タイタニック・データを用いた媒介分析[Mplus]

タイタニック・データを用いて名義変数の媒介項、2値の従属変数(アウトカム)の媒介分析を行う。アウトカムが2値なので2項ロジスティック回帰分析の一種である。

タイタニック・データの分析に意味があるわけではなく、あくまでも例題である。分析はMplusで行うがデータはRのパッケージに含まれているデータを利用するため、まずはRから始める。

タイタニックのデータを読み込む

Rのデータセットにはタイタニックは存在するが、ケース数が少ないので、titanicパッケージからデータを利用する。

library(titanic)
knitr::kable(head(titanic_train))
df1 <-titanic_train

f:id:iDES:20201011004155p:plain

どこまでの現実のデータと同じなのかは分からないが、よく見るタイタニックデータより詳細なデータが含まれている。

Mplusのデータ形式に変換する

RとMplusの連携はこちらで解説をした方法を使う。

ides.hatenablog.com

library(MplusAutomation)
variable.names(df1) # 変数名を書き出し

Mplusの扱うデータは数字でないといけないので、性別(文字型)を数字にリコードしておく。

library(memisc) # memisicパッケージの読み込み。
df1$Sex <- memisc::recode(df1$Sex, 1 <- "male", 2<-"female") #リコード
df1$Sex <- as.numeric(as.character(df1$Sex)) # 一度文字型に変更してから数値型に変更する
str(df1)

Mplus用のデータを書き出し。

prepareMplusData(df1, filename="titanic.dat", 
                keepCols=c("Survived","Pclass","Sex","Age","Fare"),
                overwrite=T)

以上までがRでの作業である。

シンプルなモデル

f:id:iDES:20201010233445p:plain

fare: 運賃
pclass: 客室等級, 3値, 1等216名/ 2等184名/ 3等491名
survived: 生死, 2値, 1:生存/ 0:死亡

アウトカムはSurvivedで生死である。Pclassは客室等級である。馴染みのあるタイタニックデータには乗務員のデータもあったが、このデータは客のデータだけである。Fareは賃料であり、客室等級に比例していると予想できる。

コード

TITLE:     Binomial Logistic Regression Analysis with a Noninal Mediator 
           using Titanic Data

DATA:      FILE = titanic.dat;
           LISTWISE = ON;

VARIABLE:  NAMES = Survived Pclass Sex Age Fare;
           USEVARIABLES  = Survived Pclass Fare;
           MISSING = .;
           CATEGORICAL = Survived Pclass;

ANALYSIS:  ESTIMATOR = ML;
           BOOTSTRAP = 10000;

MODEL:     Survived on Pclass Fare;
           Pclass on Fare;
MODEL INDIRECT: Survived ind Pclass Fare;

OUTPUT:    CINTERVAL(BOOTSTRAP);
PLOT:      TYPE = PLOT3;

結果

推定値。

MODEL RESULTS

                                                    Two-Tailed
                    Estimate       S.E.  Est./S.E.    P-Value

 SURVIVED   ON
    PCLASS            -0.684      0.109     -6.277      0.000
    FARE               0.006      0.003      2.136      0.033

 PCLASS     ON
    FARE              -0.083      0.008    -11.114      0.000

 Thresholds
    SURVIVED$1        -0.213      0.204     -1.044      0.296
    PCLASS$1          -3.685      0.195    -18.940      0.000
    PCLASS$2          -2.004      0.138    -14.541      0.000

Fare→Survivedが直接効果である。P=0.033で5%有意であり、直接効果は残っている。

間接効果。

                                                    Two-Tailed
                    Estimate       S.E.  Est./S.E.    P-Value

Effects from FARE to SURVIVED

  Tot natural IE       0.002      0.000      5.985      0.000
  Pure natural DE      0.001      0.000      2.225      0.026
  Total effect         0.003      0.000      7.546      0.000

推定値は0.002でP=0.000なので弱いながらも間接効果があることが分かる。

直接効果、間接効果ともにある分析結果であった。

余談

www6.nhk.or.jp

タイタニックはなぜ沈没したのか? 出航前に船倉部の石炭庫で火災が発生し、鎮火せぬまま航海を続けたのが原因とする説を、豪華客船や乗組員の動きをCGで再現しつつ検証。

