北村陽英「高校生の不登校・中途退学----ひきこもりに視点をおいた調査研究」 『厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)総括研究報告書 思春期・青年期の「ひきこもり」に関する精神医学的研究』
高校と中学校との違いは高校では授業中、一定時間以上 保健室にいると、欠課(授業欠席)の扱いとなり、累積すると進級できなくなる。また法定の74単位を取得することが必須で、単位の取り方は学校外の様々な資格試験も単位として認められていく傾向にある。
「法定の74単位」が必須。メモとして。
1974年に藤本は、「保護者が家庭的に社会的に衰退する姿しか示し得ず、また高学歴志向を目的とする学校教育のなかでは、思春期の若者は不安と困惑に陥り、未来投機を放棄し、依存的で閉鎖的な状態のなかで、今日だけに沈殿するという自己防衛を図るしかないであろう」と、ひきこもりという言葉は使っていないが、今日でいう不登校ひいてはひきこもりの増加を予言した。
藤本論文とは以下の論文。
- 藤本淳三,「登校拒否は疾病か」『臨床精神医学』 3,603-608,1974.
すごい古い論文。今日大学に行ったので、相互利用を申請しておいた。
2004年度の文部科学省の調査では、公立高等学校の長期欠席者数は3.06%であり、本調査の1.1%を上回っている。文部科学省では30日以上を本調査では50日以上の欠席として調査したために出現率に大きな差を示したと思われる。
文科省30日、この調査は50日がカットオフしている。このカットオフで除外されるのは、おそらく「五月雨不登校」ではないかと思う。つまり、行ったり行かなかったり、週1,2回休む感じの不登校である。
文部科学省の調査では中退率は2.1%であり、今回の調査では12%となり、数値に違いが見られるが、これは学校により中退に対する認識の違いによるものと思われる。文部科学省調査では、性別を見ていないが、本調査では、男子は1年で、女子は2年で中退する者が多い結果となった。
数値が違うことも男女差が出たことも、なぜかはよく分からない。ひとまずメモ。
【ケース4】 初回面接時:高校2年、女子生徒 摂食障害 保健室登校、不登校
10月頃より過食、3年3月、通信制に転出し2月通信制を卒業する。
ひきこもったまま自宅で治療を続け、精神状態が安定した。本人の自立もあった。卒業の知らせを手紙でうけ、アルバイトが活力になっているとのことであった。
摂食障害との関連ケース。不登校と摂食障害の併存は多いが、さほど注目されることはないように思う。もちろん研究は存在している。
E.考察のまとめ
1)養護教諭が「ひきこもり」と据えた生徒は在校生の0.2%と少ないものであった。しかし、長期欠席、不登校、退学生徒の中に「ひきこもり」生徒はいると思われる。元来、不登校の大部分は、それが一時的にしろ、長期にわたるにしろ、「ひきこもり」現象とも言える。不登校を「ひきこもり」と据えると、在校生の1.2%が「ひきこもり」と言える。退学生徒の中にも「ひきこもり」がいたと思われまた、中学校時代に「ひきこもり」傾向が強く、不登校等であって、高校へ進学しなかった者も多くいると思われ、高等学校生徒相当の年齢の実際のひきこもり数は、この数値を上回ると思われる。文部科学省の2004年度の高校不登校全国調査では、高校生の67500人(1.8%)が不登校であった。このすべてが、将来「ひきこもり」若者になるとは言えないが、この中から、かなりの「ひきこもり」状態になることも予想される。
中学不登校の場合だと、2割が「ひきこもり」へ移行していると言われている。
研究要旨
高校不登校や退学の多くが引きこもりになることが予想される。高等学校における、不登校、中途退学生徒等の実態を把握することを試みた。2004年度在校の高校生徒17,211名について、養護教諭を通じて、長期欠席、不登校、保健室登校、退学生徒数等を調査した。その結果、長期欠席生徒は在校生の1.1%を閉め、1,2学年に多くみられた。不登校生徒は、在校生の1.2%を占め、第1学年に非常に多く50.5%を占めた。保健室登校は在校生の0.2%を占め、各学年においてほぼ同数であった。中途退学生徒は在校生の1.2%を占め、1、2学年の退学が多くみられた。
長期欠席、不登校、退学生徒の中に「ひきこもり」生徒がいると思われる。不登校を「ひきこもり」ととらえると、在校生の1.2%が「ひきこもり」といえる。1、2学年に長期欠席、不登校や中途退学が多いことから、不登校が長期にわたったために中途退学した生徒が多いと思われ、退学生徒の中にも「ひきこもり」が多くいたと予想される。実際には、中学校から高校へ進学しなかった「ひきこもり」もいると思われ、この世代のひきこもり青年は、との数値を上回ると考えられる。