井出草平の研究ノート

香川県ネット・ゲーム条例のスマホ時間使用はなぜ60分なのか

記者の方に聞いて「ああそういう理由だったのか」と今日納得したこと。 60分という時間制限は成績と関係しているそうだ。

f:id:iDES:20200116232203p:plain この資料は、コンテンツ文化研究会が公開した「第1回検討委員会(2019年9月19日開催)提出資料」の9ページ目にある。

スマホ利用が60分を超えると学力テストの平均正答率が落ちている。
ゲームが成績を下落させているデータと解釈したために60分制限ということになったようだ。

考察

ネットの長時間利用、ゲームの長時間利用が成績に影響することは以前から指摘がある(Schmitt & Livingston 2015など)。両者に関連があるのは事実であろう。

ただ、以前のエントリでも書いたが、スマホ利用と成績の間に関連があったとしても、それが因果関係とは限らない。逆の因果、疑似相関などの可能性がある。また、他の説明要因があって、思ったほど説明力が強くないかもしれない。

適切な変数を測定して、多変量解析をする、もしくはパネルデータをとるといった手続きをとれば、スマホ利用時間が成績不振にどのくらい説明力を持っているかを明らかにすることができる。仮に(もちろん仮にだが)、スマホ時間規制を主張するのであれば、スマホ利用を制限したら成績が向上したという科学的なデータが揃って、確証が得られてからでもよかったのではないだろうか。

「ゲームと覚醒剤は同じ」大山一郎香川県議

タイトルにあるのは、香川県のネット・ゲーム条例の素案に関わった大山一郎議員の言葉を要約したものである。大山議員は「香川県議会ネット・ゲーム依存症対策議員連盟」の会長であり、県議会議長も務めている(参考)

香川県議の大山一郎議員はゲーム依存について次のように述べている。

この依存症の原因のドーパミンが、最近の研究ではゲームをしたときと覚醒剤を一定量投与したときと同じであるという研究結果まで出てきているわけでございます。昔はテレビゲームとかポータブルゲームとか、親が管理のきく範囲内でのゲームが主流でありましたけれども、現在は、皆様方御存じのとおり、スマートフォンというものが大量に出回っておりまして、このスマートフォンは完全にインターネットと同じ機能を持っておりますので、これを子供たちが持つことによって、その中にオンラインゲームというものが潜んでおりまして、これが依存症の大きな原因になっておりまして、これは今までのゲームではなくて、子供たちがベッドルームまで、自分の寝室まで持っていく。それで依存症になっていって、24時間ずっとオンラインゲームをやる。ですから、昼夜が逆転するとか、それから、暴力性が強くなるとか、依存症でありますから、色々な問題が出てくるわけであります。(p.18) --『国と地方の協議の場(令和元年度第2回)における協議の概要に関する報告書』(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/r01/dai2/houkoku.pdf) via https://twitter.com/mishiki/status/1215623180657688576

多くの間違いがあるので、一つ一つ指摘していくと日が暮れるが、今回はドーパミンについて取り上げよう。

ドーパミンは話の「枕」のように置かれているだけで、その後の流れにはあまり関係がない。脳の神経伝達物質の名前をあげれば、それらしく感じる昨今の潮流に乗っかり「枕」としておかれているだけなのだが、ゲームと覚醒剤は同じというのは大きな誤解である。

ゲームとドーパミンの関連を指摘した論文

今回のテーマは中川譲さんからの宿題的にいただいたものだ。少しずつ消化していこうと思う。

大山一郎議員は「最近の研究ではゲームをしたときと覚醒剤を一定量投与したときと同じ」と述べているが、そのような研究は存在しない。

もちろん、ゲームをするとドーパミンが放出されるという論文は存在する。

Koepp et al.(1998)の論文が有名である。線条体ドーパミンが放出されたという報告である。

www.ncbi.nlm.nih.gov (Research Gate)

この論文で述べられていることは意外な結果ではない。
なぜなら、楽しいことをすればだいたいドーパミンは放出されているからで、どちらかといえば、当たり前の結果をちゃんと確認しました系の論文である。

ゲームで放出されるドーパミンの量

そもそもゲームで放出されるドーパミンの量はそれほど気にする量ではない。 ごはんを食べた時に放出されるものに毛が生えたくらいである。Langlois(2011)から図版を引用しよう。

f:id:iDES:20200114150307p:plain

Amphetamine: アンフェタミン
Methamphetamine: メタンェタミン(ヒロポン、スピード)

  • Langlois, M. (2011). “Dopey About Dopamine: Video Games, Drugs & Addiction.”

