井出草平の研究ノート

医者の数


hotsmaさんの少し前のエントリから。自分が参加したチャットに対する指摘である。

医療をリソースとして利用してひきこもり者が感じている苦痛を取り除こう、といった論調のチャット記録。医療への要求水準は高く、この国が2035年頃まで慢性的な医師不足に悩まされるといった現状認識は残念ながらない
http://d.hatena.ne.jp/hotsuma/20060603#p1


医師が足りないというのは非常に重要な点である。確かに「ひきこもり」を医療でサポートするといっても、医師の数が足りなければ引き受けようがない。


「ひきこもり」を引き受けるとするなら精神科が中心になるはず。調べてみると、精神科医標準配置(医療法施行規則第19条)は入院患者48人に対して1人。全国の精神科入院患者は33万人程度なので6900人ほどいれば形式上は問題ないということになる。現在の精神科医の数は1万2千人ほどなので、形式的には満たしていることになる。


ただ、48人を1人で診察するというのはかなり無理があるようなので、精神科ではなく通常の医師配置(16:1)で計算すると、精神科医は全国で2万人ほど必要になり、8千人ほど足らない*1


「ひきこもり」なり「摂食障害」を今以上に医療が引き受けていくというのは無理ではないだろうが、投薬治療のような低コストなものなのだろう。チャットでは、自分の意見として今以上に医療化すべきだと言った訳ではないが、現状認識として医療がどのくらいまで引き受けていけるかということは考える必要があろう。


追記:
児童精神科医不足! 関連記事一覧 (A Fledgling Child Psychiatrist)
http://homepage3.nifty.com/afcp/B408387254/C819714657/E208248567/index.html

児童相談所への常勤医師の配置 (A Fledgling Child Psychiatrist)
http://homepage3.nifty.com/afcp/B408387254/C819714657/E261611356/index.html


地域格差の例

 当初の支援策というのは、自治医大の出身者は内科系の総合医に主になるように島根県では推し進めてきて、さらに診療所の医師を助けるような制度を中心として、いろいろな制度を設立してきました。しかしながら、全国的に近年、産婦人科医、精神科医など専門診療科の医師も中小病院で確保が難しくなってきました。島根県も同じようなことが起こっています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/txt/s0331-1.txt

*1:あと、地域格差[都会は足りるかもしれないが田舎では医師が不足する]という要素も加わる。