『週刊文春』に載っていたと教育長に詰め寄る大山一郎香川県議

前回前々回に引き続き、香川件のネット・ゲーム規制条例を主導的に推し進めている大山一郎県議の2009年の議会での発言から。

2009年09月29日:平成21年[9月定例会]文教厚生委員会[教育委員会
http://www.db-search.com/kagawa/index.php/7521160?Template=doc-one-frame&VoiceType=OneHit&VoiceID=53735

大山一郎香川県議がゲームに関して細松英正教育長に「『週刊文春』に載っていた」と詰め寄る議事録が残っている。

大山委員 その依存症対策としてですよ、週刊文春に載っていたんですけど(中略)その中でNPO法人の教育研究所の牟田武生理事長という方、この方のところには全国から不登校やひきこもりの相談が、ネットゲームだけではなくていろんな相談に来るらしいんですけれども、その人の発言によると、「最近、不登校・ひきこもりの相談件数の約60%がネットゲーム依存の子供で、さらにふえている状況にあります」というふうに答えているんです。
(中略)
教育長が把握しているよりも、この牟田武生さんが「不登校・ひきこもりの相談件数の約60%がネットゲーム依存である」というふうに言っているほうが正しいんではないかということを感じているんですが、どうでしょうか。
細松教育長 不登校とゲーム依存の状況について、20年度に不登校を含む長期欠席児童・生徒、小・中合わせて1,389人について、欠席している原因とその対応について、理由を学校に調べさせたところでございますけれど、その報告された限りにおいては、ゲームに没頭しているということが欠席の主たる原因というのは、小学校3人、中学校23人、計36人というような状況でございます。
大山委員 いやいや、そういうのではなくて、実態として、感覚として私はそういうような感じがするんですけれども、教育長、あなたがいつまでもそんなことばかり言っている間は、この問題は解決しないのですよ
細松教育長 失礼いたしました。

細松教育長の答弁資料は文科省香川県の公的統計である学校基本調査だと思われる。学校に通う児童数や学校数をはじめ長期欠席者や不登校児童の数を集計しているのが学校基本調査である。

香川県の学校基本調査によれば、1389人の長期欠席児童のうち36人、つまり、2.6%がゲームが主たる原因で不登校になっているという結果であった。

しかし、大山県議には、学校基本調査のような公的統計よりも『週刊文春』に書いてあった60%という数字の方が、信用が置けるものだったらしい。「そんなことばかり言っている間は、この問題は解決しないのですよ」と教育長に詰め寄っている。細松教育長はその後に謝罪をしているので、詰め寄っているというよりも叱りつけていると読んだ方が正しいだろうか。

大山県議の不適切な質問

一応、述べておくと『週刊文春』が悪いわけではない。文春で私見を述べている牟田武生さんが悪いわけでもない*1。問題なのは大山県議の質問の仕方である。

第1に、議員が議会で問題提起をして事務方を問い詰めるのであれば、研究発表がされているような客観的なデータを用いて行うべきである。『週刊文春』に載っていたという発言は雑談で行うべきで、議会で行うべきものではない。

第2に、大山議員の根拠のない「感覚」とは異なる回答をした細松教育長を謝罪に追い込んでいることが大きな問題である。自分の見解と異なるものに対して、物事の正しさなどは捨て置いて、権力で抑え込み、弱い立場の者に謝罪させている。これはパワハラ以外のなにものでもない。

香川県のネット・ゲーム規制条例という非科学的なというものが進められ、批判的な世論や客観的な研究などがことごとく無視されている理由が、大山議員の議会質問を読んでいると理解できるように思う。

大山議員の質問の流れ

議事録を流れで読んでいくと、大山県議がエキサイトしていることが良くわかる。議事録65番の発言では水本委員長に「大山委員、簡潔にお願いします。」という注意が大山県議に与えられている。議事録は発言の趣旨を残すものなので、実際の質疑では残されている議事録以上にまとまりがなかった可能性が高い。

63番の発言では「3年前からゲーム依存のことについて、どうするんだということを言っていますが、遅々として進まないんですよ。」と大山県議のいらだちがみえる*2

香川県議会の議事録(http://www.db-search.com/kagawa/index.php/)の検索すると大山県議がゲームについてたびたび質問や発言をしていることから、大山県議にとってゲーム規制はライフワークになったのだろう。

また、前回臨床心理士であったが、今回は「スクールカウンセラー」がディスられている。臨床心理士スクールカウンセラーへの恨みがどこかで醸成されたのは間違いなさそうである。スクールカウンセラーに対してゲーム脳の自説が響かなかったこともこの委員会で述べているので、ゲーム脳がらみの対立だったのかもしれない。

