四国新聞「こどもニュース特別号 ゲーム依存特別号」という19ページの冊子が昨年配布されていたようだ。
一部を紹介しよう。
ゲーム依存は病気
冊子の最初はゲームの害のアピールから始まる。精神障害は病気ではない(参照)ので、最初の見出しから間違ってしまう四国新聞クオリティ。さすがである。
幼児期からのゲーム・ネット使用は依存のリスクになる?
もちろん科学的根拠はない。
WHOのガイドラインというのは以前のエントリーで紹介したもの(参照)。座位(座っている時間)が健康状態に与える影響に関するガイドラインで、ゲームやネットの依存とは関係がない。
WHOのガイドラインは日本語にも翻訳されていないため、誰もが読めるわけではない。騙そうという意図があると捉えられても仕方のない書き方だろう。
好意的に解釈すれば四国新聞の記者もWHOのガイドラインを読んでおらず、この発言を以前からしている久里浜医療センターの樋口進さんの言葉を真に受けてしまっただけなのかもしれない。おそらく、こちらが正解だろう。しかし、一次情報にあたらず、あやふやな情報を流すのは、新聞としては致命的なので、どちらにしろアウトだ。
学習効率、辞書 vs. スマホ
学習効果の比較として紙の辞書とスマホの辞書が比べられている。
紙の辞書を使った方が前頭葉の血流が増加するという結果のようだが、この差は紙と電子の違いの差ではなく、検索作業の違いから出たものである。紙の辞書は全面に字が書いてある。その中から目的の単語を調べないといけない。非常に煩雑な作業が必要になる。紙の辞書を使う方が、前頭葉の活動が活発になるのは当たり前のことである。
その分、学習とは関係ないところで頭を使わなければならないため、学習そのものへの集中力を削ぐ可能性が高い。つまり辞書引きに集中しすぎて、肝心の勉強に集中できない、辞書引きで疲れてしまったということが頻繁に起こる。
誰でも経験があるのではないだろうか。英語の意味が分からないので、辞書を引いたものの、辞書を引くのに苦労して、文章に何が書いてあるか忘れてしまったといったことが。辞書引きに多くの労力が必要であるからといって、学習の効果・効率が良いとは限らないのだ。
また「すぐに調べられるか」という点で紙の辞書はかなり不利である。紙の辞書は重たくかさばる。常に持ちあるというわけにはいかない。辞書が置いてある部屋に取りに行くのは面倒なので「まぁいいか」となりがちだ。後で調べることにしたとしても、だいたい忘れてしまう気がする。それに比べて、手元にあることが多いスマホで意味を調べるのは「調べ学習」の理想形ですらある。
わからない英単語などは、スマホでサクッと調べて、必要があればQuizletなどを利用して単語カードを作り空き時間に覚えるのがよいだろう。スマホは語彙・単語を覚えるにはかなり便利なツールだ。逆に、数学はやはり手を動かさないと、何も始まらないので、紙に鉛筆がベストだと思う。もちろん、紙にこだわる必要はなくiPadにApple pencilで書き込むというのでもよいと思う。
「ぼんやり」もしてはいけない
スマホで辞書引き
↓
ぼんやりしている時よりひどい
↓
前頭葉の発達が遅れる
↓
スマホの使用は脳に悪影響を与える
この論法であれば「ぼんやり」するのもNGである。
四国新聞の記者は人生の一時も「ぼんやり」などしたことがないのだろう。なにしろ「ぼんやり」などしてしまったら、スマホほどではないかもしれないが、前頭葉の発達が遅れて脳に悪影響が出てしまうからだ。
新聞のアピール
新聞をわざわざこの時代に紙で取り寄せている家は家庭教育な熱心な傾向にあるため、それが成績にも影響しているだけである。
この特別号は、ゲームの害を伝えることから始まっていたが、いつの間にか、新聞を自画自賛する流れになる。
新聞は"情報の宝箱"
残念ながらこの特別号には多くの間違いがあるので「情報の宝箱」というよりも「間違いの宝箱」のように感じられる。いや、「間違い」も「情報」には違いないので、新聞の読み方を学習するには良い教材かもしれない。
結論 スマホを捨てて新聞を読もう
四国新聞の売り上げも伸びるしね。