この文献を引用したMarkeyとFergusonの言い回しであれば「メタンフェタミンよりもペパロニピザを食べる方にはるかに近い」ということである。

Moral Combat: Why the War on Violent Video Games Is Wrong

Moral Combat: Why the War on Violent Video Games Is Wrong

大山議員はゲームと覚醒剤ドーパミンの量が同じと述べていたが、このグラフをみて「同じ」というにはかなり無理があるのではないだろうか。

使用から依存症への飛躍

ドーパミンがゲーム依存症の原因だと述べている科学者はおそらくいないはずである。ゲームによって線条体からドーパミンが放出されるという論文はあるが、ゲームの使用と依存症とは全く質の違う問題である。酒を飲むことと、アルコール依存症になることが別なことと同じである。

この非科学的な結び付けをしたのは、ニコラス・カルダラスのニューヨーク・ポストへの投稿記事らしい(参照, via https://twitter.com/mishiki/status/1215686202440859649)

ドーパミンが放出されるものは山のようにある。「やって楽しいな」と思うことをしている最中にポジトロンスキャンをすれば、だいたいドーパミンが放出されていることが確認される。

大山一郎議員言い方であれば、サッカーをするのも覚醒剤だし、大自然のなかでアウトドアを楽しむのも覚醒剤だし、ショッピングを楽しむのも覚醒剤だし、美味しいごはんを食べるのも覚醒剤と同じである。

青少年のゲーム・スマホドーパミンが放出されるから制限されるのであれば、高齢者の楽しみと化したテレビ視聴でもドーパミンがあふれ出ている。

テレビの有害性

www.ncbi.nlm.nih.gov 25歳以降に1時間テレビを見ると平均余命が21.8分短くなる。6時間以上テレビをみると4.8年早死にする。

友人と会わなかったり、運動をしなかったり、種々の疾患を発病しやすくなる(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25828126)ため、寿命が短くなると考えられている。

www.ncbi.nlm.nih.gov 1日2時間テレビを視聴するたびに、糖尿病を発症する可能性が14%、肥満になる可能性が23%高くなる。

www.ncbi.nlm.nih.gov テレビ視聴と不眠症。18〜25歳の成人423人にインタビューしたところ、1/3がテレビの見過ぎによって不眠症になっていることが判明。

テレビは6時間以上テレビをみると4.8年早死するというデータまで出ている一方で、ゲーム・スマホの有害性は科学的に立証されていない。
ゲーム・スマホの使用制限をするのであれば、実際に害がありそうな高齢者のテレビの長時間視聴を制限する方が先ではないだろうか。

ゲーム依存症の原因はドーパミンなのか

ドーパミンは応報系に関係する。初期段階でのゲームの習慣化とドーパミンが関係していると推測できる。従って、ドーパミンがゲームの習慣化の形成には関わっているだろうが、ゲーム依存の原因ではないことは明白である。

原因という言葉がわかりにくくしているのかもしれない。ゲーム使用とゲームの習慣化の別の現象であることと同じく、ゲームが習慣化とゲーム依存も別の現象である。習慣化から依存へと跳躍させる何か、ゲーム依存の原因であるが、特定の神経伝達物質がここに関与しているという仮説も、データも存在していない。

ゲームの習慣化に関連しているドーパミンを依存の犯人に仕立て上げたい気持ちはわからないではないが、習慣化から依存への跳躍にドーパミンはさほど関連していない。

これは、治療という観点から見ればかなりわかりやすい。

数多くの創薬をしてきた現在の人類にとって、脳内のドーパミンレベルを薬によってコントロールすることは非常に容易なこととなっている。ドーパミンがゲーム依存の原因であるならば、治療は簡単なはずである。しかし、実際に、ドーパミンの放出を押さえる薬でゲーム依存を治療することはできないのだ。

ドーパミンは快感・セロトニンは安心は似非科学

ドーパミンが増えると快感がある、セロトニンが増えると安心するといったことをテレビなどでよく聞くことがあるが、一部を除いて似非科学といっていい。

ドーパミンセロトニン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)は何かを説明した気にさせてくれる言葉である。「私は幸せ」を脳内神経物質を使って表現すると「私の脳内にセロトニンがあふれかえっている」となる。

