うつの症状としての気分反応性

非定型うつ病には4つの学派があり、それぞれ自説の正しさ主張している。コロンビア大学ニューサウスウェールズ大学、ピッツバーグ大学、ソフト双極スペクトラムの4つだ。このうち気分反応性を重視するのはコロンビア大学、MAOIの特異的効果に着目するのはコロンビア大学である。ピッツバーグもMAOIには着目するが気分安定化薬の方を重視している。

ちなみにDSM-IVで採用されている非定型エピソード、DSM-5で採用されているエピソードの"With atypical features"はコロンビア学派のもので、気分反応性が必須条件である。ただ、この気分反応性に対しては批判が出されている。ちなみにADは非定型うつ病(atypical depression)の略語である。

非定型うつ病--不安障害との併発をめぐって
貝谷 久宣 
精神医学 52(9), 840-852, 2010-09-00 

近年,DSM-IV-TRの診断基準の正当性に疑問を投げかける研究が提出されている。ADの必須条件である気分反応性は,うつ病の半数以上に認められる。大うつ病エピソードを満たすほどではない軽症慢性うつ病1,324名中755名(57%)に気分反応性が認められた(Goodwin & Olfson 2001)。PosternakとZimmermanは,579名の大うつ病の71.7%に気分反応性を認めた(Posternak & Zimmerman 2002)。また,再発性うつ病の80%以上に気分反応性があったとの報告もある(Thase et al. 1991)。前述のPosternakとZimmerman(Posternak & Zimmerman 2002)の研究では,大うつ病中でADは22.5%であり,その症状分析がなされた。ADの副症状の4症状間には相関関係が認められた。すなわち,過食と過眠(p=0.03),過食と鉛様まひ(p=0.02),鉛様まひと拒絶過敏性(=0.03)で有意な相関関係があった。しかし,必須症状である気分反応性と4つの副症状のどれとも相関が認められなかった。
さらに,気分反応性があってもなくても副症状を2つ以上持つ割合は変わらず,気分反応性がADに特異的であることを示すことができなかった。

ちなみに、Goodwin & Olfsonはコロンビア大学、Posternak et al.はニュー・サウス・ウェールズ大学、Thaseはピッツバーグ大学の学派である。PosternakとZimmermant(2002)では大うつ病であっても、7割に気分反応性があると述べている。それを割り引いて考えてもうつ病には気分反応性はよくあるようなのだ。特にThase et al.(1991)が指摘するように、反復性の経過を取るもの(そしておそらく持続性でかつ軽度のもの)では気分反応性は高くなるはずである。この傾向はコロンビア大学のGoodwin & Olfson(2001)でも認める方向になっている。


学派によって数字や主張が異なるのは値引いて考えることにしても、これらの文献は気分反応性を考えるときには非常に重要な資料になるように思われる。つまり、反復性のもの、持続性かつ軽症ののものでは気分反応性が表れるのはごくごく当たり前で、むしろ「ずっとうつ病相」であることはむしろ稀なのだということだ。


Goodwin R, Olfson M, :Treatment of panic attack and risk of major depressive disorder in the community. Am J Psychiatry l58: 1146-1148, 2001.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11431239
Posternak MA, Zimmerman M : The prevalence of atypical features across mood, anxiety, and personality disorders. Compr Psychiatry 43 : 253-262, 2002.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12107862
Thase ME, Carpenter L, Kupfer DJ. et al : Clinical significance of reversed vegetative subtypes of recurrent major depression. Psychopharmacol Bull: 27 : 17-22, 1991
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1862201