わりと面白かったドキュメンタリー。

ゲーム障害は他の精神障害を引き起こすのではなく、共通の要因によって生じる

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

https://acamh.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jcpp.13289

インターネットゲーム障害(IGD)の症状が高い子どもや青年は、他の子供や青年よりも一般的には精神疾患の症状が多い。一時点の研究=横断的研究では、IGDが原因なのか、他の精神障害が原因なのか、別の要因が共通の原因なのかはわからないため、縦断的研究を行ったのがこの研究である。

インターネットゲーム障害の症状と他の精神障害との関連は見られなかった。ゲームに熱中して依存症になると、うつ病などの精神障害になると(根拠なく)言われることがあるが、この言説が反証がされている。つまり以下のようなことである。

f:id:iDES:20201009214640p:plain

逆に、10歳と12歳でのインターネットゲーム障害の症状の増大は2年後の不安症状の減少を予測しており、むしろ精神障害を弱める作用が確認されている。この論文では、インターネットゲーム障害と他の精神障害が共起するのは共通の原因によるもので、遺伝的要因が大きいのではないかと推測されている。

データと診断・評価

ノルウェーの子どもたちのコミュニティサンプル(n = 702)のコホート研究。2つの出生コホート(2003/2004)を調査。10歳、12歳、14歳の時点でDSM-5で定義されているIGDの症状を評価するために、インターネット・ゲーミング障害面接(IGDI)を完了した。

IGDI(Wichstrøm et al., 2019)というのは下記の文献。

  • Wichstrøm, L., Stenseng, F., Belsky, J., von Soest, T., & Hygen, B.W. (2019). Symptoms of internet gaming disorder in youth: Predictors and comorbidity. Journal of Abnormal Child Psychology, 47, 71–83. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29623484/

児童・思春期精神医学的評価Child and Adolescent Psychiatric Assessment (CAPA; Angold and Costello, 2000) を用いて精神症状を評価。抑うつ性障害、不安(社会恐怖、特定の恐怖症、分離不安障害、全般的不安障害)、注意欠陥多動性障害ADHD)、反抗的障害(ODD)、行動障害(CD)の症状を同時期に評価。

分析

A Random Intercept Cross‐lagged Panel Model (RI‐CLPM)で分析されている (Hamaker et al., 2015)。

  • Hamaker, E.L., Kuiper, R.M., & Grasman, R. (2015). A critique of the cross‐lagged panel model. Psychological Methods, 20, 102–116.

知らない分析法だが、ざっと説明を読む限りは、パネルデータでマルチレベル(within‐ and between‐person effects)を想定する分析のようだ。Mplus 7.4が使われている。

結果

IGDの症状は、10歳、12歳、14歳のうつ病、不安、ADHD、およびODD/CDの症状と中程度ではあるが正の有意な相関を示した(範囲r = 0.09-0.19)。

f:id:iDES:20201009214148p:plain

between‐person (or group) レベルでは、IGD症状が多いほど不安(r = 0.53、p = 0.028)、ODD/CD(r = 0.36、p = 0.048)、およびADHD(r = 0.23、p = 0.028)の症状と関連していたが、うつ病(r = 0.26、p = 0.14)の症状とは関連していなかった。IGD症状と精神病理学の症状との現在の相関(表S3)とは対照的に、IGD症状と障害の症状との間の有意な同時相関は、between‐personレベルでは出現しなかった(図2、図S1-S3)。さらに、個人内レベルでの前向きな関連に関しては、10-12歳(β=-.17、p=0.015)および12-14歳(β=-.16、p=0.010)では、IGDの症状の増加が2年後の不安の症状の減少を予測するという、統計的に有意な関係が1組だけ見られた。

先行研究

IGDが実際にメンタルヘルス問題を予測しているかどうかを調査した先行研究は1件のみ(Wartberg, Kriston, Zieglmeier, Lincoln, & Kammerl, 2019)

  • Wartberg, L., Kriston, L., Zieglmeier, M., Lincoln, T., & Kammerl, R. (2019). A longitudinal study on psychosocial causes and consequences of Internet gaming disorder in adolescence. Psychological Medicine, 49, 287–294. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29622057/