脳内神経物質の名前を使っても何かを説明しているわけではない。しかし、「何かを言っている風」なのは、文法的にはこれが「比喩」に相当するからだ。

脳内神経物質によるほとんどの言説は説明ではなく、比喩であることがほとんどである。テレビなので、脳内神経物質の話が出た時に、その説明が脳内神経物質の名前を出さずに説明できる(=比喩)なのか、脳内神経物質なしには説明できないのか、という弁別の仕方をすると、テレビなとでの脳科学系の似非科学を比較的簡単に見分けることができる。

脳内神経物質、それもモノアミン(セロトニンドーパミン、ノルエピネフリン)だけで人間に起こっていることが説明できるほど人間は単純にできてはいないし、脳の構造ははるかに複雑である。

ドーパミン作動薬

ドーパミンを増やす一番簡単な方法はドーパミンの前駆体であるレボドパ(L-ドパ)を直接身体にぶち込むことである。

f:id:iDES:20200114150625j:plain

ドーパミン作動薬は一般的にパーキンソン病の治療薬として使われることが多い。

では、パーキンソン病の治療薬を飲むと快感が得られるかというと、何も起こらない。何も起こらないどころか副作用の嘔吐や不整脈といった症状だけがでるかもしれない。

ドーパミンで快感が得られるなら、私たちの社会はパーキンソン病治療薬をありとあらゆる手を使って手に入れようという人たちが現れてくるはずである。しかし、実際に、そうなっていないのは、ドパミンを増やしても快感が得られないからである。

ドーパミン拮抗薬

大山一郎議員はゲーム依存ではドーパミンが放出されるので覚醒剤と同じだと述べていた。この言葉が真実であれば、ドーパミン拮抗薬を入れると解決するはずである。

ドーパミン拮抗薬として最も一般的なのは統合失調症の治療に使われるD2阻害薬であろう。

もちろん、D2阻害薬を使ったとしてもパーキンソン病治療薬と同じく副作用しか起こらない。

仮説に則った治療が無効ならば、仮説が誤り

仮説が正しければ、その仮説に従って、治療をすれば治るはずだし、最低でも何らかの変化がなくてはならない。これが理論の実証である。それが行い場合には、理論が間違っていたこととなる。

脳内のドーパミンが放出されるとゲーム依存になるというのが仮説が正しいならば、ドーパミン拮抗薬でゲーム依存は治らなくてはいけない。

ドーパミンが依存症を引き起こしているといったことが正しいのであれば、ドーパミン作動薬か拮抗薬で治療できるはずである。治療できないということは、説明が間違えているのである。

香川県ネット・ゲーム条例と久里浜医療センター

www3.nhk.or.jp

香川県議会が、全国に先駆けて検討しているゲームやインターネットの依存症の対策に関する条例の素案に、高校生以下の子どもを対象にゲームなどを利用する時間を1日あたり平日は60分、休日は90分に制限するなど、具体的な制限が盛り込まれることがわかりました。

条例素案18条

香川県条例案では、時間制限は18条2項にあたる。

香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案


第18条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。

2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなスマートフォン等の使用に当たっては、1日当たりの使用時聞が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とするとともに、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時まで、に使用をやめるルールを遵守させるものとする。

問題になっているのはこの18条2項である。

条例と久里浜医療センターアンケートの関係

この18条ができた根拠は国立病院機構久里浜医療センターによる「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート調査」が大きく影響している。

ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート結果(概要) https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document15.pdf

久里浜の調査ではゲームのプレイ時間が増えると「学業成績が落ちる」「家族関係が悪くなる」「朝が起きられない」「昼夜逆転がおこる」と結果が示されている。

18条には「子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられ」ると書かれてあるが、久里浜の「朝が起きられない」「昼夜逆転がおこる」に対応したものだ。
「学業成績が落ちる」は前文の「インターネットやコンピュータゲームの過剰な使用は、子どもの学力や体力の低下のみならず睡眠障害やひきこもりといった問題まで引き起こすことなどが指摘されており」に対応している。
「家族関係が悪くなる」は基本理念の第3条「ネット・ゲーム依存症である者等及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援すること」に対応している。

ゲームが悪いと思っているとすべてゲームのせいに見えてくる

先の久里浜のアンケート調査の報告では、ゲームのプレイ時間の増大が原因で「学業成績が落ちる」などのことが起きたかは明言されているわけではない。
家族関係が悪くなったのでゲームをしているという逆の因果も考えられるだろう。
また、うつ病ADHDなど他の要因が学業成績の下落とゲームプレイ時間の増加の両方に影響を与えているという疑似相関も考えられる。

