井出草平の研究ノート

樋口進先生、ICD-11にネット依存症が診断名として収載されると偽の発表をしていた

2013年に出版された久里浜医療センター院長(当時)の樋口進先生の本から。

じつはネット依存を精神疾患に含めるかどうかについては、研究者の聞でさまざま議論が深められている段階です。しかし、アメリカ精神医学会が定める診断基準「DSM」では、2013年5月から使われている改定版(第5版)に「将来、医学的知見が蓄積された段階で追加されるべき診断名」として、「ネット依存(正確にはインターネットゲーム障害)」が盛り込まれています。(pp.16-7)

ネット依存症の本なのに、ゲームの依存症のぶっこんでくる樋口先生。「正確には」と書いてあるけど、まったく別物じゃないか?

また、私どもが日常の診療に使用している世界保健機関(WHO)が定める診断基準「ICD」でも、2015年にリリースされる改訂版(第11版)から正式にネット依存が組み入れられる予定です。(p.17)

ICDの改訂版(第11版)はICD-11のことである。周知のとおり、ICD-11にゲーム行動症は収載されたが、ネット依存症に相当するものは収載されていない。こんな本の中で、偽の発表をしていたようである。

私どもは厚生労働省科学研究の一環として、全国の中学生や高校生およそ10万人に対して、ネット依存に関する実態調査を行いました。2012年秋のことです。(p.12)
私どもは序章でも紹介した厚生労働省の研究班によるネット依存の調査結果を、本書を執筆中に発表し、新聞、テレビ、雑誌で「中高生のネット依存、推計52万人!」と大きく報じられました。(p.196)

メディアで話題になったと誇らしげに自慢する樋口先生。
通常運転にも見えるが、これは問題発言なのだ。記録用にメモを。

NIP(New Identity Program)

ネット依存の治療に対する久里浜医療センター独自の取り組みとして、NIP(New Identity Program)という活動も行っています。これは毎週水曜日に開催する、「新しい自分を見つけていこう」という思いを込めたプログラム。「オンライン上」ではない「リアル」の世界で、「自分の本来あるべき姿」や「新たな可能性」を見つけるためのステップとしてほしいとの願いを込めて名付けました。(p.114)

New Identity Programという名前は久里浜医療センターのウェブサイトにも載っている(https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/case/tiar_nip.html)。変な名前だなと前から思っていて、エントリを書くついでに、Perplexity+GPT4に"New Identity Program"を検索してもらって、どういう用法があるかまとめてもらった。

そうすると、証人保護プログラムと身分証明(ID: Identity Document)系のものが出てきた。やっぱり、そうだよね。

  1. 証人保護: 米国連邦証人保護プログラム(WPP)は、証人保護プログラム(Witness Security Program)または WITSEC とも呼ばれ、証人が連邦政府と関係がある場合に、裁判前、裁判中、裁判後に、脅 威を受けた証人およびその家族を保護するために設計された証人保護プログラムである。https://en.wikipedia.org/wiki/United_States_Federal_Witness_Protection_Program
  2. 個人のIDを変更する ウィキハウ(WikiHow)では、新しい名前の選択、新しい社会保障番号の取得など、IDを変更する方法を紹介しています。https://www.wikihow.com/Change-Your-Identity
  3. デジタルIDの動向: Thales Group は、バイオメトリクスの使用や標準の出現など、2023 年以降の状況を形作る5つの主要なデジタル ID の動向と利点について論じている。 https://www.thalesgroup.com/en/markets/digital-identity-and-security/government/identity/digital-identity-services/trends
  4. 米国のデジタルID法: デジタルID改善法は連邦議会を通過し、連邦政府が米国民にデジタルIDサービスの提供を開始するために必要な立法基盤を与えることが期待される法案である。 https://findbiometrics.com/new-us-digital-identity-act-expected-pass-paving-way-next-gen-id-70702/

固有名詞なのでつけた人の自由なんですけどね。