井出草平の研究ノート

第7次宮崎県医療計画(素案)に関するメモ

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近年、懸念されているネット依存・ゲーム障がいに対応するため、依存症相談拠点を中心に相談対応の充実や普及啓発を推進していきます。

相談対応の充実が謳われている。香川のように条例を作るというものではないので、この文言に大きな問題があるとまでは言えないが、引っかかる点があるのは確かである。

1. ネット依存とは?

ICD-11にゲーム障害が採用され今年2022年から準備が整い次第、現在のICD-10から乗り換えが行われるが、「ネット依存」は含まれていない。医療計画と書かれているが、ネットへののめり込みは医療の対象だとは認められていない。最も引っかかる点はここである。

ゲーム障害が認められたから、ネット、SNS依存症もどさくさに紛れてねじ込んでいく典型のように思える。

2. 依存症相談拠点を中心に?

ネットに没頭したり、ゲームに没頭するのは依存症ではないか?という思い込みが私たちにはあるように思えて仕方ない。確かにICD-11もアルコールや薬物の使用障害に隣接したカテゴライズをしているため、分類上は近接しているというのは間違いではない。

しかし、分類上、依存症に隣接しているからといって、対応ができるというのは別問題である。アルコールにしろ、薬物にしろ、ほぼ例外なく成人対応である。アルコール依存症は遺伝的な要因が高いことが判明していて、20代前半には9割が大量のアルコール使用をしているため、10代の半ばから依存症になっているケースは存在する。

ともあれ、基本は成人患者の対応をしている部署と人材である。

しかし、ネットやゲームは児童・思春期の問題とされているため、児童・思春期の特別なスキルが必要になる。ADHDの併存が多いなど、いわゆる発達障害の影響も考えられる。

そういった治療面を考えると、従来の依存症相談拠点でよいのか、というのは甚だ疑問がある。

「依存症に近接したものであるため、依存症の部署が対応するのがよかろう」というカテゴリー・エラーの典型である。

旧来の依存症の対応がネットやゲームの没頭に有効である、というエビデンスくらいは提示すべきなのだろうが、英語論文をみている限りは、そのようなエビデンスは存在しない。

エビデンスがないのであれば、通常の振り分けどおり、児童・思春期の問題はその年代の問題を扱いなれている児童精神科に任せるのが最も間違いが起きにくい方法であろう。

実際に対応するのは大悟病院?

久里浜医療センターが「インターネット依存・ゲーム障害治療施設リスト」というものを公開している。

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宮崎県は大悟病院が挙げられている。

宮崎県の「依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関について」というページには5つの医療機関が掲載されているが、薬物依存症・ギャンブル等依存症を掲げているのは大悟病院だけである。

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久里浜のリストと宮崎県の資料を見る限り、大悟病院が対応することになるだろう。

大悟病院

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病院は人里離れたところにある。精神科の単科病院、つまり、統合失調症の受け入れをしていた病院によくある立地である。
現在は認知症患者を中心に受け入れているようだが、一昔前は、統合失調症の受け入れをしていた病院であろう。

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現在は、精神科と内科を併設している。高齢者の入院である限りは内科は必要である。

この病院の設立は1981年のようだ。

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