佐藤晋爾ほか「摂食障害における入院治療の有効性と人格傾向について」

佐藤晋爾・山口直美・小林純・太刀川弘和・水上勝義・朝田隆,
「摂食障害における入院治療の有効性と人格傾向について
−口ールシャッハ・テストの結果から−」
2004,『臨床精神医学』33:1047〜1054


抄録:

摂食障害入院患者46例を,入院治療転帰良好群と不良群に分け,ロールシャッハ・テストの結果を2群間で比較検討した。良好群でM(人間運動反応)とtotalH(人間反応)が有意に高く、不良群でA%(動物反応の割合)が有意に高く,CR(内容カテゴリー数)が有意に低かった。詳細な分析では,良好群において,M+(良形態質人間運動反応)および(H)(非現実的人間反応)が有意に多かった。以上より想像力・内的安定性・対人希求性などを有していることが,入院治療効果を得るために重要であると考えられた。また,他者への見方が現実的な人間関係に基づかず空想的であっても入院治療効果は高かった。これらの人格特徴と入院治療構造における治療的関与との関係について考察した。


口ールシャッハ・テストの結果が計量的に有意なものになることに驚いた。まぁ、それはそれとして、次のような結論が導かれている。

 また,一般に入院治療効果が少ないと考えられる患者に対して,入院治療への適応の判断は慎重にすべきであると考えられる。なぜならば,拘束の多い入院生活において治療効果が少ない場合,本人の無力感や絶望感を悪化させ,長期的には治療意欲を減退させることが考えられる。したがって今回の検討からいえることは,転帰不良群にみられた,他者に対する関心や共感性が低く,内的安定性に欠け,関心の幅が狭く観念内容が貧困な傾向を有する患者に対しては,身体的な問題が生じた場合や自殺衝動が高まった場合などの危機介入的なもののみを入院の対象として限定すべきでないかと考えられる。すなわち以上のような傾向を有する患者に対しては,まずは外来で主治医と1対1の治療関係の中で,転帰良好群に認められた対人希求性などの対人関係における資質を,時間をかけて育てることを当面の治療目標とした方が良いと考えられた。


傾聴に値する結論のように思われる。