井出草平の研究ノート

ゲーム障害と子宮内の男性ホルモンの暴露は関係があるのか

どうでもよい研究のような気もするが、読んだのでメモ。

journals.plos.org

2D:4D比

人差し指が薬指よりも短い場合2D:4D比が小さいとされ、子宮内でのテストステロン曝露量が高いことを示しているらしい。

2D:4D比は子宮内でのアンドロゲンやテストステロンの曝露に影響されることが指摘され、したがって、出生前アンドロゲン曝露量の大まかな指標となる(2D:4D比が低いほど出生前アンドロゲン曝露量が高い)ことが示唆される。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8C%87%E6%AF%94

尺度

CSAS-II(Video Game Dependency Scale–II)で依存的なゲーム利用を計測。

結果

依存行動を有するグループ(n = 27)は問題のないゲーム利用をするグループ(n = 27)と比較して、2D:4Dの平均値が低いことがわかった。ここから、出生前のアンドロゲンへの曝露、つまり、男性ホルモンの影響が示唆される。

考察

f:id:iDES:20200329222125p:plain

対照群の平均は0.979、依存群の平均は0.966でp = 0.095で有意ということのようだ。

この分野の研究を知らないので相場感が分からないが、54名の参加者がいて、10%水準しか満たさないのは、個人的な感覚で言えば、関連があると言えるほどのエビデンスではないように思う。加えて、2D:4D比と生前の男性ホルモンの関連も示唆にとどまっているようなので、関連性は弱そうに思えるのだが、どうなのだろうか。

JFNラジオ『OH! HAPPY MORNING』出演 「香川県のゲーム規制条例可決。問題点と影響は?」

2回目の出演をさせていただきました。
前回放送は下記。

ides.hatenablog.com

カンペを書いていたので、カンペを公開します。
実際の放送ではこの通り話したわけではありません。

1. 前回、先生が予想されたように、条例は可決成立しました。改めて伺いますが、この条例の一番問題点はどういうところでしょうか?

罰則はないとはいえ、本来家庭で決めるべきスマホやゲームの使い方や使用時間について行政が介入を示したところだと思います。基準という言葉から目安という言葉に変わったようですが、時間制限が含まれていることが問題です。
香川県の条例は時間規制をすれば依存症が減るという前提に立っていますが、それは誤りです。
ゲームやネット依存に関しての研究は長年研究が蓄積されてきた分野ではありませんが、不十分ながらも研究はあります。その中で、わかっていることもあって、少なくとも利用時間と依存は関係がないということは明らかです。

2. 他の自治体でこれに続きそうな動きは出ていますか?

秋田県大館市でも香川と同様の条例が検討されています。どのような条例が検討されているかは明確にはわかっていませんが、香川とおなじくスマホの利用時間、ゲームの利用時間を制限する内容であることはわかっています。
また、香川の条例でスマホやゲームに焦点が当たったことによって、全国の地方議会でスマホやゲームに関する質問がされています。香川県の条例に批判的なもの、議会で各自治体の現状を確認ものもありますが、特にゲームに関する害を主張する質問も複数出てきています。

3. この条例には事業者への協力や配慮を求める項目もありますが、ゲーム業界からの対応はどうでしょうか?

ゲーム業界からは反応はあまり大きなものはありません。表立っては反対しないという立場のようですが、子どもたちに適切にゲームを使ってもおうという動きにもなっていないのが気になります。
保護者が子供のゲームやスマホの管理をするための、ペアレントコントロールという機能がゲーム機やスマホにはついています。保護者と子どもが話し合って使い方を決めていくことが重要ですが、機器によるサポートも使いどころも多くあります。 そういった管理方法が必ずともすべての保護者に伝わっているわけではありません。スマホやゲームに疎い方であれば、何のことかわからないといったこともあります。そういった機能があることや、機器の設定の相談窓口について宣伝をしていくことは重要ではないかと思います。
例えば、任天堂は以前からペアレントコントロールについてテレビCMを流していますが、他のゲーム機発売メーカーやスマホのメーカーもそういった試みをしてもいいのではないかと思います。

4. 条例に問題があるとはいえ、若者のゲーム依存症が減ることはいいことに違いないと思います。どういう風にすれば、本来の趣旨に沿う効果があげられると思われますか?