しかし、「ゲームが悪い」という先入観があると、すべてゲームのせいにしてしまいがちである。
つまりすべてゲームのせいにしてしまい、ゲームのプレイ時間さえ制限してしまえば、なんでも解決すると考えてしまうのだ。

今回の条例は因果関係の同定をせずに、ゲームに馴染みのない世代がゲームを悪として魔女狩りをしているようにしかみえない。

texregの結果をRstudioで取り込むには

今回は2年以上前のエントリの続きである。

ides.hatenablog.com

一番下の節で紹介しているtexregパッケージを実戦で使ってみたのだが意外に使いにくい。
確かに、HTML形式で綺麗な回帰分析は作れるが、それをRstudioに張り付けてレポートにすること、つまりknitすることができないのである。
今回はその解決法を紹介する。

下準備

以前のエントリ通り回帰分析を作成する。

library(AER) #パッケージの呼び出し
data("CPS1985")
lm0 <- lm(wage ~ age, data=CPS1985) #年齢が賃金を決めるモデル
lm1 <- update(lm0, ~. + gender) # 性別をモデルに加える
lm2 <- update(lm1, ~. + education) # 学歴をモデルに加える
lm3 <- update(lm2, ~. + experience) # 仕事の経験年数をモデルに加える

texregによる整形

texregによるHTML形式による出力。詳しくは以前のエントリを参照のこと。

library(texreg)
output <- htmlreg(
            list(lm0, lm1, lm2, lm3),
            caption.above = TRUE,
            caption = "表1 回帰分析のモデル比較",
            custom.coef.names = c("定数","年齢", "性別-女性", 
                                                  "教育年数", "就労経験")
            )

textreg関数で書き出すと以下のようなHTMLのコードが出力される。
今回はoutputというオブジェクトに格納しているので、下のようなコードは出力されない。

<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN" "http://www.w3.org/TR/html4/loose.dtd">
<table cellspacing="0" align="center" style="border: none;">
<caption align="top" style="margin-bottom:0.3em;">表1 回帰分析のモデル比較</caption>
<tr>
<th style="text-align: left; border-top: 2px solid black; border-bottom: 1px solid black; padding-right: 12px;"><b></b></th>
<th style="text-align: left; border-top: 2px solid black; border-bottom: 1px solid black; padding-right: 12px;"><b>Model 1</b></th>
<th style="text-align: left; border-top: 2px solid black; border-bottom: 1px solid black; padding-right: 12px;"><b>Model 2</b></th>
<th style="text-align: left; border-top: 2px solid black; border-bottom: 1px solid black; padding-right: 12px;"><b>Model 3</b></th>
<th style="text-align: left; border-top: 2px solid black; border-bottom: 1px solid black; padding-right: 12px;"><b>Model 4</b></th>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">定数</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">6.17<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">6.93<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">-4.84<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">-1.96</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.72)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.72)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(1.24)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(6.84)</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">年齢</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.08<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.09<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.11<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">-0.37</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.02)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.02)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.02)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(1.12)</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">性別-女性</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">-2.27<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">-2.34<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">-2.34<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.43)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.39)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.39)</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">教育年数</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.83<sup style="vertical-align: 0px;">***</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">1.31</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(0.07)</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(1.12)</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">就労経験</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.48</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;"></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">(1.12)</td>
</tr>
<tr>
<td style="border-top: 1px solid black;">R<sup style="vertical-align: 0px;">2</sup></td>
<td style="border-top: 1px solid black;">0.03</td>
<td style="border-top: 1px solid black;">0.08</td>
<td style="border-top: 1px solid black;">0.25</td>
<td style="border-top: 1px solid black;">0.25</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">Adj. R<sup style="vertical-align: 0px;">2</sup></td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.03</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.08</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.25</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">0.25</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">Num. obs.</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">534</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">534</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">534</td>
<td style="padding-right: 12px; border: none;">534</td>
</tr>
<tr>
<td style="border-bottom: 2px solid black;">RMSE</td>
<td style="border-bottom: 2px solid black;">5.06</td>
<td style="border-bottom: 2px solid black;">4.94</td>
<td style="border-bottom: 2px solid black;">4.45</td>
<td style="border-bottom: 2px solid black;">4.46</td>
</tr>
<tr>
<td style="padding-right: 12px; border: none;" colspan="6"><span style="font-size:0.8em"><sup style="vertical-align: 0px;">***</sup>p &lt; 0.001, <sup style="vertical-align: 0px;">**</sup>p &lt; 0.01, <sup style="vertical-align: 0px;">*</sup>p &lt; 0.05</span></td>
</tr>
</table>