IGDのDSM-5基準が発表される前では、大規模なゲームと精神衛生上の問題との関連性を文書化した前向きな研究がいくつかある(Brunborg, Mentzoni, & Frøyland, 2014; Lemmens, Valkenburg, & Peter, 2011)

  • Brunborg, G.S., Mentzoni, R.A., & Frøyland, L.R. (2014). Is video gaming, or video game addiction, associated with depression, academic achievement, heavy episodic drinking, or conduct problems? Journal of Behavioral Addictions, 3, 27–32. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25215212/

思春期の孤独感は、後に病的なゲーム性を予測する(Lemmens et al., 2011)。

Russoniello et al. (2013)によるRCT無作為化比較試験では、ゲームの増加がうつ病の症状を減少させたという結果が出ている。

  • Russoniello, C.V., Fish, M., & O'Brien, K. (2013). The efficacy of casual videogame play in reducing clinical depression: a randomized controlled study. Games for Health: Research, Development, and Clinical Applications, 2, 341–346. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26197075/

ADHDの子どもたちは、遅延したものよりも即時の報酬を強く好むため、ゲームは、ADHDの症状を持つ子供たちのための魅力的な活動になる(Stenseng, Hygen, & Wichstrøm, 2019)

家族研究からの予備的なエビデンスからは、問題のあるインターネットの使用が部分的に遺伝的影響下にあることが示唆されている(Deryakulu & Ursavaş, 2014)

小児期および青年期のほとんどの精神病理学に強い共通項があることが明らかになっており(McElroy, Belsky, Carragher, Fearon, & Patalay, 2018)、共有された遺伝的影響がこの併存性を部分的に説明していることを考えると(Caspi & Moffitt, 2018)、経験的な調査で明らかになっている範囲では、IGDと他の障害(または症状)との共起の一部も遺伝学が説明していると予想される。

インターネット依存治療施設、子どもたちを独房に閉じ込たことで有罪判決をうける(中国,CNN)

2020年7月8日のCNNの報道。

edition.cnn.com

中国南東部で自称インターネット中毒治療施設を運営していた男性グループが、子どもたちを最大10日間独房に閉じ込めていたとして実刑判決を受けた。子どもたちは12人て、うち11人は当時18歳未満であった。

2008年に中国がインターネット依存症を正式に精神障害として認めることを決定した後、治療キャンプの人気が急上昇しました。近年では、不祥事や深刻な身体的虐待の疑惑が相次ぎ、近年では懸念が高まっている。

中国の国営メディアの報道によると、2014年には河南省鄭州市で19歳の少女がインターネットデトックスセンターのインストラクターに殴られて死亡したと報じられている。他のレポートでは、そのキャンプでは電気けいれん療法(ECT)に似たやり方を使っていたとされている。

雑感

中国ではネットやゲームで、戸塚ヨットスクール事件のようなことが起こっているようだ。

ゲーム障害とADHD、衝動性、敵意

インターネットゲーム障害とADHDについての研究。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov - Yen, J.-Y., Liu, T.-L., Wang, P.-W., Chen, C.-S., Yen, C.-F., & Ko, C.-H. (2017). Association between Internet gaming disorder and adult attention deficit and hyperactivity disorder and their correlates: Impulsivity and hostility. Addictive Behaviors, 64, 308–313. https://doi.org/10.1016/j.addbeh.2016.04.024

参加者・診断

(1)20~30歳、教育年数9年の若年成人、(2)平日は1日4時間以上、週末は1日8時間以上、または週40時間以上インターネットゲームをしている人、(3)このパターンを2年間維持している人を大学構内の掲示、広告などで募集。インターネットゲーム障害(IDG)の診断はDSM-5。(1)精神病性障害双極性障害、薬物使用障害の有無はMINI、(2)成人ADHDの有無はSCID-I(DSM-IV-TR)、(3)向精神薬の使用、精神遅滞、重度身体障害、脳損傷を抑止するための履歴聴取面接。精神病性障害双極性障害、物質使用障害、向精神薬使用、精神遅滞、重度身体障害、脳障害を有する者は除外。IGD群87名、対照群87名。

尺度

衝動性

Dickman's impulsivity inventory (DII)

  • Dickman, S. J. (1990). Functional and dysfunctional impulsivity: Personality and cognitive correlates. Journal of Personality and Social Psychology, 58, 95–102.

