井出草平の研究ノート

アンドリュー・シュービルスキーCNNに出演し中国のゲーム規制は無意味だと説明をするもバイデン大統領に邪魔をされる

Twitterに動画が投稿されていたので、日本語に翻訳をした。

キャスター
中国当局は、子供たちがオンラインゲームに夢中になるのを防ぐために、新学期が始まった今、次のような動きをしているという。心配しているのは彼らだけではありません。世界保健機関(WHO)は、2018年にゲーム障害を正式に疾患として認めました。 WHO によるとビデオゲームの優先順位をコントロールできない、他の興味よりもゲビデオゲームを優先し、ネガティブな結果になっても、続けてしまうという時にゲーム障害になるという。アンドリュー・シュビルスキー教授は実験心理学者であり、オックスフォード・インターネット研究所の研究・所長でもあります。ご協力ありがとうございます。この話をプロデューサーから聞いたとき、私はビデオゲーム時間を制限することは、家で子供たちと一緒にすでにやっていることだと思いました。教授はビデオゲームがどれほどのダメージを与えるかということです。全くダメージを受けないのでしょうか?

シュービルスキー
そうですね、これは規制や政策、医療政策のケースだと思います。これは、規制や政策が科学の進歩をはるかに先に行ってしまったケースだと思います。このテーマに関する長年の研究から、若者や高齢者がビデオゲームをプレイする時間と精神的な健康との間に強い関係があるとは言えないことがわかっています。 証拠はありません。だからと言って、私やあなたが子供たちに合わせてビデオゲームのルールや限界を決めたり、このことに触れることに意味がないというわけではありませんが、科学的なことを考えると、中国はまったくもって間違っています。

キャスター
18歳かそれ以上の人ではなく、それよりも若い人向けの政策です。ビデオゲームには嗜癖性があり、批判があったために作られた政策なのではないでしょうか?

シュービルスキー
嗜癖という言葉を使うときには、非常に注意しなければなりません。心理学の研究で使うような専門的な精神医学的な意味があります。そして、日常的に使われる言葉で、「楽しい」とか「愉快だ」という意味もあります。私たちは、若い人たちからのエビデンスも持っています。私たちは、若い人たちに彼らがどうしているかを尋ねています。その結果、ビデオゲームのプレイ時間とメンタルヘルスや幸福度の間には、ほとんど関係がないことがわかりました。しかし、ビデオゲームをしなければならない理由は重要です。若者がやりたいと思ってやっているのであれば問題ありませんが、強迫的にプレイをしているのであれば危険です。必ずしも精神科医を部屋に呼ぶ必要はありませんが、子供と心の底から話し合うことが大切です。

キャスター
子どもがビデオゲームに費やす時間を制限しているという親御さんの話を聞いたとき、どうされますでしょうか? 社会性や運動も必要なように思います。ビデオゲームをしている間、子供の脳にはどんな影響があるのかお聞かせ願えないでしょうか?

シュービルスキー
ええ、ビデオゲームをしている時に子どもたちに何が起きているのかかということですね。ここで私たちがすべき重要なことは、ビデオゲームブラックボックスから外すことです。
自転車に乗ったり、スポーツをしたり、運動をしたりするのと同じように、これも私たちが担うべきことです。若い人たちの学習を助けるということの一つです。勉強であれ、遊びであれ、楽しみであれ、さまざまな活動をいかにバランスよく行うか。
それが私たちの仕事です。18歳になったからといっていきなり魔法のようなことは起こりません。人生の浮き沈みのバランスをとるための準備をしないのであれば、若者には不利益を与えることになるでしょう。親がスクリーン・タイムやビデオゲーム使用時間を制限していると言っても私は良くないことだとは思いまん。それは少なくとも、親が子供たちに関心を持っているということだからです。そして、子供たちにビデオゲームの使い方を教えようとするときに、親と子どもが会話をしてくれることを願っています。

キャスター
私も家でよくこの議論をしていましたよ、アンドリュー。ビデオゲームをすると何かメリットがあるのでしょうか?

