9時を回りました。この後のToday’s Focus、今日のテーマは「あなたはどう思う?香川県のゲーム規制条例」。大阪大学非常勤講師の井出草平さんにお話を伺います。(二代目ハピモニピンク)#hapimoni #jfn
— OH! HAPPY MORNING🐓ハピモニ (@hapimoni) 2020年2月28日
カンペを書いていたので、カンペを公開します。
実際の放送ではこの通り話したわけではありません。
1. 社会問題化しているネット/ゲーム依存症への対策として、こういうことを条例制定しようという考え方については、どう思われますか?
依存症対策という点でいえば、かなり的外れなやり方だと思います。
依存症へのアプローチは初期症状が出たときに発見した時に、支援なり治療なりをするのが基本です。
この条例は依存症対策や予防と銘打っていますが、実際に依存症に有効性がありそうな対策が書いてありません。
この条約ターゲットにしているのはゲーム時間やスマホの時間を制限することです。
依存症対策の条例なのに、依存症対策について何らも展望が示されていません。
ネットやゲーム依存対策であれば「よいこと」だと考えてしまいますが、内実をよく見ると、ネットやゲーム依存対策になっていないことが大きな問題だと思います。
また、スマホ時間についても問題があります。
素案では、スマホ利用時間は平日9時まで、休日10時までと書かれていますが、学生だけではなく、18歳未満が対象ですので、働いている方も当然おられます。
仕事をしていたら、夜の9時以降にスマホを利用するでしょうし、夜メールの返信をすることもできないことになります。
ゲームだけではなく、スマホの利用制限も大きな問題です。
2. 依存症や引きこもりと、ゲーム/スマホの操作時間は、本当に関連があるのですか?
日本ではあまり研究が進んでいませんが、海外では研究がされています。
海外の研究ではゲーム時間はゲーム依存の原因ではないという結論が出ています。
心理的なフラストレーション、つまり学校におけるストレス、いじめや成績良くないといったことですが、そういうものでゲームへの依存が強まり、結果としてゲーム時間が長くなります。
つまり、時間は結果です。
結果の方の時間を制限しても、有効な対策とは言えないでしょう。
ゲーム依存やネット依存の場合、学校での問題のほかにも、親が不仲といった家庭の問題、うつ病やADHD(注意欠如多動性症)といった精神障害がリスクになります。
学校の問題、家庭の問題、精神障害、などの根本的な対策をせずに、時間制限だけするのは意味がありません。
むしろ「やった気になる」という点で有害かもしれません。
条例を作って、有効な依存症対策がなにもされないのは目に見えています。
18歳未満は60分までという文言があるようですが、60分という根拠はなんですか?
60分の根拠は香川県の説では、60分以上スマホをすると成績が低下するというデータだそそうです。
条例の根拠になった香川県の行った『学習状況調査』です。
よく見ると、二重に間違っているんですよね。
まず、ネットやゲーム依存の予防を目的にしている条例なのに、成績が根拠になっていることです。60分ゲームをすれば依存症にならないというデータがあるのであれば、理解できますが、成績が根拠なんです。
もう一つは、調査はスマホ利用時間について調べているのですが、条例では60分制限がかかるのはゲームです。
根拠はなく、ちぐはぐなものだと言っていいと思います。
3. こういったルールは、本来、家庭の親子間、あるいは学校で決めるべきことだと思うのですが?
そうだと思います。
ゲームの使い方は保護者と子どもで話し合いをして決めるべきでしょう。
法律として妥当か、という観点から疑問符がつきます。
この種の問題を条例で定めるというのは極めて異例です。
条例が可決したら、この条例が不適切だという裁判が始まるでしょうし、その申し立てはおそらく裁判所で認められるでしょう。
4. 3月には議決されるようですが、どうなると思いますか?
たとえ条例での規制が可決されたとしても、罰則規制がないそうですね。
これでは、実際ほとんど意味がないようにも思えますが、いかがでしょうか?
今回の条例は親に対しては罰則規定はありませんが、この条例を根拠に学校などで指導ができるようになります。
間接的に子育てに影響してくるだろうと考えられます。
あとは、あまり注目されていないのですが、素案には「検討規定」というものが含まれています。
「検討規定」というのは、条例が制定されてから、2年以内に、香川県がスマホやゲームに関しての調査をしたり、政策立案をして、実施するというものです。
来年度からの予算もすでに組まれています。
こちらが本丸だと考えている人もいます。
今回の条例はゲーム問題を社会問題化するために花火のように打ち上げられたもので、条例に違憲判決が出たとしても、それは想定内なのでしょうし、その間にゲーム規制の政策と予算化を固めておいて、再度、違法ではない条例を作るという流れになるでしょう。
行政の動きがネットやゲーム依存の対策になればよいのですが、依存症対策の具体策も方向性もないので、おそらく依存症対策に人員と予算は使われないでしょう。
もともと、条例はゲーム時間やスマホの時間を制限するが目的なので、スマホやゲームを制限する方向になると予測しています。