敵意

Buss–Durkee hostility inventory-Chinese version-short form (BDHIC-SF)

  • Lin, T. K., Weng, C. Y.,Wang, W. C., Chen, C. C., Lin, I. M., & Lin, C. L. (2008). Hostility trait and vascular dilatory functions in healthy Taiwanese. Journal of Behavioral Medicine, 31, 517–524. http://dx.doi.org/10.1007/s10865-008-9177-0.

全体的機能

Clinical global impressions (CGI) scale modified for IGD

モディファイは次のようにしているようだ。1、正常、全く病気ではない、2、IGD基準を満たさずに過度のインターネットゲームをしている、3、軽度、限定的、または短期の機能障害があるがIGD基準を満たしている、4、機能障害が学業、社会、仕事、健康などの一分野で中等度、5、多次元で中等度の機能障害がある、6、一分野で重度の機能障害がある、7、日常生活機能の多次元で重度の機能障害がある。Busner & Targum(2007)が元ネタ。感覚的にはGAF的な感じにすると臨床家は評価しやすいということなのだろう。

  • Busner, J., & Targum, S. D. (2007). The clinical global impressions scale: Applying a research tool in clinical practice. Psychiatry (Edgmont), 4(7), 28–37.

分析

衝動性と敵意はともにIGDとADHDと関連していた。また、最終モデル(表3のモデル2)ではIGDと関連していた。Baron and Kenny (1986)の媒介理論によれば、この結果は、衝動性と敵意がIGDとADHDの関連を部分的に媒介していることを示す。

f:id:iDES:20201004212402p:plain

結果はおそらくあってるが、分析方法はこれであってるのかわからない。

  • Baron, R. M., & Kenny, D. A. (1986). Themoderator-mediator variable distinction in social psychological research: Conceptual, strategic, and statistical considerations. Journal of Personality and Social Psychology, 51(6), 1173–1182.

結論

併存するADHDとIGDは若年成人のIGD重症度と関連している。したがって、成人ADHDはIGDへの負の影響を防ぐために効果的に治療されるべきである。

先行研究

IGDを持つ青年はBarratt Impulsivity Scaleのスコアが高いことが示されている(Ding et al., 2014)。 - Ding, W. N., Sun, J. H., Sun, Y. W., et al. (2014). Trait impulsivity and impaired prefrontal impulse inhibition function in adolescents with Internet gaming addiction revealed by a go/no-go fMRI study. Behavioral and Brain Functions: BBF, 10, 20. http://dx.doi.org/10.1186/1744-9081-10-20.

レビューでは衝動性がADHDを持つ個人の間で物質依存症への脆弱性に関与していることを示唆(Shirley & Sirocco, 2014; Urcelay & Dalley, 2012)。

  • Shirley, M. C., & Sirocco, K. Y. (2014). Introduction to special section: ADHD, impulsivity, and alcohol abuse. Experimental and Clinical Psychopharmacology, 22(2), 97–99. http://dx.doi.org/10.1037/a0036124.

  • Urcelay, G. P., & Dalley, J. W. (2012). Linking ADHD, impulsivity, and drug abuse: A neuropsychological perspective. Current Topics in Behavioral Neurosciences, 9, 173–197. http://dx.doi.org/10.1007/7854_2011_119.

敵意、つまり、不親切な思考、感情、行動に反映される精神症状(Lin et al., 2008)は、IGDと関連している(Chooet al., 2010; Yen, Ko, Yen, Wu, & Yang, 2007)

  • Choo, H., Gentile, D. A., Sim, T., Li, D., Khoo, A., & Liau, A. K. (2010). Pathological videogaming among Singaporean youth. Annals of the Academy of Medicine, Singapore, 39 (11), 822–829.

  • Yen, J. Y., Ko, C. H., Yen, C. F., Wu, H. Y., & Yang, M. J. (2007). The comorbid psychiatric symptoms of Internet addiction: Attention deficit and hyperactivity disorder (ADHD), depression, social phobia, and hostility. The Journal of Adolescent Health: Official Publication of the Society for Adolescent Medicine, 41(1), 93–98. http://dx.doi.org/10.1016/j.jadohealth.2007.02.002.