これをエディタに張り付けて、エンコードUTF-8に設定して、拡張子をhtmlにするとhtmlファイルに変わるのだが、少しめんどくさいので、一部自動化してみた。本当は全部自動化したかったのだが、どうしても、エンコードの指定だけができなかった。今後の課題としたい。

HTMLファイルの書き出し

cat関数を使う。
先ほどのtextregでHTML形式で整形したものを格納したoutputoutput.htmlというファイル名で書きだす。

cat(output, file="output.html")

おそらく多くの人のWindowsはShift-JIS(CP932)で動いているので、catで書きだすとShift-JISで書きだされる。
しかし、UTF-8で書きだしたいのだ。 ちなみに、Macは確かUTF-8で動いていたはずなので、Macユーザーにはあまり関係ない話である。

エンコード

RStudioのRmdファイルと同じフォルダに先ほどのoutput.htmlというファイルが作成されているので、テキストエディタエンコードを変更する。

やり方はリンク先で解説されている。
https://www.1-firststep.com/archives/2258

Windowsに標準付属のテキストアプリでも可能である。
エンコードをShift-JISからUTF-8に変更して保存する。

HTMLファイルの読み込み

出力したHTML形式のファイルはhtmltoolsパッケージで取り込む。

library(htmltools)
htmltools::includeHTML("output.html")

RStudioで部分的にRunすると文字化けして表示されるが、knitをすると日本語(2バイト文字)がちゃんと表示される。

f:id:iDES:20200108201150p:plain

出力した表を画像にしてRStudioで読み込むという手もあるが、画像をHTMLファイルと一緒に送らないといけない。それを回避するにはPDFにして全部固めるしかなかった。しかし、今回の方法では、出力して取り込んだHTMLのコードも取り込んでしまうので、knitしたHTMLファイルだけ送ることが可能だ。今回の例だとoutput.htmlは同梱しなくてもよい。

アドヒアランスの指標であるMPRとPDCを計算するパッケージ[Stata]

The Stata Journalを読んでいたらMPRとPDCを計算するパッケージの紹介があったので、こちらで紹介しておこう。

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1536867X19893625

http://www.lindenconsulting.org/stats.html

NPRとは薬剤保持率(medication possession ratio)であり、PDCは調査対象日数に対して実際に処方した日数の比率を示す平均治療日数カバー比率(proportion of days covered)である。

PRRという処方削減率(prescription reduction ratio)という指標もあるらしい。こちらは処方されたが、飲まなかった薬の残量を測る指標らしい。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27489544

日本の福岡の先生たちが開発したらしい。処方した薬が大量に家で余っている状況は日本では日常茶飯事だが、諸外国ではどうなのだろうか。

medadhereパッケージ

コンソールからインストールする場合は以下のコードで手に入れる。

. net sj 19-4
. net install st0578
. net get st0578

install st0578はプログラム、get st0578はdoファイルとmedadheredata.dtaというデータである。

sj 19-4はdoファイルに含まれるsjlogというコマンドを実行するのに必要らしいが、インストール方法がよくわからなかった。リソースからsjlogを直接インストールした。また、そもそも、このパッケージを利用するだけであれば、sjlogは特に必要はない。

もちろん、リソースから検索してもパッケージ、データとも入手できる。

薬剤ごとのMPRとPDC

下記のものはidを1に絞った形でのコードだ。 スタートは2013年1月1日に設定し、365日続けるとしている。

. use medadheredata.dta" ,clear
. keep if id==1
. medadhere fill_date days_supply, drug(drug) start(01jan2013) length(365)
. list drug study_start_dt study_end_dt study_days mpr pdc, clean noobs abbreviate(14)

結果。

    drug   study_start_dt   study_end_dt   study_days        mpr        pdc  
       1        01jan2013      31dec2013          365    .969863   .9013699  
       2        01jan2013      31dec2013          365   .9808219   .9068493  

