PROCESSはAndrew F. Hayesによって開発された媒介分析のマクロである。日本語情報は少ししか無く、英語では多く出てくるので、海外ではよく知られた分析ツールなのだと思う。PROCESSを使う媒介分析についても日本語の資料は数少ないが、海外では既に一般化しているように見える。
用意するもの
こちらからダウンロードできる。
ダウンロードした後、解凍し、SPSSからインストールする。
教科書になるのはこちらの本。
本格的に使うのであれば入手すべき本。
この本で使われているサンプルデータはこちらから落とすことができる。
SPSSへのインストール
[ユーティリティ]→[カスタムタイアログ]に行く。
ダウンロードしたPROCESSの本体を解凍し、その中に[PROCESS v3.5 for SPSS]というフォルダの中にprocess.sps
というファイルを選択し、インストール。
分析
一度インストールすると、その後はメニューに追加される。
[分析]→[PROCESS]をクリック。
今回はサンプルデータの中からpmi.sav
の分析を行う。
データ
この研究の参加者(イスラエルの大学で政治学またはコミュニケーションを勉強している43人の男子学生と80人の女子学生)は、イスラエルの砂糖の価格と供給に影響を与えるかもしれない経済危機について書かれた2つの新聞記事のうちの1つを読んだ。参加者の約半数 (n=58) は、イスラエルの主要な新聞の一面に掲載されたと言われる記事を与えられた。残りの参加者 (n=65) にも同じ記事が渡されたが、この記事は本紙の経済特集記事の途中に掲載されると言われた。参加者が読んだ2つの記事のうち、どちらがランダム割り当てによって決定されたか。他のすべての点で、試験参加者は同等に扱われ、指示は同じであり、すべての測定手順は両実験条件で同一であった。
参加者は記事を読んだ後、記事への反応について多くの質問を受けた。一部の質問では、参加者らに対し、砂糖をどのくらいの時期に購入する予定か、また、どの程度購入するつもりか、と尋ねた。これらの回答を集計したところ、砂糖の購入意向が高いほど(データファイルのREACTION)、砂糖の購入意向が高い(より早く、より大量に)ことが示された。彼らはまた、この記事を読んだ結果、地域社会の他の人々が砂糖の購入を促されるのではないかとどの程度信じているかを定量化するための質問も受けた。これは、メディアの影響があると推定される尺度である(データファイルのPMI)。
モデル
Hayes本の3.3節の例を分析する。パス図は以下のようなものだ。
COND: 新聞の表(1)または裏(0)ページ
PMI:推定されるメディアの影響力が
REACTION:砂糖の購入
分析
アウトカムであるREACTION
をYに入れる。
暴露であるCOND
をXに入れる。
媒介変数であるPMI
をMediator Mにいれる。
このモデルはModel4であるので、Model Numberを4とする。初期設定は、信頼区間は95%。ブートストラップの回数は5000回である。
次に[Options]で設定。
総合効果を示すためにShow total effect model
にチェックを入れる。Effect size
はこの場合はどちらでも良さそうだ。
GUIでsobel検定をチェックするところがこのバージョンではないようだ。sobel検定が有用か否かは議論があるところだろうし、95%信頼区間が出力できるので、必ず必要ということでもないのだろう。sobel検定はシンタックスで書くと走るようだ。
あと乱数のシードの指定の箇所もないみたいだ。最終的にはシンタックスでやれ、ということなのだろうか。
シンタックス
シンタックスで記述すると下記のようになる。
process y=reaction/x=cond/m=pmi/total=1/normal=1/model=4/seed=31216.
sobel検定を追加する際にはnormal=1
を追加しておく。
結果
Run MATRIX procedure: ***************** PROCESS Procedure for SPSS Version 3.5 ***************** Written by Andrew F. Hayes, Ph.D. www.afhayes.com Documentation available in Hayes (2018). www.guilford.com/p/hayes3 ************************************************************************** Model : 4 Y : reaction X : cond M : pmi Sample Size: 123 ************************************************************************** OUTCOME VARIABLE: pmi Model Summary R R-sq MSE F df1 df2 p .1808 .0327 1.7026 4.0878 1.0000 121.0000 .0454 Model coeff se t p LLCI ULCI constant 5.3769 .1618 33.2222 .0000 5.0565 5.6973 cond .4765 .2357 2.0218 .0454 .0099 .9431 ************************************************************************** OUTCOME VARIABLE: reaction Model Summary R R-sq MSE F df1 df2 p .4538 .2059 1.9404 15.5571 2.0000 120.0000 .0000 Model coeff se t p LLCI ULCI constant .5269 .5497 .9585 .3397 -.5615 1.6152 cond .2544 .2558 .9943 .3221 -.2522 .7609 pmi .5064 .0970 5.2185 .0000 .3143 .6986 ************************** TOTAL EFFECT MODEL **************************** OUTCOME VARIABLE: reaction Model Summary R R-sq MSE F df1 df2 p .1603 .0257 2.3610 3.1897 1.0000 121.0000 .0766 Model coeff se t p LLCI ULCI constant 3.2500 .1906 17.0525 .0000 2.8727 3.6273 cond .4957 .2775 1.7860 .0766 -.0538 1.0452 ************** TOTAL, DIRECT, AND INDIRECT EFFECTS OF X ON Y ************** Total effect of X on Y Effect se t p LLCI ULCI c_ps .4957 .2775 1.7860 .0766 -.0538 1.0452 .3197 Direct effect of X on Y Effect se t p LLCI ULCI c'_ps .2544 .2558 .9943 .3221 -.2522 .7609 .1641 Indirect effect(s) of X on Y: Effect BootSE BootLLCI BootULCI pmi .2413 .1311 .0074 .5201 Normal theory test for indirect effect(s): Effect se Z p pmi .2413 .1300 1.8559 .0635 *********************** ANALYSIS NOTES AND ERRORS ************************ Level of confidence for all confidence intervals in output: 95.0000 Number of bootstrap samples for percentile bootstrap confidence intervals: 5000 ------ END MATRIX -----
解釈
総合効果はTotal effect of X on Y
の値である.4957である。X→Yの直接効果はDirect effect of X on Y
の.2544である。P値は.3221であり、有意ではない。
Indirect effect(s) of X on Y:
は間接効果でX→M→Yの効果を示している。値は.2413である。直接効果.2544と間接効果.2413を足すと、総合効果.4957となる。
Indirect effect(s) of X on Y:
のBootLLCIとBootULCIに注目する。これは間接効果の95%ブートストラップ信頼区間の値でLLCIは下限値でULCIは上限値である。それぞれ.0067と.5258であり、0を挟んでいない。
Normal theory test for indirect effect(s)
はSobel検定の結果を示している。Sobel検定は媒介変数を通してが暴露変数からアウトカム変数へ影響を伝えるか否かを検査するものである。P値は.0635であり、α=0.05であれば、棄却、α=0.10であれば有意な関係が認められる、つまり、媒介効果が見られると判断できる。