シュービルスキー
ビデオゲームを実際よりも多くプレイしている人は、そうでない人よりも若干幸せであるという傾向が見られます。これは、趣味を持っている人に似ていますね。幸せな人は、そうでない人よりもビデオゲームを利用しているのかもしれませんね。ちょっとした鶏と卵の問題ですよね。
しかし、これは多くの場合、科学的にはメリットの方向性を強く支持するものではない、ということです。
ビデオゲームが人々を結びつけ、人々がビデオゲームをプレイすることでリラックスできることは明らかです。WHOがビデオゲームにまつわる精神疾患を作ることを決めたのが少々馬鹿げているのと同じように、ビデオゲームが必ず精神的な健康を向上させるものだと考えることも愚かなことだと思います。

キャスター
アンドリュー、でも、ここで言っているビデオゲームの種類にもよりますよね。非常に暴力的なビデオゲームもありますよね?

シュービルスキー
これは本当に長い間続いてきた古典的な議論です。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」やラップミュージックについても議論してきまし、コミックが若者に犯罪を行わせる可能性を高めているかという議論もありましたが、強いエビデンスはありません。

キャスター
邪魔して申し訳ありませんが、バイデン大統領の談話が入りましたので、 、、

(話が途中で終わる)

f:id:iDES:20210905140109p:plain

今週の英語

you know just as it's a bit silly that the World Health Organisation decided to create a psychiatric disorder around video games.

"a bit silly"という子馬鹿にする表現はさすがイギリス人生まれはニューヨークだそうです(追記:2021/09/07)

ROC曲線と正診率[R]

ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線は、X軸に偽陽性率、Y軸に真陽性率をとって描かれる。 ROCは、すべての陽性を識別するために、どれだけの間違いを犯しているかがわかる。

今回は正診率について。

ROC曲線下の面積およびブートストラップによる95%信頼区間についてはこちら。 https://ides.hatenablog.com/entry/2019/10/08/152927

ROC曲線のサンプルサイズの推定についてはこちら。 https://ides.hatenablog.com/entry/2019/10/09/102040

データ作成

cls = c('P', 'P', 'N', 'P', 'P', 'P', 'N', 'N', 'P', 'N', 'P',
        'N', 'P', 'N', 'N', 'N', 'P', 'N', 'P', 'N')
score = c(0.9, 0.8, 0.7, 0.6, 0.55, 0.51, 0.49, 0.43, 0.42, 0.39, 0.33, 
          0.31, 0.23, 0.22, 0.19, 0.15, 0.12, 0.11, 0.04, 0.01)
dat <- cbind(cls, score)
colnames(dat)<- c("cls","score")

データこちら。

  cls score
1   P  0.90
2   P  0.80
3   N  0.70
4   P  0.60
5   P  0.55
6   P  0.51

パッケージの読み込み

library(ROCR)

predictionの設定

pred <- prediction(df1$score, df1$cls)

performanceの設定

tpr: 真陽性率 (TP/(TP+FN) fpr: 偽陽性率(FP/(FP+TN)

perf <- performance(pred, measure ="tpr", x.measure = "fpr") ## rocのデータ,Y軸、X軸の名前

プロット

plot(perf)

f:id:iDES:20210903152836p:plain

AUCの計算

res01 <- performance(pred, measure = "auc")
res01@y.values

正診率の計算

  • 正診率=(TP+TN)/総数
  • 感度=TP/(TP+FN)
  • 特異度=TN/(FP+TN)
Cutoff <- unlist(pred@cutoffs) # カットオフポイント
TP <- unlist(pred@tp) # TP
FP <- unlist(pred@fp) # FP
FN <- unlist(pred@fn) # FN
TN <- unlist(pred@tn) # TN
Sensitivity <- unlist(pred@tp)/(unlist(pred@tp)+unlist(pred@fn)) # Sensitivity
Specificity <- unlist(pred@tn)/(unlist(pred@fp)+unlist(pred@tn)) # Specificity
Accuracy <- ((unlist(pred@tp)+unlist(pred@tn))/nrow(dat)) # Accuracy

