前田至剛「インターネットによって生成される場と社会調査」

前田至剛,2005,
「インターネットによって生成される場と社会調査
  −−精神疾患を患う人々の活動を事例として」
『先端社会研究』第3号.


関西学院大学COEの報告書的な位置づけにある『先端社会研究』に載った「メンヘラ」に関連する研究。メンヘラはネットを媒介にしてつながる。いわゆる「オフ会」である。メンヘラのオフ会(セルフヘルプグループ)のが成り立つためには「インターネット」が必要であるというところに着眼した論文である。

 このようなマージナルな状況におかれた人々にとって、セルフヘルプ(以下SHと記述)は意味を持つ。マージナルな状況にある人々の多くは、誰も同じ問題を抱えていないという認識から、誰も問題の意味を理解してくれず、誰も問題解決の助けになれないという孤独に陥ってしまう[Katz, A.H.,1933=1997]


このマージナリティーはメンヘラ一般にもネット・メンヘラにも共通している。ただ、次のような点が異なる。

もっと端的には、なぜ既存のSHGやデイケアではだめなのかという問いかけに対し、「自由がなくなる」「自分たちだけで作りたい」「気軽じゃなくなる」と答える。このことは、ネットMHの医療に対する態度とも通底している。それはネットMHが見せる、医療に対する否定的な態度である。

もちろん専門職が関わることは皆無で、先述のとおりオフ会告知の際、参加者に対する注意として医師や病院関係者の参加不可と明記する場合さえある。


これは突発オフについての記述。持続的なオフ会にもこのルールがある場合があるという注釈がある。

ネットとの関わりが強くなればなるほど、会という組織の不明確さ・メンバーの匿名性が高まるのである。中でも突発タイプは、ネットから出発し、常にネットを媒介にしなければ活動は不可能なタイプである。互いに会のメンバーとしても認識しておらず、会を単位とした確固とした連絡手段もない。HNやメールアドレスを固定しないばかりか、意図的に変えて匿名性を確保する。それでも辛うじてオフ会を開けるのは、匿名なままいつでも誰でも書き込みがおこなえる公開の掲示板でのコミュニケーションがあるからだ。このタイプがネットと密接に結びついたMHの活動であり、ネットMHの典型例であるといえるだろう。実際、公開の掲示板で告知されているオフ会の数だけをとれば、持続タイプより突発タイプのほうが多い。


匿名性を確保した集まりをすることと、インターネットのコミュニケーションには親和性があるようだ。AAのように強い規則に縛られることなく、かつ、匿名性が担保される「集まり」を成り立たせるためにネット・コミュニケーション(もしくは下部構造としてのネット)は不可欠なのだろう。


もちろん、この形態の集まりでセルフ・ヘルプ・グループの機能のすべてを回収することは出来ないが、このような選択肢は必要だろうし、「なるほど」と思えた。