中華娯楽週報 第4回:アニメ「EVIL OR LIVE」から中国の苛烈な“ネット中毒者改造”を見る(IGN Japan)

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eスポーツチームが「ならず者」としてマンションを追い出される

2017年8月、「League of Legends」の公式世界大会への出場を決めた香港の名門eスポーツチーム「HKA」。12月には台湾でマンションの賃貸借契約をしたが、“ならず者”と見なされて実力行使で入居を阻止された。

楊永信

中国には楊永信(よう・えいしん)という、国家の信頼を受けてネット中毒者に強制治療を積極的に行っている、現在55歳の有名な精神科医がいる。この楊先生は「全国的ネット中毒治療専門家」(全國戒網癮專家)として、絶えず物議を醸している人物だ。山東省の臨沂市にある大病院「臨沂市第四人民医院」の副院長だけではなく、同病院内に設置されている「楊永信ネット中毒治療センター」(楊永信網絡成癮戒治中心)のセンター長も務めている。楊氏が全国的に有名なのは、彼自身の名前を冠したネット中毒治療センター(以下「楊永信センター」)のトップとしてである。
そもそも漫画「理想禁区」の掲載開始時のタイトルは「網癮禁區」、つまり「ネット中毒(網癮)の立入禁止区域」という直球のものだった。楊永信センターをはじめ、中国には同様のネット中毒者の強制再教育施設が非常に多く、親世代など“大人”には評判が良い一方、若者からは忌み嫌われている。楊永信はその代表的人物であり、そのセンターも全国で最も有名で、最も“権威”があり、そして最も多くの問題が告発されている施設として非常に悪名高い。「理想禁区(網癮禁區)」のモデルとなったのは、まさにこの楊永信センターである。

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楊永信センターをはじめ、全国各地にある矯正施設の入所者は軍事訓練を受け、軍隊的な規律を要求される。身体的訓練の他、「心理指導」と呼ばれる根性重視のスパルタ的なレッスンを受けさせ、孔子の「論語」など“善”を説く中国の古典を大量に暗記させるところもある。体罰が日常茶飯事であり、1人がルールを破ったり古典の暗唱に失敗したりすると、クラス全員が罰を受けるといった「連座」に関する告発もされている。体罰にはムチなど、身体に大きな傷害を与える道具を用いるものも含まれるという。

他にも多くの非人道的な措置が判明しており、猟奇的にそれらを羅列していくとキリがない。中国におけるネット中毒とその“治療”にまつわる問題群は、このコラムの10回分が書けるくらい複雑なものなのだが、読みやすさを考慮して極力コンパクトにしたいと思う。強制矯正施設での“指導”と“治療”の過酷さを至極簡潔に説明することができる――これまで、死亡事件が頻繁に発生しているのだ。例えば2017年8月、中国東部の安徽省の施設に入所していた18歳の少年が死亡したニュースは全国的に注目された。少年の死因は明かされなかったが、両親が独自に検死を頼んだ医師によると、数十箇所の外傷があり、内臓損傷もあるという。
他にも2009年に広西省、2014年に河南省、2017年に陝西省などで少年・少女らが殴打や自殺による死を遂げている。2017年11月には、江西省南昌市の施設で複数の入所者が歯磨き膏や洗剤を呑み込んで自殺を図ったが、外部に知られることを恐れた施設は重症の患者らを病院から無理矢理連れ戻したことが告発された。この事件がきっかけとなり、「中国にはいったい何人の楊永信がいるのか」と全国的に広い議論が巻き起こった。その結果、当該施設は2017年末に閉鎖されることとなった。