井出草平の研究ノート

インターネット依存症・1996-2006年に行われた量的研究の分析

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1996年から2006年の間に学術雑誌に掲載されたインターネット依存症に関する実証的研究のメタ分析。合計61本の論文があったが、インターネット依存症の社会的・経済的コスト、治療上の問題、従業員のインターネット過剰使用に対する解雇などの問題に焦点を当てている論文が22本あったため、最終的な39本の雑誌論文が対象になった。

インターネット依存症はどのように測定されているのか? インターネット依存症はどのように測定されてきたのか? インターネット依存症現象のどのような側面がアカデミック研究者によって研究されてきたのか? インターネット依存症というテーマのデリケートな性質を考え、調査の回答者はどのようにして選ばれたのか? インターネット依存症研究におけるデータ分析の主な方法は何か? などについて検査している。

結論は「代表的なサンプルを用い、サンプリングバイアスを最小限に抑えたデータ収集方法を用いることが強く推奨される。 さらに、インターネット依存症の前兆と後遺症を明確に区別できるように、単に関連性の程度を調べるのではなく、因果関係を検証できるような分析手法の導入が推奨される。」とのことである。

呼称

文献を精査すると、インターネット嗜癖(Internet addiction)には、サイバー空間嗜癖(including cyberspace addiction)、インターネット嗜癖障害(Internet addiction disorder)、オンライン嗜癖(online addiction)、ネット嗜癖(Net addiction)、インターネット嗜癖障害(Internet addicted disorder)、病的インターネット使用(patholog-ical Internet use)、高度インターネット依存症(high Internet dependency)など、さまざまな名称があることがわかった。しかし、インターネット依存症は様々な分野の研究で注目されているが、現在のところ明確な定義は存在しない。

計測

DSMを応用した尺度

Goldbergはこの分野の先駆者である。DSM-IVを適応させ、インターネット依存症の研究でよく見られる2つの一般的な文を含むいくつかの診断基準を提供することによって、インターネット嗜癖性障害尺度(Internet Addictive Disorder scale)を開発した。

  • Goldberg I. (1996) Internet addiction disorder. www.urz.uni-heidelberg.de/Netzdienste/anleitung/wwwtips/8/addict.html.

Brenner(1997)らによって32項目のYes/Noの質問で構成されたthe Internet-Related Addictive Behavior Inventory (IRABI)作成された。

  • Brenner V. Psychology of computer use. XLVII. Parametersof Internet use, abuse, and addiction: the first 90 days of theInternet Usage Survey. Psychological Reports 1997;80:879–82.

Morahan-Martin& Schumacher(2000)は、DSM-IVを適応させ13のyes/noの質問で病的インターネット使用(PIU: Pathological Internet Use)スケールを構築しました。

  • Morahan-Martin J, Schumacher P. Incidence and correlatesof pathological Internet use among college students. Com-puters in Human Behavior 2000; 1:13–29

測定プロセスを簡略化するためにYoungはDSM-IVに基づいた8問のインターネット中毒診断質問票(DQ)を開発した。

  • Young KS. Internet addiction: the emergence of a new clin-ical disorder. CyberPsychology & Behavior 1998; 1:237–44.25.

DSMとは違ったアプローチ

Internet Addicted test [IAT]

  • Widyanto L, McMurran M. The psychometric properties ofthe Internet Addiction Test. CyberPsychology & Behavior 2004; 7:443–50.3.

対象の問題

いくつかの研究者は、学校の外でサンプルを募集している。これらのサンプルの募集方法のほとんどは、サンプリングバイアスが存在している。

研究の特徴

これまでの研究では,インターネット中毒者を定義する基準が統一されていないこと、サンプリングバイアスの原因となる可能性のある募集方法を採用していること,確認的データ分析ではなく探索的データ分析を主に用いて,変数間の因果関係ではなく関連性の程度を調査していることなどが明らかになった.また、研究者がこの成長分野の研究を強化するためにはどうすればよいかについても提言がなされています。

Chou & Hsiao(2000)

Chou & Hsiaoは、インターネット嗜癖の者と非嗜癖者を対象としたテストを通じて、インターネット嗜癖者は非嗜癖者よりもオンラインで過ごす時間が有意に長く、インターネットをより楽しく、インタラクティブで、満足できるものと認識している。 コミュニケーションの喜びの経験、掲示板サービス(BBS)の利用時間、性別、満足度スコア、1時間ごとの電子メールの利用がインターネット嗜癖の最も優れた予測因子であることを発見した。

  • Chou C, Hsiao M. Internet addiction, usage, gratifications,and pleasure experience: the Taiwan college students’ case.Computers & Education 2000; 35:65–80

インターネット中毒モデルを検証するために、構造方程式モデリングのような因果関係の手法を適用した研究はほとんどない。例えば、Davis et al.()は、問題のあるインターネット利用に関する文献からOnline Cognition Scale(OCS)を開発し、構造方程式モデリングSEM)ツールであるAMOSを用いてその次元性をテストしたが、サンプルサイズが小さすぎた。同様に、Widyanto & McMurran(2004)もサンプルサイズが小さすぎるという問題を抱えていた。

  • Davis R, Flett G, Besser A. Validation of a new scale for mea-suring problematic Internet use: implications for pre-em-ployment screening. CyberPsychology & Behavior 2002;5:331–45.2.