テーブルにまとめる。

table <- data.frame(Cutoff, TP, FP, FN, TN,Sensitivity, Specificity, Accuracy)
table

結果。

   Cutoff TP FP FN TN Sensitivity Specificity Accuracy
1     Inf  0  0 10 10         0.0         1.0     0.50
2    0.90  1  0  9 10         0.1         1.0     0.55
3    0.80  2  0  8 10         0.2         1.0     0.60
4    0.70  2  1  8  9         0.2         0.9     0.55
5    0.60  3  1  7  9         0.3         0.9     0.60
6    0.55  4  1  6  9         0.4         0.9     0.65
7    0.51  5  1  5  9         0.5         0.9     0.70
8    0.49  5  2  5  8         0.5         0.8     0.65
9    0.43  5  3  5  7         0.5         0.7     0.60
10   0.42  6  3  4  7         0.6         0.7     0.65
11   0.39  6  4  4  6         0.6         0.6     0.60
12   0.33  7  4  3  6         0.7         0.6     0.65
13   0.31  7  5  3  5         0.7         0.5     0.60
14   0.23  8  5  2  5         0.8         0.5     0.65
15   0.22  8  6  2  4         0.8         0.4     0.60
16   0.19  8  7  2  3         0.8         0.3     0.55
17   0.15  8  8  2  2         0.8         0.2     0.50
18   0.12  9  8  1  2         0.9         0.2     0.55
19   0.11  9  9  1  1         0.9         0.1     0.50
20   0.04 10  9  0  1         1.0         0.1     0.55
21   0.01 10 10  0  0         1.0         0.0     0.50

正確性が最も高いのは?

max(table$Accuracy)

Answer: 0.7

感度・特異度の計算[R]

2×2の分割表における感度・特異度その他、もろもろの計算方法について。

epiRパッケージを利用する。 www.rdocumentation.org

例1

Scott et al. (2008)表1より。新しい診断テストが1586人の患者に試行された。疾患陽性の744人の患者のうち、670人が検査陽性であった。病気が陰性だった842人の患者のうち、640人が検査陰性だった。検査が陽性となる確率は? 診断に必要な数は?

テーブルの作成

dat1 <- as.table(matrix(c(670,202,74,640), nrow = 2, byrow = TRUE))
colnames(dat1) <- c("Dis+","Dis-")
rownames(dat1) <- c("Test+","Test-")
dat1

library(epiR)
rval1 <- epi.tests(dat1, conf.level = 0.95)
print(rval1)

結果

Point estimates and 95 % CIs:
---------------------------------------------------------
Apparent prevalence                    0.55 (0.52, 0.57)
True prevalence                        0.47 (0.44, 0.49)
Sensitivity                            0.90 (0.88, 0.92)
Specificity                            0.76 (0.73, 0.79)
Positive predictive value              0.77 (0.74, 0.80)
Negative predictive value              0.90 (0.87, 0.92)
Positive likelihood ratio              3.75 (3.32, 4.24)
Negative likelihood ratio              0.13 (0.11, 0.16)
---------------------------------------------------------
  • Apparent prevalence 見かけの有病率
  • True prevalence 真の有病率
  • Sensitivity 感度
  • Specificity 特異度
  • Positive predictive value 陽性適中率(陽性予測値)
  • Negative predictive value 陰性適中率(陽性予測値)
  • Positive likelihood ratio 陽性尤度比
  • Negative likelihood ratio 陰性尤度比

見かけの有病率

見かけの有病率とは、診断テストで陽性となった動物の数を、テストしたサンプルの魚の総数で割ったもの。 真の有病率とは、実際に罹患した動物の数を集団の中の個体数で割ったもの。