暴力的なゲームの増加は、ベースラインのレベルと比較して攻撃性のレベルを有意に増加させることが示唆(Barlett, Harris, &Baldassaro, 2007)。

ADHDの成人の間でリスクまたは報酬に基づく意思決定が不足している(Matthies, Philipsen, & Svaldi, 2012; Mowinckel, Pedersen, Eilertsen, &Biele, 2015)

インターネットゲームを利用している成人は、オンラインだけでなく、現実世界でも敵対的な行動を示すことが多い(Yen, Yen, Yen, Wu, Huang, &Ko, 2011)。 - Yen, J. Y., Yen, C. F., Wu, H. Y., Huang, C. J., & Ko, C. H. (2011). Hostility in the real world and online: The effect of Internet addiction, depression, and online activity. Cyberpsychology, Behavior and Social Networking, 14(11), 649–655. http://dx.doi.org/10.1089/cyber.2010.0393.

32年間ゲームが禁止されていたアメリカの町

こちらの記事などで紹介されている。

www.patriotledger.com

アメリカ、マサチューセッツ州マーシュフィールドは32年以上もアーケードゲームが禁止されていた町として知られている。

en.wikipedia.org

マーシュフィールドの人口は2万5千人程度とそれほど大きくない町である。この町の出身で有名なのはエアロスミススティーブン・タイラーのようだ。

1982年にコイン式ビデオゲームアーケードゲームをマーシュフィールドの店で禁止する条例が制定された。コイン式テレビゲームが子どもたちからお金を奪い取り、若者を犯罪に駆り立てると考え、ゲームの禁止条例を可決した。

日本でいうゲームセンターの事業主はこの条例を不服として訴えたが、1983年に米国最高裁判所が棄却したことで条例は確定した。1994年と2011年にもゲーム禁止条例の不当性は争われたが、いずれも覆らず、32年経った2014年にようやくゲームができるようになった。

記事では、条例を覆す案に反対の住民スー・ウォーカー氏の言葉を伝えている。

「子供たちと夕食に出かけるのが好きなので、ゲームに気を取られることなく、子供たちと一緒に座って食事をすることができる」「ゲームはちまたにあふれているが、楽しいものだとはちっとも思わない」

マーシュフィールドについてはこちらの本にも書かれている。

ビデオゲーム、特に暴力的なゲームの影響力を堕落させると考えていた。過去40年間、米国の評論家や政治家は、学校での銃乱射事件、人種差別、肥満、ナルシズム、くる病(骨の病気)、自制心の問題、飲酒運転など、ほぼすべての社会病理の原因として暴力的ゲームを非難してきた。ビデオゲームは殺人、カージャック、レイプ、腕が千切れ落ちるのではないか(冗談ではなく) 、学習障害、さらには9月11日の同時多発テロの原因としてあげられている。このようなデジタルの脅威から社会を守るために、何十もの法律が成立し、連邦公聴会が開かれ、大統領が懸念を表明し、連邦最高裁判所に訴訟が提出された。

マーシュフィールドという町はは、アメリカの世相の典型例だといえよう。

他に下記のようなニュースがある。

www.csmonitor.com

www.bostonglobe.com

www.bostonglobe.com

www.gamespot.com

www.enterprisenews.com

ゲームは若者に中毒性があると言われており、学校をサボってゲームをするために理不尽な金額を使ってしまうと、元麻薬捜査官で禁止を提案した住民のトーマス・R・ジャクソン氏は言う。さらに、ギャンブルや薬物に関する活動は、若者への監視の届かないビデオゲームをする場所が関係しているとのこと。

雑感

アメリカと日本ではゲームをして悪化した先のビジョンが少し違う。

元麻薬捜査官の話にもあるように、アメリカではゲーム→社会不適合→麻薬→暴力・犯罪といった、子どもにゲームをさせておくと、犯罪者や反社会性のある者になってしまうかもという不安がある。

一方で、日本では、ゲーム→学力不振、ゲーム→不登校・ひきこもりといった、脱社会的な存在になるかもという危惧がある。日本とアメリカの社会からの逸脱モデルが異なる点をきれいに写し取っているようにみえる。