薬剤を一つに絞ったMPRとPDC

下記のものは薬剤を1に絞ってidごとにMPRとPDCを出すコードである。 今度は終了日時を2013年1月30日に設定し、期間は設定していない。

. use medadheredata.dta, clear
. keep if drug==1
. medadhere fill_date days_supply, id(id) end(30jun2013)
. list id study_start_dt study_end_dt study_days mpr pdc, clean noobs abbreviate(14)

結果。

    id   study_start_dt   study_end_dt   study_days        mpr        pdc  
     1        07dec2012      30jun2013          206   1.038835   .9514563  
     2        11apr2012      30jun2013          446    .896861   .8744395  
     3        07jan2012      30jun2013          541   .9685767   .9260628  
     4        27dec2012      30jun2013          186   1.010753   .9354839  
     5        22may2013      30jun2013           40        .75        .75  
     6        03apr2012      30jun2013          454   .8678414   .8502203  
     7        17jan2012      30jun2013          531   .3954802   .3427495  
     8        20feb2013      30jun2013          131   .8091603   .7480916  

クロス集計表

上記の2つの例は条件をつけた形で数値を示していたが、条件がなくリストを出すとかなりの行数が並ぶので読むのが大変だ。そこでクロス集計表にして見やすくする。今回指定するオプションはlengthだけで、これは研究期間で180日に揃えてある。

今回はPDCのクロス表である。

. use medadheredata.dta, clear
. medadhere fill_date days_supply, id(id) drug(drug) length(180) credit
. generate pdc80 = cond(pdc >= .80,1,0)
. tabulate pdc80 drug, column

MPRとPDCのカットオフは0.8だと言われている。0.8を超える患者はアドヒアランスが良いとみなされ、0.8未満の患者はアドヒアランスが悪いとみなされる(Cramer et al. 2008; Sikka, Xia, and Aubert 2005; Centers for Medicare & Medicaid Services 2018).。

+-------------------+
| Key               |
|-------------------|
|     frequency     |
| column percentage |
+-------------------+

           |               drug
     pdc80 |         1          2          3 |     Total
-----------+---------------------------------+----------
         0 |         2          2          2 |         6
           |     25.00      25.00      40.00 |     28.57
-----------+---------------------------------+----------
         1 |         6          6          3 |        15
           |     75.00      75.00      60.00 |     71.43
-----------+---------------------------------+----------
     Total |         8          8          5 |        21
           |    100.00     100.00     100.00 |    100.00

このサンプルのアドヒアランスは、薬物1、2、3でそれぞれ75%、75%、60%であることがわかる。

文献
- Cramer, J. A., A. Benedict, N. Muszbek, A. Keskinaslan, and Z. M. Khan. 2008. The significance of compliance and persistence in the treatment of diabetes, hypertension and dyslipidaemia: A review. International Journal of Clinical Practice 62: 76-87. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2228386/

ネット・ゲーム依存とオピオイド拮抗薬

久里浜の樋口進さんのインタビューでオピオイド拮抗薬の話が出ていたので、少しまとめておこうと思う。

medical.jiji.com

この記事で出てくるオピオイド受容体拮抗薬とはナルトレキソンとナロキソンのことである。

ネット・ゲーム依存とオピオイド拮抗薬の効果を要約すると、おそらく有効性は一定あるだろうが、現在のところエビデンスはまだ揃っていないというところだろうか。ただ、他の依存症・中毒での有効性がある薬なので、治療効果が期待できるように思える。

ナロキソン

ナロキソンは日本でも既に認可されている薬剤である。

ja.wikipedia.org

ただし、ナロキソンは静脈注射であるため、使いにくい。また、使用用途が「麻薬による呼吸抑制ならびに覚醒遅延の改善」に限定されているため、依存症には使用できない。

www.info.pmda.go.jp

現在の日本では、ナロキソンをナルトレキソンの代わりに使うのは現実的ではない。海外では経口薬も存在する。

北米ではナロキソンでは処方箋なしに薬局で入手することが可能である。また、オピオイド汚染で死者が続発していることから、ナロキソン配布プログラムというものもある。

www.afpbb.com

本筋とは関係ないがナロキソンはクロニジンやグアンファシンの解毒剤でもある。

www.ncbi.nlm.nih.gov

インチュニブ(グアンファシン)が昨年ADHD治療薬として承認されたため、小児でも使用される機会は増えたとは思われる。
過剰摂取の際にはナロキソンの静注と覚えておくと良いかもしれない。