陽性尤度比

陽性尤度比とは、検査において、有病者が無病者よりも何倍陽性になりやすいか、を示す値。真陽性率/偽陽性率で与えられる。

summary

summary(rval1)

consoleに入れる。

                 est      lower      upper
aprev     0.54981084  0.5249373  0.5744996
tprev     0.46910467  0.4443055  0.4940184
se        0.90053763  0.8767462  0.9210923
sp        0.76009501  0.7297765  0.7885803
diag.acc  0.82597730  0.8064049  0.8443346
diag.or  28.68611185 21.5181917 38.2417364
nnd       1.51370055  1.4091004  1.6487431
youden    0.66063265  0.6065226  0.7096726
ppv       0.76834862  0.7388926  0.7959784
npv       0.89635854  0.8716393  0.9177402
plr       3.75372618  3.3206884  4.2432346
nlr       0.13085517  0.1050643  0.1629771
pro       0.45018916  0.4255004  0.4750627
pri       0.54981084  0.5249373  0.5744996
pfp       0.23990499  0.2114197  0.2702235
pfn       0.09946237  0.0789077  0.1232538

検査の感度は0.90(95%CI 0.88~0.92)。検査の特異性は0.76(95%CI 0.73~0.79)。検査陽性の尤度比は3.75(95%CI 3.32~4.24)。
診断に必要な人数はnndをみる。1.51人(95%CI 1.41~1.65)。10人の陽性者を出すためには、約15人を検査する必要がある。

例2

心筋梗塞のリスクが高い患者を特定するためのバイオマーカーアッセイが開発された。この検査法は、0から1までの連続したスケールで変化する。研究者は、バイオマーカー検査の結果が0.60以上であれば、患者は検査陽性、つまり今後12カ月間に心筋梗塞を発症する危険性が高いと考えている。

上記の情報と一致するデータを作成する。母集団における高リスク被験者の有病率が0.35であると仮定する。

set.seed(1234)
dat2 <- data.frame(out = rbinom(n = 200, size = 1, prob = 0.35), 
   bm = runif(n = 200, min = 0, max = 1))

バイオマーカー検査の結果に応じて、被験者を検査陽性または検査陰性に分類する。

dat2$test <- ifelse(dat2$bm >= 0.6, 1, 0)

2×2の表を生成。

tab2 <- table(dat2$test, dat2$out)[2:1,2:1]
rval2 <- epi.tests(tab2, conf.level = 0.95)

その他指標の計算の仕方と解釈

aprev:apparent prevalence.
aprev:見かけ上の有病率。

tprev: true prevalence.
tprev:真の有病率。

se: test sensitivity.
se:テスト感度。

sp: test specificity.
sp:テストの特異性。

diag.acc: diagnostic accuracy.
diag.acc:診断精度。

diag.or: diagnostic odds ratio.
diag.or:診断オッズ比。

nnd: number needed to diagnose.
nnd:診断に必要な数。

youden: Youden's index.

ppv: positive predictive value.
ppv:陽性適中率(陽性予測値)。

npv: negative predictive value.
npv:陰性適中率(陰性予測値)。

plr: likelihood ratio of a positive test.
plr:陽性反応の尤度比。

nlr: likelihood ratio of a negative test.
nlr:陽性反応の尤度比

pro: the proportion of subjects with the outcome ruled out.
pro:結果が除外された被験者の割合。

pri: the proportion of subjects with the outcome ruled in.
pri: 結果が含有された被験者の割合。

pfp: of all the subjects that are truly outcome negative, the proportion that are incorrectly classified as positive (the proportion of false positives).
pfp:真にアウトカムネガティブである全被験者のうち,誤ってポジティブに分類された割合(偽陽性の割合)。

pfn: of all the subjects that are truly outcome positive, the proportion that are incorrectly classified as negative (the proportion of false negative).
pfn:真にアウトカム・ポジティブである全被験者のうち,誤ってネガティブと判定された割合(偽ネガティブの割合)。

心筋梗塞のリスクが高くないと判断された被験者の割合は?

rval2$elements$pro

Consoleに入れる。

Answer:0.61 (95% CI 0.54 to 0.68).