ゲーム依存やネット依存というような状態になっている場合、いじめや成績不振といった学校での問題、うつ病ADHD(注意欠如多動性症)といった精神障害がある場合など、他の問題を抱えていることが多いです。
ゲーム依存の子どもは、ゲームばかりしているのでゲームが問題だと見えてしまいがちですが、もともと何かの問題があってゲームをしているという視点が大事だと思います。
学校での問題が解決すれば学校に戻る子は多いですし、精神障害の治療がうまくいけばゲーム時間は自然に減っていきます。
伝統的といってはなんですが、私たちがよく知っている、子ども時代の問題に対処していくことが、ゲームやスマホ依存の子どもたちを減らしていくことにつながると思います。
条例制定というのはハデなやり方ですが、実際に有効なのは、1つ1つのケースに応じて、問題を解決していくという地味なやり方です。まどろっこしい方法に思われるかもしれませんが、地味な方法が一番効果があるものです。

香川県のゲーム依存症対策条例に高松市長が苦言「ネットやゲームの悪い面ばかりに光が当たった」(KSB)

www.ksb.co.jp

高松市の大西秀人市長は条例制定の過程で、「ネットやゲームの悪い面ばかりに光が当たってしまった」と苦言を呈しました。 「インターネットやゲームには情報収集や伝達に優れ、学習効果や趣味・娯楽といったいい面と、依存症やネット犯罪につながる悪い面の両方がある。活用と規制の使い分けが必要だ」と話しました。

日本におけるギャンブル障害

篠原菊紀さんのブログ(参照)で紹介されていた論文。

秋山久美子ほか,2018,「日本におけるギャンブリング障害の障害疑い率とその比較 : 方法論による重みづけを用いた検討」『アディクションと家族』34(1): 75-82.
https://ci.nii.ac.jp/naid/40021753389

「日本のギャンブル依存は突出して多い」という報道がされているそうだ。
この誤った情報を流しているのは久里浜医療センターらしいのだが、どういう形で流されたのかを見てみたい。

尺度による違い有病率の違い

有病率であったり、疑いのある人を調査するときには尺度がとにかく重要である。使用する尺度によって大きく結果が異なってくるからだ。
Williams et al.(2012)では、重みづけをすることで尺度によって生み出される違いについて補正を試みている。

Williamsらは、方法論に関する研究レビューや自らが行った研究結果をもとに、障害疑い率にとくに大きな影響をもたらす要因として「調査の名目」「調査形式」「障害尺度への回答条件(過去l年にギャンプリングをしている人のみ障害尺度に回答する、など)」等を挙げている。Williamsらはさらに、そのような方法論の影響を調整する試みも行っており、世界各地のギャンプリングの障害疑い率を標準化するための、方法論別の重みづけの値を示している。

opus.uleth.ca https://media.runsular.com/me/9de900422a2d28b1.pdf

日本における「疑い率」

秋山らの論文にあるように「疑い率」という表現にとどめておこう。「有病率」というと診断基準があり、構造化面接等の定められた方法によって出されたものである。スクリーニングで出された「疑い率」の中から、診断をして「有病率」を導くというルートを多くの疫学調査が採用していることからも、「疑い率」より「有病率」は数としては少なくなる。

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表にある1~3の調査の概要は以下。

1つめの調査は厚生労働省により行われた飲酒に関する質問紙調査であり、アルコール使用障害に関する問いを主としながら、ギャンブリングやインターネット依存についても尋ねている。
2つめは、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターにより実施されたギャンプリング障害に関する調査であり、これは訪問調査員の聞き取りによって回答が得られている。
3つめは、日工組社会安全研究財団により実施された、パチンコ・パチスロ遊技障害に関する全国調査である。パチンコ・パチスロ遊技障害は、ギャンブリング障害の下位概念の1つであるが、先述したように日本のギャンプリング障害の多くを占めると考えられるため、ここでは含めることとした。

SOGS: South Oaks Gambling Screen

さきほどの調査1~3で使用されている尺度について簡単に触れておこう。

SOGSはアメリカのサウスオークス財団が開発したギャンブル依存症のスクリーニングテストである。
日本語版がこちらのページにある。
www.ask.or.jp

PPDS: パチンコ・パチスロ遊技障害尺度

www.syaanken.or.jp

PPDSはパチンコ・パチスロに絞った内容である。競馬や競輪はこの尺度では計測できない。

元論文はこちら。

ci.nii.ac.jp

SOGSとPPDS

秋山らの論文によればSOGSとPPDSは尺度は違うものの、補正するとある程度まで比較ができるようだ。

秋山久美子ほか,2016,「パチンコ・パチスロ遊技障害尺度の作成および信頼性・妥当性の検討」『精神医学』58; 307-316. https://ci.nii.ac.jp/naid/40020789215