鼻へのスプレー

フィンランドで治験がされているスプレーというのはナロキソンのスプレーのようだ。これはギャンブル依存への治療薬として開発されている。

www.theguardian.com

ナルトレキソン

en.wikipedia.org

依存症・中毒関連の文献でよく見る薬剤である。おもしろい薬剤なのでまた機会があれば詳しくまとめてみたい。今回は簡単にまとめてみよう。

自傷行為

境界性パーソナリティー障害、自閉症自傷行為に有効であることが確認されている。自傷行為はその行為の最中にベータエンドルフィンが放出されるため、ヘロインやモルヒネに似た効果が得られる。ナルトレキソンはこれをブロックできるため、自傷行為によって得られる快感がなくなる。そのため、境界性パーソナリティー障害には処方されやすい薬となっている。
境界性パーソナリティー障害の人には種々の依存症が併存することがあるため、その点でも処方されやすい。

依存症

クレプトマニア、ギャンブル依存、抜毛癖などへのエビデンスがある。

ネット・ゲーム障害への有効性

DSM-5にインターネットゲーム障害、ICD-11にゲーム障害が採録されてから日が浅いこともあり、エビデンスは今のところはない。

インターネット関連でナルトレキソンが使われた文献はインターネット・セックス依存のケースレポート1本である。

www.ncbi.nlm.nih.gov

ただ、この論文で扱われているのはインターネットを利用した性衝動のコントロール不全なので、ネット依存の論文というよりも、性衝動の治療について書かれた文献といった方が妥当だろう。

性欲・性犯罪

ナルトレキソンは過度な性欲の抑制をしたり、勃起不全に役立つとされている。

www.ncbi.nlm.nih.gov

性欲を押さえるという一方向の効果でないところが興味深いところである。

ナルトレキソンは思春期の性犯罪者の治療にも用いられている。

www.ncbi.nlm.nih.gov

ナルトレキソンが力不足の場合はリュープロレリンが投与されている。リュープロレリンは女性ホルモンの一種であるエストラジオールと男性ホルモンの一種であるテストステロンを減少させる効果がある。

ナルトレキソンを使うのは、副作用の面でリュープロレリンよりナルトレキソンの方が軽微であるためと、性犯罪者へのホルモン治療は社会的に批判があるためである。

サイトカイン療法

インターフェロンαの注射によって生じる精神症状の増悪に対して有効である。

低用量ナルトレキソン療法

日本語でナルトレキソンを検索すると癌の代替療法としての低用量ナルトレキソン療法の結果が多い。低用量ナルトレキソン療法はもともとエイズ治療の研究として出発しており、一応、免疫療法に分類される。

アメリカなどでは多発性硬化症代替療法としても有名だが、日本では多発性硬化症知名度が高くないので、やはり癌の代替療法として売り出されている。

標準医療において、この治療法への評価は総じて否定的である。イェール大学のスティーブン・ノベラは低用量ナルトレキソン療法は疑似科学と言明している。

sciencebasedmedicine.org

数十年研究されてきてエビデンスはないに等しい。実施したところで大したことは期待できないないだろう。ナルトレキソンの副作用もあるため、割に合わないのは明らかである。

低用量の場合は比較的副作用も穏やかであるため、人によっては利用できるかもしれない。代替療法全体に言えることだが、低用量ナルトレキソン療法もやたらと高価である。どうしても、低用量ナルトレキソン療法がしたければ、下記で書いているように個人輸入でナルトレキソンを手に入れられるので安価で実施は可能である。

副作用

副作用はμ受容体の遮断による下痢や腹部痙攣などの胃腸障害、嘔吐・吐き気などが挙げられる。管理面で最も悩ましいのは、吐き気の副作用になるだろう。ジプレキサなど制嘔作用のある副剤が必要になるケースが多くなるだろう。
コーカサイドよりもモンゴロイドの方がこの種の副作用の頻度は多くなる傾向にあるため、海外のデータよりも副作用の発生頻度は多くなると考えておいた方がよいだろう。
肝障害を起こすリスクがあるため肝機能のモニタリングが必要である。肝障害がある人には禁忌である。

入手性

ナルトレキソンは個人輸入で入手でき、入手は比較的簡単である。
使用をする場合には、ナルトレキソンの知識を持ち、個人輸入の薬の服薬の責任を持っつてもよいという奇特な医師を探し出すなどして服薬するしかない。
従って、入手が簡単だといっても、実際に使えるわけではない。