井出草平の研究ノート

ひきこもり「引き出し業者」を刑事告訴 連れ出し監禁か(朝日新聞)

digital.asahi.com

弁護団の林治弁護士は「ひきこもっている人を不意打ちで連れ出すような行為は、本来時間をかけたコミュニケーションが必要な支援活動とは逆行しており、本人の自尊心を傷つけ、回復を妨げる。重大な人権侵害であり、刑事責任も問われうる問題であることを認識してほしい」と話している。

香川ゲーム条例「議論再開して」 制定過程に問題点、市民が陳情書(毎日新聞)

mainichi.jp

子供のゲーム時間の目安を定めた「ネット・ゲーム依存症対策条例」の制定過程などに問題があるとして、高松市の自営業、岸本充裕さん(44)が17日、条例の議論の再開などを求める香川県議会議長宛ての陳情書を県議会事務局に提出した。

香川県ネット・ゲーム規制条例の中国での報道

中国のゲーム関連のメディア触乐ChuAppの報道。

www.chuapp.com

中国語が読めないので機械翻訳で読んだ。

瀬戸内海放送(KSB)、裁判を起こしたわたるさんの話、作花知志弁護士の話、松本ときひろ議員のコメント、ニューヨークタイムズの記事、大山一郎議員の話(大山一郎,《纽约时报》评价他是个“极端保守主义者”,主张在教育中引入“日本传统价值观”,因此才会将电子游戏和互联网视为对日本家庭的威胁。)などが出ている。

田中敦さんのコメントとして次のようなコメントがある(機械翻訳をいくつか使って翻訳したので間違っているかもしれない)。

本の学校では、髪の毛の色やスカートの長さ、下着まで細かく決められた校則が多く、今でも生徒をかなり管理している。色やスタイル、親はあまり考えずに校則を支持することが多い。条例も議会の支持を受けて、一部の学校では、"紋切型"の対応がされ、非人道的な規制を考案し、ネガティブな取り組みに発展することが心配されている。

引きこもり支援「引っ張り出す」 衛藤1億相が発言(共同通信社)

www.hokkaido-np.co.jp

 衛藤晟一1億総活躍担当相は16日の記者会見で、引きこもりの人の支援団体と17日に意見交換すると発表した際「いろいろな形で引っ張り出したい」と述べた。

NYタイムズが「ゲーム条例」を報じる(KSB)

www.ksb.co.jp

6月12日付のニューヨーク・タイムズ電子版の記事では、ゲームの利用を1日60分までとする目安や、高校生による訴訟の動きを伝えています。この中で、「日本では罰則などの強制的な仕組みがなくても、公的な提案には従うべきだという強い社会的圧力がある」と指摘しています。

デジタルデバイスの目に与える良い影響

前回からの続きの記事。今回は「良い影響」"Positive Effects of Videogaming on Vision"の節であげられていたものをまとめた。

www.frontiersin.org

ゲームが視力を回復させる

www.ncbi.nlm.nih.gov

過去のエントリで何度か登場している論文。視力を左右する大きな要因であるコントラスト感度機能 (The contrast sensitivity function: CSF)が ゲームプレイによって向上する。コントラスト感度機能の向上によって視力が向上する可能性がある。ただし、ゲームであれば何でもよいわけではなく、アクションゲームである。アクションゲームはUnreal Tournament 2004コール オブ デューティ2が採用されている。

ゲームをプレイしていると衝動性眼球運動の反応時間が早くエラーが少ない

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 衝動性眼球運動の反応時間(Saccadic Reaction Times: SRTs)がゲームプレーヤーでは短い。衝動性眼球運動とは「われわれの眼の網膜の視覚分解能(視力)は中心窩で最大で,周辺視野では著しく低下していく.このために,視野の片隅の興味をひくものや,新奇なものがあると,中心窩でとらえるために眼球を回転させる必要がある.この眼球の回転運動は,衝動性眼球運動(サッカード)といわれ,非常に速い.」(https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/srr/SRR-No40-5-3.pdf)。また、エラー率がゲームプレーヤー群で少ない(それぞれ34%対40%)。

視覚処理の空間分解能が向上する

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov アクションビデオゲームをプレイすることで、視覚処理の空間分解能(spatial resolution)が向上する。空間分解能とは「位置的に接近した2点を独立した2点として見分ける能力」(https://www.weblio.jp/content/%E7%A9%BA%E9%96%93%E5%88%86%E8%A7%A3%E8%83%BD)

思春期におけるテレビゲームプレイと左前頭皮質の厚さ

journals.plos.org

大脳皮質全体の厚さは、ビデオゲームの自己申告時間(1週間あたりの時間)と相関していた。大脳皮質の厚さとビデオゲームの持続時間との間には、左背外側前頭前野(DLPFC)と左前眼球野(FEF)でロバストな正の相関が観察された。DLPFCは、ビデオゲームの成功に不可欠な認知領域である実行調節機構と戦略的計画の中核的な相関関係にある。FEFsは、ビデオゲームで広く用いられている眼球運動のプログラミングと実行、および視覚空間的注意の配分に重要な視覚運動統合に関与する重要な領域である。以前に報告されたビデオゲームのプレイによる認知機能の改善の生物学的基盤を表している可能性がある。

eスポーツと健康

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

アメリカとカナダの9つの大学からの65人の大学eスポーツ選手を対象とした匿名調査。選手は1日3時間から10時間の間で練習していた。
最も多く報告された問題は「目の疲れ(56%)」、次いで「首と腰の痛み(42%)」だった。また「手首の痛み(36%)」と「手の痛み(32%)」が報告されている。4割が身体運動をしていなかった。調査対象となった選手のうち、医師の診察を受けたことがある選手は2%だった。

