JMMから医療の産業化の話。
Q:732
10月1日付の読売新聞は、ある東大教授の「医療の産業化」をテーマにした小論を掲載していました。財政負担が軽く、かつ経済格差を生じない医療の産業化というものがこの社会に存在するのでしょうか?
自由な経済下では個人負担のみで、つまり公的資金の投入なしで、世界的に見て遜色のないサービスを受けられるのは、経済的に豊かな人だけになるでしょう。そうでない人たちの医療レベルをどこで線引きするかという過酷な選択も誰かがしなくてはなりません。また、そうした新しい格差を甘んじて受け入れる覚悟を具体的に想像してこの種の議論をしているひとはどれくらいいるのでしょうか?この種の胸の痛い、死生観にからむ問題を日本国民は避けようとするでしょう。結果の平等という甘い現実に慣れたらもうそれ以下は許せないはずです。だれしも今より悪い自分など想像したくないですから。
HASSY(病院管理職)
「健康格差社会」というやつか。国民年金問題の後には、健康保険問題がおそらく来るのだろう。
既に日本の国民医療費(お産や差額ベッド代などを除いた医療費の総額)は年間32兆1111億円という金額に達しています(厚生労働省・平成16年度国民医療費の概況)。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/04/index.html
この支払額全体を産業としてみた場合、平成16年の名目GDP496兆円の約6.5%を占めます。これは先進7カ国中ではイギリスに次いで7番目、つまり最低の水準です。
重い負担かどうかとなると議論の余地はあります。先進国の中で医療費負担を国際比較するときには、OECD Health Dataの Total expenditure on healthがよく用いられますが、医療費負担世界最高のアメリカは対GDPで現在15%ほどと日本の倍以上の水準であり、これに比べて日本が重い負担であるとするのは些か無理があるのではないでしょうか。
小林秀二(北海道大学大学院医学研究科社会医療管理学講座医療システム学分野助手)
日本は行政予算に占める医療費の割合が低い(先進国が下から2番目)。かといって、その分利用者が払っているというわけでもなく、医療負担はアメリカの半分である、という。なるほど。