中国の平均年齢12.7歳の小学7年生1770名を対象にした近視とニアワーク(近業)についての研究である。
- Li SM. Li SY. Kang MT et al., 2015, Near Work Related Parameters and Myopia in Chinese Children: the Anyang Childhood Eye Study. PLoS One. 10 :01 34514.
結果
- 連続読書(45分以上) オッズ比=1.4(95%CI: 1.1-1.8)
- テレビ視聴距離の近さ(3m以下) オッズ比=1.7(95%CI: 1.2-2.3)
- 書くときの頭の傾き オッズ比=1.3(95%CI: 1.1-1.7)
- 蛍光灯のデスクランプの使用 オッズ比=1.5(95%CI: 1.2-2.0)
年齢、性別、身長、近視の親の数を調整した後も、これらの因子は有意な関連があった。 書くときの頭の傾きとは下を見ながら書くということである。
読書
読書の長い子どもは近視になりやすいようだ。中国は読書を国策と掲げて推進しているが、大丈夫なのだろうか。
テレビとの距離
3m以下だと1.7倍近視になりやすい。テレビからはなるべく離れた方がよいようだ。
書くときの姿勢
書くとき、つまり勉強をしている時の姿勢のことである。頭の傾きとはのぞき込むような姿勢だと1.3倍近視になりやすいようだ。紙を使った今の勉強のスタイルでは無理かもしれないが、書くときも読むときも、下をのぞき込まず、まっすぐ前を向く方が良いのかもしれない。
ペンの持ち方
ペン先から指先までの距離と近視の有無との間には境界的な有意性があった(P = 0.07)。ペン先と指先の距離が近いと報告された子どもは、筆記時に頭が傾く確率が有意に高かった(43.5% vs. 36.7%、χ2 = 0.02)。ペンや鉛筆を持つときにペン先を持つスタイルだと、上からのぞき込むような姿勢になり、良くないようである。この研究を信じるならば、鉛筆の正しい持ち方の訓練は視力にも関係してくるということになる。
蛍光灯の卓上ライト
蛍光灯をつけて勉強をしていると、目には良さそうな感じがするが、そうでもないようである。白熱灯よりも、蛍光灯を卓上ライトに使用しているグループは近視が多い。蛍光灯を使用している子どもは、親が近視であることが多かった(χ2 = 0.001)という結果なので、親が近視だとできるだけ明るい環境で勉強をさせようとしているのではないかと推測できるが、逆効果になっている可能性がある。
蛍光灯に関しては、確かな結果だとは言えないようにも思うが、動物実験等での傍証を筆者らはあげているが、引用されている文献が撤回されていたりするので、怪しさのあるトピックである。
これはマウスで近視を誘発する可能性があることが報告されている。
- Yu Y, Chen H, Tuo J, Zhu Y (2011) Effects of flickering light on refraction and changes in eye axial length of C57BL/6 mice. Ophthalmic Res 46: 80-87. pmid:21273796 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21273796
低照度や蛍光灯の光スペクトルの狭さも影響している可能性がある。
- Norton TT, Siegwart JT Jr. (2013) Light levels, refractive development, and myopia - a speculative review. Exp Eye Res 114: 48-57. pmid:23680160 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23680160
この研究、および、以下の先行研究共に、夜間照明の使用と近視との関連は認められなかった。
- Guggenheim JA, Hill C, Yam TF (2003) Myopia, genetics, and ambient lighting at night in a UK sample. Br J Ophthalmol 87: 580-582. pmid:12714399 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12714399
撤回されている文献。
- Chen L, Zhang XW (2014) Which lamp will be optimum to eye? Incandescent, fluorescent or LED etc. Int J Ophthalmol 7: 163–168. pmid:24634884 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3949479/