- 作者: 岡田尊司
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/05
- メディア: 新書
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このタイプは男子に多く、男子の初等少年院などでは八割がADHDに該当するともいわれる。比較的若年の男子非行少年では、ことに高い比率を占める。あまり養育環境に恵まれないケースがほとんどである。というのも、ADHDの多くは、適切かつ気長に対処すれば、年齢とともに落ち着いていくし、ADHDのもつ活動性、旺盛な好奇心、天真爛漫さは、大きな美質ともなるからだ。逆に、無理やり言うことを聞かそうとして乱暴に扱われると、本当の暴れん坊になってしまうのである。
「男子の初等少年院などでは八割がADHDに該当する」という研究を読んだことがないので、探してみたいと思う。藤川洋子(2007)の家裁送致のデータではAD/HDは5.7%だったので、かなりの開きがある。
多動型は、注意欠陥/多動性障害(ADHD=Attention Deficit/HyperactivityDisorde)や衝動性を高める何らかの機能的あるいは器質的障害がベースにあるタイプで、わかりやすい言葉でいえば、落ち着きのない、暴れん坊タイプである。ただし、誤解のないように付け加えると、ADHDなどの障害があるからといって、必ずしもこのタイプの非行少年になるわけではない。非行がみられるようになるのは、そのごく一部である。
日本でのデータが不足していて、日本では「ごく一部」なのか、そうでないのかよくわからない。ただ、海外の研究では「ごく一部」という表現は不適切である。
- AD/HDのうち60%が非行化した(ニュージーランド)
Moffitt TE., 1990, Juvenile delinquency and attention deficit disorder: boys' developmental trajectories from age 3 to age 15, Child development 61(3):893-910.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2364762
- AD/HDとCDを持った児童の45%が青年期に、32パーセントが成人期において触法行為を行った(CD:行為障害)
Farrington DP , 1989, Early predictors of adolescent aggression and adult violence, Violence and victims, 4(2):79-100.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2487131
- 青年期の犯罪は46%:11%(AD/HD:対照群)、成人期における犯罪21%:1%、成人期の服役11%:0%。6-12歳にAD/HDと診断された89名と87名の対照群を12年追跡した調査。アメリカ。
Satterfield JH, Schell A., 1997, A prospective study of hyperactive boys with conduct problems and normal boys: adolescent and adult criminality. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry ;36(12):1726-35.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9401334
AD/HDと犯罪の関連研究はたくさんあるので3つほど有名なものをだしてみた。やはり衝撃的なのは6割が非行化すること、成人期に11%が服役する(対照群は0%)あたりだろう。
国が違えば、事情が違ってくるものなので、AD/HDの半分以上が日本でも非行化しているとは言えない。藤川(2007)が5.7%という数字をだしているように日本ではAD/HDと犯罪の関連が低いかも知れないのである。とりあえず、もう少しデータが必要なように感じる。