久里浜医療センターによるギャンブル依存の調査

厚労省は調査2の久里浜医療センターの調査である。PPDSが使用されている。生涯3.6%(320万人)、一年0.8% (70万人)という値を公表した。
この結果は各新聞で報道されている。

digital.asahi.com

ただ久里浜医療センターが発表した値は、秋山ら(2018)によれば調整をする必要があるようだ。
調整をすると、生涯1.1%、直近1年0.43%となる。
これは全国調査3の直近1年0.42%という結果とほぼ同じとなる。人数にすると実際にギャンブル障害の疑いがあるのは40万人程度である。
久里浜医療センターが発表した値に比べインパクトは小さい。
ちなみにこれも「診断」ではなく「疑い率」であり、実際に病的賭博(DSM-IV)と診断できる人はさらに絞られることになる。

諸外国と比べて日本のギャンブル依存は多いか

日本ではギャンブル依存が多いというのは久里浜医療センターがおそらく確信犯で流している誤った情報である。
朝日新聞では次のように久里浜医療センターの松下幸生副院長は述べている。

また、生涯のうちに一度でも依存症だった疑いのある人は推計3・6%(約320万人)。同じ判定基準で調査した海外の例では、1~2%以下の国が多く、日本は比較的高いという。
調査を担った国立病院機構久里浜医療センターの松下幸生副院長は29日の会見で「電話調査の国が多いなど、調査方法が異なるため比較は難しい」としたうえで、「日本では外国より(パチンコなど)ギャンブルが身近にあり、いつでも利用できるという環境の違いが影響している可能性はある」と指摘した。
https://digital.asahi.com/articles/ASK9Y512YK9YUTFK013.html

これは数値の調整をせずに比較をしたためである。先ほども述べたように3.6%(360万人)は調整をすると1.1%になる。

直近1年の疑い率は日本では0.4%程度である。諸外国は下記の表のような感じのようだ。

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0.2%~2%くらいの国が多く、日本の0.4%という値はとびぬけて多いわけではない。

諸外国との比較では、調整後の日本の障害疑い率が諸外国とそれほど大きな差がないこと、とくに直近1年の障害疑い率では、諸外国より低い割合となる可能性を示した。

対策

久里浜医療センターの分析では「外国より(パチンコなど)ギャンブルが身近にあるため」依存状態にある人が多いと述べていた。
しかし、疑い率が変わらないのであれば、この仮説は妥当ではないし、この仮説に基づいて政策決定をするのも誤りである。
確かにパチンコという文化は日本にしか浸透していないかもしれないが、依存になる人が諸外国と変わらないのであれば、パチンコ屋を規制してもあまり意味はない可能性が高い。

秋山ほか(2018)では対策について次のように述べられている。

この結果は、一見すると望ましいことのように思われるが、実際はそうでもないようだ。なぜなら、世界中の障害対策とその効果についてレビューしているWilliamsらが、「最もよく用いられている障害対策は、最も効果が小さいものである」と指摘しているように、対策を実施している諸外国が、必ずしも日本より良い状況にあるとはいえないからである。

規制をすればよいという話ではないようだ。
この辺りの事情はネット・ゲームの規制と通じるものがあるように思われる。

引用されているWilliamsらの論文は以下のもの。

Williams, R.J., West, B.L., & Simpson, R.I. (2012). Prevention of Problem Gambling: A Comprehensive Review of the Evidence, and Identified Best Practices. Report prepared for the Ontario Problem Gambling Research Centre and the Ontario Ministry of Health and Long Term Care. October 1, 2012. https://opus.uleth.ca/handle/10133/3121

長時間のゲーム利用と遺伝子多型

過度なインターネット・ビデオゲームのプレイ(Excessive internet video game play)の遺伝子多型の研究。

www.ncbi.nlm.nih.gov Han DH, Lee YS, Yang KC, et al. Dopamine genes and reward dependence in adolescents with excessive Internet video game play. Journal of Addiction Medicine 2007;1:133-8.

