずっと後に発表きれたテクストとは完全に別物であることに注意する必要がある。この最初の論文は完結に書かれているので、のちの他のテクストよりも、逸脱の社会学社会学理論の論文選には、しばしば好んで再録されている。
 それから十一年後になって、新たな形のアノミーの説明が「社会構造とアノミー・修正と拡張」という表題で、家族論論集(マートン、一九四九)のなかで発表される。若干のデイテイル(4)をのぞけばほとんど同一のテクストが、同年に第一版が刊行される『社会理論と社会構造』のなかに再録されるが、その表題は一九三八年の最初のテクストのそれと同じなのである。同じ一九四九年には、一九三八年のテクストがもうひとつの論文選(ウィルソンとコルブ、一九四九)に再録されていることに、注意する必要がある。
 一九五六年には、前に開催された青年非行についての討論集会の記録が公刊されたが、そこでのマートンの研究報告「社会・文化的環境とアノミー」および討論のさいのかれの多様な発言が収録されている(マートン、一九五六)。
 一九五七年、『社会理論と社会構造』を改訂するにさいしてマートンは、一九四九年のテクストを再録しているが、そのさい一カ所のみ修正した(5)。またかれはそれに「続・社会構造とアノミ−の理論」と表題されるほぼ同じ長さの新たな章を付け加えている(マートン、一九五七a)。(ベナール 76-7)


1957年の改訂によって1箇所訂正されたのは以下の点である。

マートンはほぼ二頁の追加を行なっており、この追加のなかには、革新についての批評として、アメリカ人について書かれたアンブローズ・ビアスの文章からの長い引用がある。この補遺はなんらかれの議論を修正していない。この論文のあとの部分で、このテクストをその最初の発表の日付(一九四九年)により示すのはこの理由による。このことは「続・社会構造とアノミー」(一九五七a)との区別を容易にしてくれると同時に、より入手しやすい一九五七年版の頁付で参照させてくれる。さらに、一九六八年に出る増補版の『社会理論と社会構造』では、アノミーについてのテクストでは、なんらの修正もなされていない。(ベナール 227)


現在日本語に読めるのは、1957年の改訂によって1箇所訂正され、「続」が付け加えられたバージョンということになる。


さて、このマートンアノミー論批判を最も根本的に批判したのは、ハラリーである。


マートンによって示されている「+」「−」という記号の意味が一定していないという批判。
ある時は拒否と代替(革新)であり、ある時は無差別(儀礼主義での目標)である。理論的には杜撰であることを批判している。


また、クリナードによるとマートンアノミー論批判が11個存在している。


Cloward & Ohlinによる追加。


Delinquency and Opportunity: A Study of Delinquent Gangs (International Library of Sociology)

Delinquency and Opportunity: A Study of Delinquent Gangs (International Library of Sociology)


Webcat, Pontell,Social Deviance: Readings in Theory and Research (5th Edition)にCloward & Ohlinの切り出しがある。読書会ではこれを使うか。

 この図式はいくつかのやり方で充実させることができよう。たとえばクロワードとオーリン(一九六〇)に従って非合法的手段の獲得可能性とその使用を考慮することや、あるいはさらに合法的手段を利用するにあたり少しずつ異なる可能性を考慮にいれるためには不十分であるとしてプラスとマイナスという単純すぎる二分法を拒否することが、それである。(ベナール 96-7)


マートンアノミー論はいわゆる「中範囲理論」に相当する。


中範囲理論」に関連して、最近の論文を一つあげる。

  • 高坂健次,2006,「社会学における理論形成―いま、何が必要か―」『社会学評論』57(1): 25-40.

文献メモ


アノミー尺度

L Srole,1956,
Social Integration and Certain Corollaries: An Exploratory Study,
American Sociological Review.


無規範性尺度

Dwight G. Dean,
Alienation: Its Meaning and Measurement
American Sociological Review, Vol. 26, No. 5. pp. 753-758. 
John Horton,1964
The Dehumanization of Anomie and Alienation: A Problem in the Ideology of Sociology,
British Journal of Sociology, Vol. 15, No. 4  pp. 283-300