高齢者におけるデエビゴvs.マイスリー

治験第3相の論文

jamanetwork.com

55歳以上(中央値は63歳、55~88歳)で不眠症障害を有する参加者1006 名を対象とした無作為化二重盲検臨床試験プラセボマイスリー(ゾルピデム酒石酸塩徐放製剤 6.25mg)、デエビゴ(レンボレキサント5mg/10mg)を1ヵ月間、就寝時に投与。治療1ヶ月間の最後の2夜(第29夜と第30夜)にポリソムノグラフィーを比較。

持続睡眠潜時 LPS

消灯から連続した30秒の非覚醒状態が20回続く最初の分数として定義
プラセボマイスリー=デエビゴ
(<は統計学的に有意な差を示している)

睡眠効率

消灯から点灯までの総睡眠時間/間隔として計算した、ベッドにいる時間あたりの睡眠時間の割合(8時間で標準化した値)
プラセボマイスリー<デエビゴ

中途覚醒

プラセボマイスリー<デエビゴ

睡眠後半の中途覚醒

プラセボマイスリー<デエビゴ

雑感

不眠症の多い高齢者によく飲まれているマイスリーの置換をターゲットにした薬なのかな、という印象。ここで比較されているマイスリーは徐放剤で日本では発売されていない錠形である。マイスリーを徐放剤にするということは、中途覚醒がターゲットになっているということなので、日本でのマイスリーとは異なった考えの薬と見た方がよいだろう。日本での置換の候補はレンドルミンエバミールロヒプノールといったベンゾジアゼピン系の睡眠薬なのだろう。高齢者といわず、ベンゾジアゼピンが排除できる処方が望ましいので、フィットする場合にはデエビゴに乗り換えていった方がよいのだろう。

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ネット依存症はネット使用時間ではなく不安症状によって説明される

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

Bengü Yücens, Ahmet Üzer, 2018, The relationship between internet addiction, social anxiety, impulsivity, self-esteem, and depression in a sample of Turkish undergraduate medical students, Psychiatry Res. 267:313-318.

データ

2017-2018年の間。クロスセクショナル。トルコ、Afyon Kocatepe大学医学部の627人の学生。

尺度

  • Internet Addiction Test (IAT)
  • the Liebowitz Social Anxiety Scale (LSAS)
  • the Barratt Impulsivity Scale-II (BIS-II) 衝動性
  • the Rosenberg Self-Esteem Scale (RSES)
  • the Beck Depression Inventory (BDI)
  • the Beck Anxiety Inventory (BAI)

結果

参加者の27%(n=106)がインターネット依存症群に分類され、73%(n=286)が非インターネット依存症群に分類。インターネット依存症群では3.3%(n=13)が高水準、23.7%(n=93)が中等水準のインターネット依存症だった。

属性で関連がなかったものが以下。

  • 性別
  • 出世地
  • 試験の成績
  • アルコールの使用
  • ニコチンの使用
  • 居住場所
  • 居住形態
  • 宿題のリソース
  • オンラインの時間

関係があったものは以下。

  • 家族の平均年齢(高い)
  • 年齢(高い)

線形回帰モデルにおいて、IATスコアを従属変数とし、年齢、性別、BIS-11、LSAS-total、BDI、BAI、RSESを独立変数としたとき、LSAS-total(B=0,248、SE=0,032、β=0. 383、t=7,775、p<0.001)、BDI(B=,281、SE=,067、β=.207、t=4,208、p<0.001)、RSES(B=-,460、SE=,138、β==-.153、t=3,342、p=001)が有意で、F=24,810、p=0.000、調整済みR2=0.299であった。

ステップワイズ法による2つの階層的線形回帰モデルを行っている。

1つ目のモデルでは、LSAS-total scoreを独立変数、2つ目のモデルでは、LSAS不安領域と回避領域を独立変数としている。その結果、1つ目のモデルでは、LSAS-total score、BDI、RSESがIATを予測した(調整R2=0.291)。 436)、ステップ2(LSAS-回避とBDI)はIATスコアの45.7%(調整後R2=0.457)、ステップ3(LSAS-回避、BDI、RSES)はIATスコアの46.4%(調整後R2=0.464)を説明した。社会不安とインターネット依存症との関連は、インターネット依存症とうつ病や自尊心との関連よりも顕著であり、特に社会不安の回避領域は、インターネット依存スコアの全分散の43%を説明し、インターネット依存症に対する顕著な予測効果があった。