心筋梗塞のリスクが高いと判断された被験者の割合は?

rval2$elements$pri

Consoleに入れる。 Answer: 0.38 (95% CI 0.32 to 0.45).

偽陽性の割合はどのくらい?

rval2$elements$pfp

Answer: 0.37 (95% CI 0.29 to 0.45).

偽陰性の割合はどのくらい?

rval2$elements$pfn

Answer: 0.58 (95% CI 0.44 to 0.70).

香川県ゲーム条例と韓国シャットダウン制度

ゲーム規制の代表例であった韓国の韓国シャットダウン制度が廃止となった。

gigazine.net

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の審議の時にも紹介されていた。

コンテンツ文化研究会のウェブページで閲覧が可能である。下記PDFの中に掲載されている。 icc-japan.blogspot.com

第2回検討委員会(2019年10月17日開催) 提出資料 「ネット依存・ゲーム障害の実態と対策」(久里浜医療センター院長 樋口進氏作成)

f:id:iDES:20210901113518p:plain

f:id:iDES:20210901113534p:plain

今回廃止となった制度がどの程度、参考にされたのかは知りたいところである。

ゲーム時間選択制への移行

GIGAZINEにも書かれてあるが韓国のゲーム規制が全廃されたわけではない。「ゲーム時間選択制」(게임시간 선택제)というものに置き換えていくということのようだ。

rki.kbs.co.kr

韓国語ではこちらが詳しい。(公式情報?) www.mcst.go.kr

ゲームも青少年の重要な文化の一つです。
親とお子さんが一緒に行うゲーム時間選択制で、健全なゲーム利用文化を作って行きましょう。
게임도 청소년의 중요한 문화생활 중의 하나입니다.
부모와 자녀가 함께하는 게임시간선택제가 건전한 게임이용문화를 만들어 갈 것입니다.

印象的な文章が冒頭にある。

KOREA HERALDの記事では利用率の低さが指摘されている。

文化部によると、ゲーム会社7社の40本のゲームに対する選択制の利用率は、1%から28%である。
According to the Culture Ministry, the utilization rate for the choice system for 40 games by seven game companies ranges from 1 percent to 28 percent.

www.koreaherald.com

ゲーム時間選択制はゲームタイトルごとに登録するシステムのようだが、今後は一括して登録できるように改善していくとある。一括登録で保護者の手間を省いて少しでも使ってもらおうということだ。強制力のある制度にするのではなく、保護者が子どものゲーム時間をテクノロジーで管理したい場合、国がシステムを用意したので、使ってください、という位置づけのものである。

国家がゲーム利用の管理を徹底する方向に向かう中国と、保護者が管理をする方向に舵を切った韓国の差が浮き彫りになった2021年8月だったように思う。

1920年代クロスワードパズルが起こしたモラルパニック

Guardianの記事から。モラルパニックの代表例として取り上げられる一例。
近年はSNSスマホ、ゲームが子どもたちの人生を破壊してしまうのではないかと心配してする人たちがいるが、1920年代はクロスワード・パズルだった。
そんな馬鹿なと思う方もいるかもしれれないが、一読していただきたい。当時の人々は本気で心配していたのだ。

www.theguardian.com

ふぬけた状態の労働者、気の抜けた主婦、そして読書離れ。アラン・コナーが1920年代のクロスワード大パニックについて考察する。

f:id:iDES:20210829092022j:plain

クロスワードというと、郊外に住む人がトワイフォードからの7.22便でタイムズを読み終えたり、大手企業の奥様がコーヒーモーニングを片付けながらテレグラフを読んだりするような、立派なものを連想する人もいる。

しかし、クロスワードが登場した当時はそうではなかった。今でいうならば、一週間分の麻薬メフェドロンと一緒に箱に入った「Benefit Cheat」という新しいビデオゲームを想像してもらい、それを中堅のタブロイド紙がどう書くかを想像してもらえると、当時イギリスでのクロスワードの位置づけがわかるだろう。