この研究では4つの変数がある。

  1. 過度なインターネット・ビデオゲームのプレイ
  2. Temperament and Character InventoryのRDスケール
  3. ドーパミンD2受容体のTaq1A1対立遺伝子
  4. カテコラミン-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)のVal158Metの対立遺伝子

注意が必要なのは、ゲーム障害やインターネットゲーム障害ではなく、ゲームプレイ時間が長い人についてが対象になっていることである。

ドーパミンD2受容体のTaq1A1対立遺伝子(DRD2 Taq1A1)

f:id:iDES:20200324030039p:plain

依存症・嗜癖の研究ではDRD2_Taq1A1をターゲットにしている。病的賭博(Comings et al. 1996)に関する研究、アルコールに関する研究(Blum et al. 1990)、コカイン乱用者の研究(Noble et al.1993)でもA1対立遺伝子の保有率が高い。

薬理学的には、D2ドーパミン受容体結合部はTaq1A1対立遺伝子を持つ被験者で有意に減少することがわかっている。D2ドーパミン受容体結合部の減少は、中毒性、衝動性、および強迫性行動のリスクが高くなる素因となる可能性があるとBlum et al.(1990)は考えている。

Beuten et al.(2006)はタバコについて研究だが、この論文での議論をゲームに転用すると、Taq1A1対立遺伝子を持つEIGP群は、ドーパミン系の欠乏を補う手段としてビデオゲームのプレイを求めるということになる。

  • Comings DE, Rosenthal RJ, Lesieur HR, et al. A study of the dopamine D2 receptor gene in pathological gambling. Pharmacogenetics. 1996;6: 223-234.
  • Blum K, Noble EP, Sheridan PJ, et al. Allelic association of human dopamine D2 receptor gene in alcoholism. JAMA. 1990;263:2055-2060.
  • Noble EP, Blum K, Khalsa ME, et al. Allelic association of the D2 dopamine receptor gene with cocaine dependence. Drug Alcohol Depend. 1993;33:271-285.
  • Beuten J, Payne TJ, Ma JZ, et al. Significant association of catechol-Omethyltransferase (COMT) haplotypes with nicotine dependence in male and female smokers of two ethnic populations. Neuropsychopharmacology. 2006;31:675-684.

カテコラミン-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)のVal158Met対立遺伝子

カテコラミン-O-メチルトランスフェラーゼはドーパミン、アドレナリンおよびノルアドレナリンなどのカテコールアミン類を分解する酵素の一つである。ドーパミンの不活化に関与している。この仮説は不活化率が低いタイプでゲームの長時間使用が多いというものである。応報系の報酬が他の人より多く、長くあるため、依存的になりやすいという仮説である。

Beuten et al(2006)ではニコチン依存症との関連が示されている。Yoshimoto et al.(1991)では、エタノール誘発性の多幸感は大脳辺縁部におけるドーパミンの迅速な放出と関連しているとしている。

活性の低い {COM}^T対立遺伝子である {COMT}^Lドーパミンの不活化率を低くしていると考えられ、不活性化率の低さから、EIGP群は多幸感をより強く感じるようになると示唆される。

  • Beuten J, Payne TJ, Ma JZ, et al. Significant association of catechol-Omethyltransferase(COMT) haplotypes with nicotine dependence in male and female smokers of two ethnic populations. Neuropsychopharmacology. 2006;31:675-684.
  • Yoshimoto K, McBride WJ, Lumeng L, et al. Alcohol stimulates the release of dopamine and serotonin in the nucleus accumbens. Alcohol. 1991;9:17-22.

Cloninger's Temperament and Character Inventoryの報酬依存(RD)スケール

この研究で使用されているRDスケールについても解説しておこう。
過度なインターネット・ビデオゲームのプレイ(EIGP群)で対照群よりRDスケールが高かった。
f:id:iDES:20200324030104p:plain

統計学的に有意な値になっているが、それほどの差ではなさそうだ。

en.wikipedia.org

Temperament and Character Inventoryにはいくつかのドメインがあるが、その一つが応酬依存とされるRDスケールである。以下のもので計測される。

報酬依存(RD)

  • 感傷(RD1, Sentimentality)
  • 愛着 (RD3, Attachment)
  • 依存(RD4, Dependence)

Temperament and Character Inventoryの日本語訳 木島伸彦ほか「Cloningerの気質と性格の7次元モデルおよび日本語版Temperamentand Character Inventory (TCI)」 https://www.institute-of-mental-health.jp/thesis/pdf/thesis-06/thesis-06-04.pdf

DRD2 Taq1A1対立遺伝子、COMT対立遺伝子保有者のRDスコアは対照群に比べて高かったという結果が出ている。

オッズ比の計算

どの程度の差があるのか把握しにくかったので、オッズ比を計算してみた。

DRD2 Taq1A1

DRD2 Taq1A1対立遺伝子保有者と過度なインターネット・ビデオゲームのプレイのクロス表を作成し、そこからオッズ比を求めた。

DRD2 <- matrix(c(61,18,46,29), nrow=2, ncol=2, byrow=T)
colnames(DRD2) <- c("A1","A2")
rownames(DRD2) <- c("EGP","Control")
library(epitools)
oddsratio.wald(DRD2)$measure