議論

社会的回避傾向の強い被験者ほどIATのスコアが高く、社会不安に関連した回避が分散の43%を予測していたのに対し、うつ病と組み合わせると45%になったことであった。オンラインコミュニケーションは、不安な対面の相互作用を回避する手段を提供し、本研究で決定されたように、脅迫的な社会的相互作用を中和または回避するために採用された多くの安全行動の一つである可能性がある(Lee and Stapinski, 2012)。

  • Lee, B.W., Stapinski, L.A., 2012. Seeking safety on the internet: relationship between social anxiety and problematic internet use. J. Anxiety Disord. 26, 197–205. doi:10.1016/j.janxdis.2011.11.001

この研究の医学生の標本ではインターネット依存症の重症度は衝動性と相関していなかった。Dalbudak et al. (2013) は、インターネット依存症の重症度が衝動性と関連し、衝動性はInternet Addiction Scale(IAS)スコアの有意な予測因子であった。

  • Dalbudak, E., Evren, C., Topcu, M., Aldemir, S., Coskun, K.S., Bozkurt, M., Evren, B., Canbal, M., 2013. Relationship of internet addiction with impulsivity and severity of psychopathology among Turkish university students. Psychiatry Res. 210, 1086–1091. doi:10.1016/j.psychres.2013.08.014

本研究では、インターネット依存症の者は有意に低い自尊心であり、自尊心はインターネット依存症は相関していたが、自尊心の尺度で説明された分散はわずかであった。AydınandSar (2011)は自尊心との関連を示しているが、Armstrong et al.(2000)や Niemz et al. (2005) は関連を示していない。

雑感

オンラインでどの程度時間を過ごすかと、インターネット依存の度合いには関連はないというところが興味深い。Caplan et al. (2009) は、問題のあるインターネット使用の分散の2%がオンライン活動によって説明されたが、分散の36%は、個々の「心理的プロファイル」説明されたとしている。

  • Caplan, S., Williams, D., Yee, N., 2009. Problematic Internet use and psychosocial well-being among MMO players. Comput. Human Behav. 25, 1312–1319.doi:10.1016/j.chb.2009.06.006

先行研究との違いは医学生という標本の特殊性が多少なりとも関係していそうだ。医学生という社会的な属性が均質な人たちの調査ではなく、様々な人たちを調査するとどのような結果が出てくるか、という点には興味がある。おそらく不安で説明される分散は大きいのだろうが、他の要因も出てくるだろう。これは社会学的な問である。

分析では、ステップワイズ回帰分析が使われているが、最近はLassoやリッジ回帰が推奨されていると思うので、分析法は再考が必要かもしれない。あくまで一般論だが、ステップワイズ回帰、Lasso、リッジ回帰の結果はわりと違う印象がある。

臨床面では、不安が分散の多くを説明するという結果が意味していることは、認知行動療法が有効であるということだ。特に認知療法の部分に価値が見いだせる。文中にも下記のような記述がある。

インターネット依存症の評価では社会不安やうつ病を考慮に入れるべきであり、治療過程においてこれらの特徴を無視してはならない。認知行動療法(CBT)はインターネット依存症の治療に有効であり、時間管理能力の改善、感情、認知、行動症状へのプラスの効果があると結論づけられている(Young, 2007)。

  • Young, K.S., 2007. Cognitive behavior therapy with Internet addicts: treatment outcomes and implications. CyberPsychology Behav. 10, 671–679. doi:10.1089/cpb.2007.9971

インターネットのヘビーユーザーではなく、嗜癖的な使用をしている人の不安が高いことは理路としてはよくわかるし、その人たちにCBTが有効なのも説得的である。不安が高くてネット依存的であっても生活が成り立つならそれはそれでいいではないか、という反面、場合によっては不安が高いと生活が成り立っていかない場合もあるだろう。もちろんインターネットはネガティブなことばかりではなく、不安を軽減したり、生活を豊かにしている側面があることも忘れてはならない。

といったことを考えていくと、臨床的な問いは結局のところ、不安症/不安障害の臨床の取り組みとほとんど同じものになっているように思う。