英国図書館の新しいオンライン新聞アーカイブでは、1920年ごろクロスワードの回答者たちは低級だと考えられていたことがわかる。

懸念されていたのは、クロスワードが普及するスピードだったようだ。どのくらいの速さかというと 1925年のノッティンガム・イブニング・ポスト紙は、「クロスワードパズル熱は、「プット・アンド・テイク 」の熱狂的流行というよりも、ますます過熱している。」と指摘している。このブームの影響については、アメリカを見てみる必要があるようだ。

新聞はしばらくの間、大西洋を越えてクロスワードがもたらした騒乱の話で読者を脅かしていた。「クロスワードパズル 包囲されたアメリカ」と、1924年のタムワース・ヘラルド紙は騒いでいる。クロスワードは、「数人の独創的な怠け者の娯楽から、国家的な制度へと成長した。社会のあらゆる階層の労働時間に壊滅的な影響を与えているため、脅威である」と説明している。

電車や路面電車、バス、地下鉄、私用オフィスや応接間、工場や家、そして、まだほとんどないことだが、カモフラージュのために賛美歌を持って教会のミサに参列するなど、どこでも、いつでも、恥ずかしげもなく、クロスワードに目を通している人々の姿が見られる。

これらの悪質なパズルは「家族の会話に最後の一撃を与え、家庭を崩壊させることも知られている」とヘラルドは書いている。クロスワードによる家庭崩壊は、夫の矯正を何よりも優先させた。

この1週間ほどの間に2度も、警察の判事が中毒者に1日3個のパズルを与えることを厳しく制限し、代わりに10日間の労働施設への入所を命じたという報道がされた。

1924年のロイター通信には、カナダからのさらなる警告が掲載されている。「クロスワードパズルとラジオが、オタワの公立図書館でここ数ヶ月の間に本の需要が著しく減少した原因であるとされている」が、これはイギリスで起こることに比べれば大したことではない。「1925年の記事では、「ウィンブルドンの図書館では、クロスワードパズルをしている人たちが辞書に与えたダメージがあまりにも大きいので、委員会がすべての辞書をしまい込むことにした」とある*1。ウィレスデンでも同じような悲しい話がある。一方、ダリッチ図書館では、「一人の人間が合理的なクロスワードを解くために新聞を独占しにいために、クロスワードの白い四角を太い鉛筆で黒く塗りつぶす」ということを始めた。紙を粗末にする自己中心的な解答者たち。

一方、書店では小説の売れ行きが落ちていることを嘆き、(クロスワードを解くために)「辞書、用語集、同義語辞典など」が売れるようになった。ノッティンガム・イブニング・ポスト紙はこう続けている。

映画館側も、クロスワードは人々を家に閉じ込めると訴えている。問題に没頭して、グロリア・スワンソンリリアン・ギッシュなどの映画スターのことをすっかり忘れてしまうのだ。

さらに悪いことに ノッティンガムでは、動物園の飼育係が手紙に振り回されている。その理由は、もちろん、クロスワードだ。

クロスワード・パズルを解いてほしい」というリクエストに応えているメスの白鳥を意味する3文字の単語は何ですか?メスのカンガルー、またはTOで終わる6文字の壊れやすい生き物とは?

街の反対側にある劇場では、ステージが空になっていた。

マシソン・ラング氏は、パズルに夢中になっていたため、異端審問のシーンで出番を逃してしまいました。このことは、彼が舞台の仕事に対して非常に几帳面であることから、非常に残念なことだった。 新劇場の「さまよえるユダヤ人」の劇団員は皆、主役と同様にクロスワード・パズルに興味を持っている。

誰がこの騒動に巻き込まれなかったのでしょうか? 食品の関係の人たちには関係なかったのではないか? 残念ながらそうではなかった。

ある女の子が、忙しい八百屋さんに、置いてある小麦粉の銘柄を聞いてみた。 忙しそうな八百屋さんが、売れると思って小麦粉の銘柄を教えてくれたとき、彼女は「何も買うつもりはないわ」と言った。彼女はただ、自分がやっているクロスワードパズルに合う名前があるかもしれないと思っただけだったのだ。 このクロスワード・ブームは病気のようなものだと言われている。学名は"cluemonia"*2かもしれない。