ちなみに大山県議に詰め寄られている細松英正さんは2008年4月から2014年3月まで6年間香川県の教育長をされた方のようだ。この議会の質問は2009年9月に行われているので、就任から1年半程度経った時に行われている。

議事録

議事録の該当箇所の前後も引用しておこう。

59 大山委員
大山委員 何か私が言っていることをはぐらかされているようだが、教育長、あなたにそんなことを望んでいない、教育長は何をしたいんだ、これから香川県をどう引っ張っていきたいんだということ、あなたには当たりさわりのない答弁を望んでいるのではない。そこのところはもう少し、私が個人的に話をする時の教育長は、非常に教育に対して意欲の高い人だというふうに思っておりますので、どうぞ要望として言っておきますので、よろしくお願いしたいとに思います。
 それと最後になりますけれども、ゲーム、インターネットの依存対策についてです。
 まずどなたが答えるかわかりませんが、もう一度確認しておきたいのですが、子供たちの中で今ゲームであるとか、最近はネトゲといいましてネットでゲームを引っ張ってくるオンラインゲームですね、これが非常に普及していっている、この市場が大きく膨らんでいっていると言われております。韓国では、これで殺人が起きたり、いろんな社会現象が起きてきているというニュースも出ております。そういう中でゲーム、それからネットゲーム、そういうものに依存症があるのかないのか、これをどう把握なさっているのか、教育長、あなたはこのゲームに対して、子供たちに依存症があるという認識に立っているのか、それとも依存症なんかないという方向でいっておられるのか、そのあたりをまず聞いておきます。
60 細松教育長
細松教育長 本県のゲームネットの依存症については、魚住先生が出した8項目にわたるチェックリストに基づいて、昨年の11月に小・中・高で、まずどんな状況であるかという調査しておりますけれど、その中で重度依存が1.4%、中度依存が4%、軽度依存が16%ということで、非常にというんですか、思った以上にネット依存の状況が高いなというような認識でおります。
61 大山委員
大山委員 要するに、依存症はあると認識されているということで結構なんですね。
 その依存症対策としてですよ、週刊文春に載っていたんですけど、「ネトゲ廃人」というのが載っていて、韓国の事例、それから我が国の事例なんかを取材している記事があるんですけれども、その中でNPO法人の教育研究所の牟田武生理事長という方、この方のところには全国から不登校やひきこもりの相談が、ネットゲームだけではなくていろんな相談に来るらしいんですけれども、その人の発言によると、「最近、不登校・ひきこもりの相談件数の約60%がネットゲーム依存の子供で、さらにふえている状況にあります」というふうに答えているんです。先ほど教育長が、うちの県は何%でどうだこうだという話をしておりましたが、この人の話からいうと、我々が実感として、私も子供を持っておりますが、PTAで学校に行ったり、いろんなところで子供たちが常にゲームをしていたり、例えば問題行動を起こした子供たちがゲーム依存であったり、そういうような状況が、教育長が把握しているよりも、この牟田武生さんが「不登校・ひきこもりの相談件数の約60%がネットゲーム依存である」というふうに言っているほうが正しいんではないかということを感じているんですが、どうでしょうか。
62 細松教育長
細松教育長  不登校とゲーム依存の状況について、20年度に不登校を含む長期欠席児童・生徒、小・中合わせて1,389人について、欠席している原因とその対応について、理由を学校に調べさせたところでございますけれど、その報告された限りにおいては、ゲームに没頭しているということが欠席の主たる原因というのは、小学校3人、中学校23人、計36人というような状況でございます。
63 大山委員
大山委員  いやいや、そういうのではなくて、実態として、感覚として私はそういうような感じがするんですけれども、教育長、あなたがいつまでもそんなことばかり言っている間は、この問題は解決しないのですよ。  これは3年前からゲーム依存のことについて、どうするんだということを言っていますが、、遅々として進まないんですよ。
 先ほどの地産地消ではないけれども、そういうような答弁を見ていたら、本気でやるのかやらないのか、それがわからないんです。そこのところのあなたの考えを聞いてるわけです、そんなデータのことを言っているんじゃないんですよ。
64 細松教育長
細松教育長 失礼いたしました。
 何というんですか、数の上、その割合の上で、圧倒的にゲーム依存が多いというような状況にまではまだ至っていないとは思うんですけれど、このまま何にも手を打たなければ、ゲーム依存とか、そういうものに歯どめがきかなくなって、今後ますますふえていくだろうということで、そういう認識は持っております。
65 水本委員長
水本委員長 大山委員、簡潔にお願いします。
66 大山委員
大山委員 簡潔にいきたいんですけれども、私の認識としては、教育長が今の現場を知らない、全く見ておいでにならない。