デジタルデバイスの目に与える悪影響

こちらのレビューの"Negative Effects of Videogaming, Problematic Internet Use, and Gaming Addiction on Vision"の節であげられていたものをまとめた。

www.frontiersin.org

東南アジア地域のインターネット使用と眼精疲労

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

東南アジアの学生の問題のあるインターネット使用に関する38の研究のレビュー。19%の被験者が眼精疲労を経験したと報告。

小児における眼精疲労の有病率

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

有病率研究のシステマティックレビューおよびメタアナリシスにより、0~18 歳児の眼精疲労の有病率を推定した論文。結果は19.7%(12.4-26.4%)。
東南アジアの研究Balhara et al.(2018)での問題のあるインターネット使用群の眼精疲労は19%であったので、一般群とそれほど違いがないのかもしれない。

韓国の小児のドライアイ

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

スマートフォン使用の1日平均継続時間は、小児のドライアイ群は対照群よりも長く(ロジスティック回帰分析、P<0.001、OR=13.07)、屋外活動の1日平均継続時間は、小児のドライアイ群の方が対照群よりも短かった(ロジスティック回帰分析、P<0.01、OR=0.33)。

デジタルメディアの過剰使用は依存でなく健康への影響がある

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

デジタルメディアの過剰使用が子どもの健康に及ぼす影響のインタビュー。ヨーロッパ9カ国の9歳から16歳までの子どもたちを対象。子どもたちはインターネット中毒や過剰使用を示すことなく、いくつかの身体的・精神的な健康上の問題を報告した。身体的な健康症状としては、目の問題、頭痛、食べない、疲れやすいなどが挙げられた。

オンラインゲームが目に与える影響

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

健康な大学生50名に夜間に4時間、コンピュータ上でオンラインゲームを継続的にプレイしてもらう実験。収束障害と収容障害(convergence and accommodation disturbances)が生じ、身体的・眼的不快感(physical and ocular discomfort)が増加。調節性と両眼転導機能とまばたき速度が有意に低下した。すべての視覚機能は翌朝までにベースラインレベルに回復した。

スマホと内斜視

www.ncbi.nlm.nih.gov

韓国での研究。1日4時間以上スマートフォンを4ヶ月間以上使用した7~12歳の学生が急性後天共同性内斜視(Acute Acquired Comitant Esotropia )を呈した。

日本でも内斜視の増加が眼科医の中で話題になっているそうだ。

www.m3.com

ただし、これだけスマートフォンが社会に普及し、メリットを享受している状況で、一概にスマートフォンの使用は眼に悪いといったメッセージを発するべきだとは考えておりません。「デジタルデバイスの使用時は休憩を取る(1時間見たら5-10分休憩)」「画面と眼の距離を保つ(パソコンで50cm、スマートフォンで30cm以上)」といった予防策の啓発が現実的だと考えています。(浜松医科大学・佐藤美保さん)

眼精疲労と姿勢

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

11~17歳のインドの都市部の児童が対象。576人の思春期の学生を対象に、デジタルデバイスを使用しながら横になる習慣とデジタル眼精疲労の症状(27%)に有意な相関関係があった。寝る前のスマホ使用ではなく、ここで言われているのは、ベッドで作業したり読んだりすること。18% (103人)がデジタルデバイスで作業した後、一日の終わりに眼精疲労を経験する。

勉強のスタイルが関係しているようだ。学生たちはデバイスを宿題の補助として使用するだけでなく、3分の1は従来の教科書の代わりに読書にデジタルデバイスを使用した。デジタルデバイスによる眼精疲労はゲームと結び付けられがちだが、勉強のスタイルの方が大きな問題となるだろう。

大学生のコンピュータービジョン症候群

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

ジャマイカの大学生を対象にした研究。コンピュータービジョン症候群の症状は、首の痛み(75.1%)、眼精疲労(67%)、肩の痛み(65.5%)、眼熱傷(61.9%)が最も多かった。ドライアイ(26.2%)、複視(28.9%)、かすみ目(51.6%)が最も一般的な症状であった。眼熱傷(P = 0.001)、眼精疲労(P = 0.041)、首の痛み(P = 0.023)は、視聴レベルと有意に関連していました。中等度の眼熱傷(55.1%)および複視(56%)は、携帯機器を使用した人に発生した(それぞれP = 0.001および0.007)。中度のぼやけは、デバイスを斜めに持った人が14.8%であったのに対し、デバイスを下から見た人の52%で報告されています。重度の眼精疲労は、装置を見下ろした人の63%で報告されたのに対し、装置を目の高さに保持した人は21%であった。肩の痛みは使用パターンとは関係ありませんでした。

ノートパソコンがダメみたいだ。デスクトップの復権か。

眼精疲労と視力の影響の先行研究は一貫しておらず、眼精疲労があるので視力低下があると考えるのは早計である。また、Vilela et al. (2015)では、眼精疲労を持つ子供の大多数に視力や屈折異常は認められないとしている。

ゲームと視力低下は無関連

journal.nichigan.or.jp

1979年から2012年までの日本の大規模疫学調査。視力不良は日照時間と負の関係を示し、身長とは単回帰でのみ正の関係を認めた。一方、学習時間とテレビゲーム時間は視力不良と有意の関係が認められなかった。