近年の医療刑務所で摂食障害患者が増えているという。
医療刑務所とは刑に服している間に医療的対処が必要な者が入る施設である。
佐藤 克己,2007, 「八王子医療刑務所の現状と課題--矯正医療センターの実現に向けて」 『刑政』118(11), 34-42.
摂食障害患者の増加
患者の増加は女子受刑者において顕著であり、特に、摂食障害(神経性無食欲症)の患者の受入れが多くなっている。これらの患者は、病識がないことが多く、行動異常(食事の隠匿、窃食や反すう、自傷)治療への抵抗を示すなど非常に治療が難しく、その対応に職員の労力が奪われている。他の疾患に比べて、医師と看護・処遇・分類のチームワークの発揮がより重要になっている。
当所では、摂食障害の患者の脳障害について、頭部MRIや心理テストにより、低栄養状態と治療後の安定した状態とを比較し、低栄養状態の脳への影響を見ることを行っている。
治療と生活指導が効果を挙げ、治療目標体重まで回復し、軽快患者として女子刑事施設に環送されても、しばらくするとまた体重減少が見られ、再度の移送協議がなされる場合もあるし女子刑事施設からの情報では、工場で通常の刑務作業を行い元気に生活しているが、予備軍とも言うべき体重の者が相当数存在するようだ。医療部では、集団療法的プログラムも検討中である。
今年の3月に京都刑務所摂食障害と診断された30代の男性受刑者が死亡する事件が起こっている。
また、今年の4月に栃木県で、拘留中の37歳女性が死亡するという事件が起こっている。
死亡した女性は食料品を万引きしたとして逮捕され拘置中だったという。摂食障害の症状で万引きが見られることがあり、このケースでもおそらくそうだったのだと思われる。
このような事件が起こっていることをみると、留置所や刑務所において摂食障害の知識を広めていくことが必要なのだろう。
摂食障害の受刑者死亡=過失致死視野に捜査−京都地検
京都刑務所(京都市山科区)で今月17日、摂食障害と診断された30代の男性受刑者が死亡し、刑務所の治療に問題があった可能性があるとして、京都地検が業務上過失致死での立件を視野に捜査していることが24日、分かった。
刑務所によると、受刑者は昨年6月に入所、今年2月に摂食障害の診断を受けて病棟に収容された。医師が栄養剤を投与するなど治療していたが、今月17日、意識不明の状態で発見され、外部の病院に搬送されたが、死亡が確認された。
地検によると、男性は体重が30キロ台になるまで衰弱しており、刑務所が外部の病院に診せるなど適切な治療を怠った可能性があるとみて捜査している。(2010/03/24-21:58)
司法解剖:拘置中の女死亡、摂食障害で食事取らず 栃木署
2010年4月25日 20時8分
栃木県警栃木署は25日、窃盗容疑で21日に現行犯逮捕し同署3階の留置室に拘置していた栃木市の無職の女(37)が25日死亡したと発表した。女は摂食障害で入院歴があり、拘置中はほとんど食事を取らなかったという。26日に司法解剖し死因を調べる。
同署によると、24日午後7時ごろ、留置室で女が毛布にくるまり、ぐったりしているのを巡回中の署員が見つけ119番。搬送先の病院で25日午前5時25分ごろ死亡した。女は市内で食料品を万引きしたとして逮捕され拘置中。出された食事を一、二口しか食べず、23日からおかゆに切り替えた後もほとんど食べなかったという。
同署の石崎和男副署長は「管理体制は適正だったと考えている」とコメントした。【中村藍】