結果。

odds ratio with 95% C.I. estimate    lower    upper
                 EGP     1.000000       NA       NA
                 Control 2.136473 1.059154 4.309589

DRD2 Taq1A1の場合2.14倍のようである。

COMT Val158Met

COMT Val158Met対立遺伝子保有者と過度なインターネット・ビデオゲームのプレイのクロス表を作成し、そこからオッズ比を求めた。

COMT <- matrix(c(47,32,31,44), nrow=2, ncol=2, byrow=T)
colnames(COMT) <- c("COMTH","COMTL")
rownames(COMT) <- c("EGP","Control")
library(epitools)
oddsratio.wald(COMT)$measure

結果。

odds ratio with 95% C.I. estimate    lower    upper
                 EGP     1.000000       NA       NA
                 Control 2.084677 1.096322 3.964053

COMT Val158Metの場合2.08倍のようである。

考察

オッズ比2くらいだと有望な説明要因の一つになりうるといった位置づけだろうか。ただ、この研究とゲーム障害を結び付けるには、2つの条件を越えなければならない。

1つ目はドーパミンの遺伝子多型が直接的にゲーム障害を説明できるか、であろう。依存とゲームプレイ時間は異なった概念でプレイ時間と依存の関連があると指摘できた論文はないため、三段論法的につなげるのは誤りである。遺伝子多型とゲーム障害との関連を報告した論文があればクリアできるだろう。

2つ目はドーパミンが依存に関連しているのは、遺伝子多型の研究がなくても明らかであるが、どの程度、説明力があるか、ということである。この辺りはやや疑問が残るところである。あまり前例はないかもしれないが、他の精神障害、社会的因子などとともに、遺伝子多型含めた多変量解析をして、遺伝子多型の説明力がどの程度あるかは知りたいところである。一変量の分析では判断がつかないというのが実際のところである。

宇多丸と井出草平 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の問題点を語る

miyearnzzlabo.com

先日のラジオ出演の文字起こしをしてくれた方がおられたようだ。自分でもラジオを録音していなかったのでありがたい。

宇多丸)まあ、そうかもしれない。犬山紙子さんが言ってましたよ。「すごく禁止されたことでなにを覚えたかといえば、嘘をつくことを覚えた」っていう。
(宇内梨沙)たしかにね。私も公文を習っていて、宿題を与えられるんですけど、いつも破いて捨ていていたんですよ。

同じサイトで佐久間宣行さんがゲーム規制条例について話しているオールナイトニッポン0の内容も書き起こしされていた。

miyearnzzlabo.com

ラジオは全然禁じられてない。テレビも禁じられてない。ナメられたもんですよ。フハハハハハハハハッ! そんな聞かないと思われてるの。くそっ、悔しいな!(笑)。

暴力的ゲームと向社交性

暴力的な内容が含まれたゲームが社会性・社交性に与える影響についての実験である。

www.ncbi.nlm.nih.gov Sheese BE, Graziano WG. Deciding to defect: the effects of video-game violence on cooperative behavior. Psychological Science 2005; 16:354-357.

用いられたのはDOOMである。DOOMは一昔前には、社会的に問題だとされていたゲームの代表格であった。

ja.wikipedia.org

昨今問題になっている荒野行動もわりと近い内容ではないかと思われる。

この論文では、ゲームにおける暴力が協調的意思決定に及ぼす影響を調べている。参加者に別々にプレイをした後に、協調性を測るタスクを行う。相互利益のためにパートナーと協力するか、撤退するか、または自分自身の利益のためにパートナーを利用するかを選択するという選択で、暴力的なゲームを行った者はパートナーを搾取することを選ぶ傾向が有意に高かった。従って、ゲームによって向社交性が減少したことになる。

一方で、共通の敵に対して協力して戦闘をした場合、結束感を高まり、その後の協力関係を促進することが示唆されたとしている。

戦闘ゲームやRPGゲームは戦闘を行うので、日常の暴力的な行為につながると心配されたり、社会性がなくなってしまうのではないか、と心配されたりするが、少なくとも一人で暴力表現のあるゲームばかりせずに、友達と、もしくは、ネットを介して誰かとプレイをすれば、そういった心配はないようだ。

荒野行動と出会い系

ただ仲良くなることで問題も起きるようである。

www.jprime.jp

香川県高松市の女性のようだ。