井出草平の研究ノート

福田節也「離婚の要因分析」

福田節也(財団法人 家計経済研究所 嘱託研究員)
平成16年度「消費生活に関するパネル調査」について
第4章 「離婚の要因分析」
http://www.kakeiken.or.jp/press/p12-5.pdf(PDF)


日本における「離婚の要因分析」の研究の一つ*1。目的は「家族」について調べるため。同時に読んでるノルウェーの論文と「離婚の要因」が著しく異なっている。社会によって、家族の崩壊である「離婚」を規定するものは違っているようだ。


福田論文は以下のようなことを主張している。

分析の結果、近年の結婚コーホート、妻方同居、妻低学歴、夫非正規雇用・無職であるとき
に離婚確率が高いという結果を得た。


離婚を肯定する価値観はその後の離婚行動に影響を与えないが、結婚相手以外の異性との親密な交際を肯定する女性ほど離婚確率が高いことが明らかとなった。


早婚であるほど離婚確率が高い、また子どもがいるほど、もしくは末子年齢が低いほど離婚確率が低い、という結果は本分析において統計的有意性は認められなかった。

  1. 1995-2004の間に結婚した人は離婚しやすい
  2. 結婚年齢が20-24歳の人は離婚しやすい(他の研究では早婚の方が離婚率は高いと出ているそうだ)
  3. 妻の実家に同居するタイプの婚姻は離婚しやすい
  4. 妻がフルタイム雇用だと離婚しやすい(離婚するためにフルタイムになった可能性を考慮に入れる必要性有り)
  5. 妻の学歴が高卒未満(中卒など)だと離婚しやすい
  6. 夫の職業がパート・嘱託・無職だと離婚しやすい
  7. 結婚後に夫以外の男性と交流を持つと離婚しやすい(夫と比較して夫がダメに見えてしまうためか、夫以外の選択肢が示されるためか)
  8. 妻の父親学歴が上がると離婚率はやや高くなる傾向を見せる
  9. 妻の兄弟数が4人以上だと離婚しやすい



下に行くほど離婚しやすい(女性の兄弟数)


1人っ子の方が離婚しやすいと思いきや、4人兄弟以上の方が離婚しやすい(女性)。


あと、やはり日本の特徴として一番興味深いのは、妻の学歴が低い方が離婚しやすいということだろう。

*1:他の有用な文献として福田論文で上げられているのは、安藏伸治,2003,「離婚とその要因――わが国における離婚に関する要因分析」『JGSS 研究論文集[2]』25-45.と加藤彰彦,2005,「離婚の要因――家族構造・社会構造・経済成長」熊谷苑子・大久保孝治編『コーホート比較による戦後日本の家族変動の研究』日本家族社会学会全国家族調査委員会,77-90.時間に余裕があれば確認したい