井出草平の研究ノート

インターネット嗜癖における灰白質の異常

Yan Zhouらが2011年に発表した論文で、この分野のVBM研究の中では最初の報告である。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

  • Zhou, Y., Lin, F., Du, Y., Qin, L., Zhao, Z., Xu, J., & Lei, H. (2011). Gray matter abnormalities in Internet addiction: A voxel-based morphometry study. European Journal of Radiology, 79(1), 92–95. https://doi.org/10.1016/j.ejrad.2009.10.025

尺度

インターネット嗜癖の診断質問票は、ヤングによる病的賭博DSM-IV基準[13]を参考にした。Youngの診断質問票(YDQ)は、8つの「はい」または「いいえ」の質問から構成され(中略)ヤングは、8つの質問に対して5つ以上の「はい」の回答があれば、依存的な利用者であると主張した。その後、BeardとWolf [6]はYDQの基準を修正した。質問1~5と残りの3つの質問のうち少なくとも1つに「はい」と答えた回答者は、インターネット嗜癖に苦しんでいると分類された。

  • 13.Young KS. Internet addiction: the emergence of a new clinical disorder [On-Line]. Bradford, USA: Center for On-Line Addictions. https://netaddiction.com/articles/newdisorder.pdf

  • 6.Beard KW, Wolf EM. Modification in the proposed diagnostic criteria for Internet addiction. Cyberpsychol Behav 2001;4:377–83.

MRI

MR撮像は3T MRスキャナー(3T Achieva、Philips)で行った。灰白質/白質コントラスト用に最適化されたMPRAGEパルスシーケンス(TR = 331 ms, TE = 4.6 ms, FOV = 256 mm × 256 mm, スライス厚 = 1 mm, gap = 0, slices = 155, matrix = 256 × 256)をスキャンした。

結果

MRIデータのVBMでは、IA群では左前帯状皮質(ACC)、左後帯状皮質(PCC)、左島皮質、左舌状回のGMD(gray matter density)が低かった。両群間の白質変化には有意差は認められなかった。

T値とZ値だけが示されているのであまりよくわからないが、一応T検定をかけてみた。実験群18で対照群18なので、自由度は18+18-2=34である。Rだと以下のように計算できる。

# t値と自由度を設定
t_value = 6.09
df = 34

# 両側検定のp値を計算
p_value = 2 * (1 - pt(abs(t_value), df))
print(p_value)

平均値にあたるものは出ていないが、わりと差がついていることがわかる。

T scores P-value
帯状皮質(L) 6.09 .000
側脳室(L) 5.86 .000
核外 (L) 5.54 .000
帯状皮質(L) 5.3 .000
島 (L) 5.49 .000
舌回(L) 4.84 .000

avg152T1は、50%で閾値設定され2値化された灰白質確率マスクである。画像を同じ定位空間に空間的に正規化するためのテンプレートとして使用する1 2 。この画像はicbm_avg_152_t1_tal_lin.mncから得られたもので、Alan Evans, MNI, Canada (ICBM, NIH P-20 project, Principal Investigator John Mazziotta)によって提供されたものである2。avg152T1 画像は、Affine Template Image としても使用される6。この画像は avg305T1.nii や single_subj_T1.nii などの他の T1 画像とともに avg152T1.nii として spm12/canonical ディレクトリにある3。avg152T1画像は、聴覚文処理の神経基盤に関する研究のような研究にも使用されている5。

議論

私たちは、脳構造の特別な変化が、IA青年期の行動や情緒の問題と関連しているのではないかと考えた。
IA群と対照群の間でGMの減少が認められた領域は、情動行動を調節する役割を担う領域で概念的につながっていた。
帯状回大脳辺縁系の重要な部分であることはよく知られている。これは感情、気分、意欲、その他の情動状態を制御する役割を担っている [32]。帯状回視床から海馬への経路を提供しており、感情的に重要な出来事に注意を集中させ、攻撃的行動を制御する役割を担っているようである。
帯状回領域は、運動制御、認知、覚醒/意欲状態に関与している [33] 。一方、後部帯状回は視覚-空間および感覚運動過程に関与している [32] 。後帯状皮質は、皮質領域の大きな「default system」の一部でもあり、自己参照機能に関与している [34] 。
IA群では、左舌回の灰白質体積が健常者に比べて減少していることを解釈するのはより困難であった。この視覚連合野は、統合失調症に関する論文ではあまり関与していない [36,37] 。現在までのところ、IA青年期におけるこの所見の明確な意味を決定することはできない。