香川県議会が、全国に先駆けて検討しているゲームやインターネットの依存症の対策に関する条例の素案に、高校生以下の子どもを対象にゲームなどを利用する時間を1日あたり平日は60分、休日は90分に制限するなど、具体的な制限が盛り込まれることがわかりました。
条例素案18条
香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)素案
第18条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。
2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなスマートフォン等の使用に当たっては、1日当たりの使用時聞が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とするとともに、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時まで、に使用をやめるルールを遵守させるものとする。
問題になっているのはこの18条2項である。
条例と久里浜医療センターアンケートの関係
この18条ができた根拠は国立病院機構久里浜医療センターによる「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート調査」が大きく影響している。
ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート結果(概要) https://www.ncasa-japan.jp/pdf/document15.pdf
久里浜の調査ではゲームのプレイ時間が増えると「学業成績が落ちる」「家族関係が悪くなる」「朝が起きられない」「昼夜逆転がおこる」と結果が示されている。
18条には「子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられ」ると書かれてあるが、久里浜の「朝が起きられない」「昼夜逆転がおこる」に対応したものだ。
「学業成績が落ちる」は前文の「インターネットやコンピュータゲームの過剰な使用は、子どもの学力や体力の低下のみならず睡眠障害やひきこもりといった問題まで引き起こすことなどが指摘されており」に対応している。
「家族関係が悪くなる」は基本理念の第3条「ネット・ゲーム依存症である者等及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援すること」に対応している。
ゲームが悪いと思っているとすべてゲームのせいに見えてくる
先の久里浜のアンケート調査の報告では、ゲームのプレイ時間の増大が原因で「学業成績が落ちる」などのことが起きたかは明言されているわけではない。
家族関係が悪くなったのでゲームをしているという逆の因果も考えられるだろう。
また、うつ病やADHDなど他の要因が学業成績の下落とゲームプレイ時間の増加の両方に影響を与えているという疑似相関も考えられる。
しかし、「ゲームが悪い」という先入観があると、すべてゲームのせいにしてしまいがちである。
つまりすべてゲームのせいにしてしまい、ゲームのプレイ時間さえ制限してしまえば、なんでも解決すると考えてしまうのだ。
今回の条例は因果関係の同定をせずに、ゲームに馴染みのない世代がゲームを悪として魔女狩りをしているようにしかみえない。