井出草平の研究ノート

デジタルデバイスの目に与える良い影響

前回からの続きの記事。今回は「良い影響」"Positive Effects of Videogaming on Vision"の節であげられていたものをまとめた。

www.frontiersin.org

ゲームが視力を回復させる

www.ncbi.nlm.nih.gov

過去のエントリで何度か登場している論文。視力を左右する大きな要因であるコントラスト感度機能 (The contrast sensitivity function: CSF)が ゲームプレイによって向上する。コントラスト感度機能の向上によって視力が向上する可能性がある。ただし、ゲームであれば何でもよいわけではなく、アクションゲームである。アクションゲームはUnreal Tournament 2004コール オブ デューティ2が採用されている。

ゲームをプレイしていると衝動性眼球運動の反応時間が早くエラーが少ない

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 衝動性眼球運動の反応時間(Saccadic Reaction Times: SRTs)がゲームプレーヤーでは短い。衝動性眼球運動とは「われわれの眼の網膜の視覚分解能(視力)は中心窩で最大で,周辺視野では著しく低下していく.このために,視野の片隅の興味をひくものや,新奇なものがあると,中心窩でとらえるために眼球を回転させる必要がある.この眼球の回転運動は,衝動性眼球運動(サッカード)といわれ,非常に速い.」(https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/srr/SRR-No40-5-3.pdf)。また、エラー率がゲームプレーヤー群で少ない(それぞれ34%対40%)。

視覚処理の空間分解能が向上する

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov アクションビデオゲームをプレイすることで、視覚処理の空間分解能(spatial resolution)が向上する。空間分解能とは「位置的に接近した2点を独立した2点として見分ける能力」(https://www.weblio.jp/content/%E7%A9%BA%E9%96%93%E5%88%86%E8%A7%A3%E8%83%BD)

思春期におけるテレビゲームプレイと左前頭皮質の厚さ

journals.plos.org

大脳皮質全体の厚さは、ビデオゲームの自己申告時間(1週間あたりの時間)と相関していた。大脳皮質の厚さとビデオゲームの持続時間との間には、左背外側前頭前野(DLPFC)と左前眼球野(FEF)でロバストな正の相関が観察された。DLPFCは、ビデオゲームの成功に不可欠な認知領域である実行調節機構と戦略的計画の中核的な相関関係にある。FEFsは、ビデオゲームで広く用いられている眼球運動のプログラミングと実行、および視覚空間的注意の配分に重要な視覚運動統合に関与する重要な領域である。以前に報告されたビデオゲームのプレイによる認知機能の改善の生物学的基盤を表している可能性がある。

eスポーツと健康

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

アメリカとカナダの9つの大学からの65人の大学eスポーツ選手を対象とした匿名調査。選手は1日3時間から10時間の間で練習していた。
最も多く報告された問題は「目の疲れ(56%)」、次いで「首と腰の痛み(42%)」だった。また「手首の痛み(36%)」と「手の痛み(32%)」が報告されている。4割が身体運動をしていなかった。調査対象となった選手のうち、医師の診察を受けたことがある選手は2%だった。