「ここの病院は何科ですか?」。控室のような殺風景な小部屋の雰囲気に不安を覚えたAさんはセンターの職員に尋ねた。「精神科だ」。職員はそう手短に答えた。Aさんはそのとき初めて自らが連れてこられたのが精神科病院だと知らされた。
「点滴か健康診断かと思っていたので、まさか精神科病院に連れてこられるとは思わず、想定外の事態に心中ではそうとう動揺していた」(Aさん)
強い不安の中、10分ほど小部屋で待っていると、白衣を着た医師が現れた。「どうしてここに来たんですか?」、医師からそう問われたとき、Aさんは、「ああ、これで今までのことをきちんと説明すれば助けてもらえるだろう」と安堵。センター職員の同席にも構わず、医師に自らの置かれた状況を一気に打ち明けた。
「自宅にいたら無理やりセンターに連れてこられて、9日間も監禁されていました。人道的な見地から助けてください」
決死の訴えに対して医師は、「今日からここに入院してもらいます」とのみ告げた。驚いたAさんが再度「人道的な見地から助けてください」と懇願するも、「もう決まったことだから」などと言い(病院側は「診療録の生活歴・現病歴に記載されている経過を尋ね、精神科における入院治療の必要性を伝えた」と民事訴訟における準備書面で主張)、母親から同意を得て、本人の意に反した「医療保護入院」が決定された。