もしあなたが"cluemonia"を滑稽に感じるのであれば、1920年代のカール・ピルキントンのウェスタン・タイムズ紙の「ビレッジ・フィロソフィー」欄を読んでみて欲しい。

今週は、クロスワードパズルと呼ばれるものについて少し話題になった。私はそれが何か正しく理解しているつもりだが、それは時間に余裕のある最も優れた人々のためのものであるように思える...。 私には娘がいるが、彼女は私に何も質問しない。一週間に誰の役にも立たないようなことに夢中になっている。コンテストにも出ているが、まだ一度も勝ったことがないし、これからもそうなるとは思えない。

そして「クロスワード」のこのような側面、つまり競争が、警戒心を高めている。1925年のウェスタン・タイムズ紙の考察記事はこう始まる。

今世紀の最も顕著な特徴の1つは、人口の大部分を誘惑する競争熱である。この問題の根源は「何かを手に入れたい」という人間の本能的な欲求にあると考えられている。したがって、この点で人々の関心を引くために多くの独創的な装置が使用されていることは驚くことではなく、最新の方法はクロスワードパズルとして知られている。

ウェスタン・タイムズ紙は、クロスワードに費やす時間とエネルギーよりも「有益な本を読んだり、知的な会話をしたり」あるいは「仕事をしたり」したほうが有益であると説明している。1930年代までに、パズルに提供される賞品をめぐって法廷で争われるようになり、裁判官はスキルが関係するかどうかを判断することを迫られたり、1935年には弁護士が警察にボウストリートで「ワードは途方もなく簡単であり12歳の子どもでも解けるほど簡単だ」と主張するなどの事件が起こった。クロスワードが賭けと宝くじの法案に違反していることを意味することになり、法律的にも、道徳的にも犯罪になる可能性すら出てきた。

しかし、裁判官は、警察やモラリストを悩ませながらも、クロスワードを支持することになり、クロスワードは違法になることはなかった。

"Eating our own words"(間違ったことを言ったことを認めること。屈辱的表現。)というのはよく知られた言葉である。しかし、"Eating cross-words"というのは新しい趣味であり、しかも楽しいものである。というのもハントリー氏とパーマーズ社が、そのデザインから「クロスワード」と名付けたクリームビスケットを発売したからである。このビスケットの発売と同時にハントリー氏とパーマーズ社はクロスワードコンペティションを開始し、1,000ポンドの賞金を提供した。

もちろん、新聞社もクロスワードを掲載し、新聞売り場での売り上げをパズルに頼っているという側面もあった。

*1:クロスワード・パズルをするために辞書を頻繁にひくため辞書が痛んだためだと思われる

*2:clueとは手がかりのこと。おそらくcluemaniaが正しい。

ラーメン依存症

science.srad.jp

www.news-postseven.com

危険な食べ物や、それに対する依存性の問題は、海外に限った話ではない。日本人になじみ深い食品にも多く存在する。今回、5人の専門家に話を聞いたところ、全員が「危険」と声をそろえた中毒性の高い食べ物が「ラーメン」だ。

それをいうと香川県はうどん依存症だよな。

中国、「ゲームはアヘン」と最大級の表現で批判。更なる締め付け強化へ(GAME Watch)

game.watch.impress.co.jp

今回のTencentが発した自主規制が実行に移されれば、12歳以下の子どもたちは、ゲームが一切プレイできなくなるが、実際に辞めるわけではなく、今回も取り締まり対象となっている成人アカウントの不正利用が増えるだけだろう。

Tencentは顔認証で決済ができる「青蛙」(チンワー)をWechatpayの端末でリリースしており、生半可な技術で突破できるとは思えない。また、今回は国家データベースとも直結しており、不正をしたら当局に即バレるため楽観視しすぎではないかと思う。