 私は、今の子供たちの異常現象であるとか、いろんな問題行動であるとか、不登校・ひきこもりの相当部分は、麻薬依存症に似たような感じのネットゲームの依存から相当大きく影響を受けていると思う。なぜ教育長はそこまでの認識が、いまだにないのかというのは、学校で、何とか委員会を立ち上げて学校カウンセラーとか、そんなのをやっていると思うんですけれども、その構成ですね。そういうものに対応する委員会みたいなものをつくっていると思うんですけれども、どのような人たちで構成なさっているのか、お聞きします。
67 細松教育長
細松教育長 今年度から教育センターのほうでゲームインター対策について、対応方策を取りまとめるということで取り組んでおりますけれど、その調査研究のメンバーとして、県外の研究指導員としては発達心理学を専門にしております白百合女子大の先生、それと県内の研究指導員としては教育心理学あるいは教育工学を専門にしている先生でございます。
 ただ、県外の研究指導員の田島先生については、専門は発達心理学というものでございますけれど、脳科学については、同じく川島先生という先生がいらっしゃるんですけれど、この先生といろいろ共同で取り組んでいるということで、脳科学についても十分見識があるというようなことで、この先生にお願いしているところでございます。
68 大山委員
大山委員 私は、その先生は、例えばゲームを研究してる専門の方ではないというふうに思っております。
 もっと問題なのは、例えばスクールカウンセラーの方々ですね、この方々に、こういう問題行動を起こす、ひきこもり・不登校に入った、そうしたら、この子はひょっとしたらゲーム依存症の延長でこうなっているのではないのだろうかという視点、この視点があればその発見は早くなる。しかし、その視点がなければ、そういうカウンセラーの人がどういうような意見を言うかというと、ひきこもりになると「様子を見ましょう」とか、「心の変化を見守りましょう」というような慎重な態度に出る場合が多々あるんですね、このほうが多い。
 そうなってくると、ゲーム依存の場合は、一日でも早くゲームから離さなければならない。しかし、そういうような観点がないカウンセラーがそこへ入ってくると、見守りましょうということで、長く引っ張られてしまうということになってしまう。
 ですから、この観点がある人が、その中に絶対必要になると思うんですけれども、そういうような対策をとるおつもりはあるのでしょうか、ないのでしょうか。
69 細松教育長
細松教育長 メンバーについては、先ほど申し上げましたとおりでございますけれど、今後この研究を進めるに当たって、ゲーム脳とか、やはり脳にいろんな作用することによって、キレるとか、問題行動を起こすと、これはゲーム脳だけじゃなくして、食べ物とかもかかわってきているということは、私もいろんな書物を読む限り、なるほどなと思って、そういうことがございますので、今後、必要に応じて、そうした専門家の意見も十分聞きながら、この研究を進めていきたいと考えております。
70 大山委員
大山委員  韓国では、07年から韓国青少年相談員が中学生のインターネット中毒者に11泊12日の合宿プログラムというのを行っておりまして、合宿では神経精神科の専門医との面談のほか、怒りを調整する訓練を行ったり、乗馬、陶芸、キャンプなどの体を使う楽しみを思い出させるとか、両親の役割も重要で2回の父母教育も含まれている。韓国では政府がこれに対してゲームメーカーに約10億円を拠出させて合宿制の治療プログラムを開発しているんですね。
 今の教育長の答弁を聞いていると、韓国では全く先に行ってしまっているわけで、日本はどういうわけか、ここのところの認識が全くないんですね。
 ですから、これは国の問題になってくるのかもわかりませんが、しかしそういう専門家の勉強であるとか、教育長がいろんな書物で勉強したのなら、そのことを教育現場に早く持っていこうという意識を、意識があればこういうような対応ができます。中国でも既に韓国の例に倣って3年間のプログラムを組むとか、そういうようなカリキュラムを中国でも既にやり始めている。
 日本だけが遅々として進まないという状況でありますので、そこのところを香川県からでいいので、国のやることを待っていたら遅くなりますので、そのあたりについて、香川県なりのそういうものに対する対策、それから、そういうような委員会をただ単に名前だけの人たちでやるのではなくて、そういう専門家の人を招いたものを早く立ち上げる必要があると思いますが、どうお考えでしょうか。
71 細松教育長
細松教育長 確かに、私もこの問題についていろいろ調べました。国のほうでも情動、専門的な名前は忘れましたけれど、情動工学でしたか、それについての専門委員会を立ち上げて、その結論が出ているのかと言えば、結論が出ていないまま、何か中途半端になっているということで、どうしたものかなと思ってはおるんです。
 そういう意味では、基本的に国のほうが積極的にやらなければ、世の中は動かないという部分の問題ではあろうかと思っているんです。
 そういう中で、キレるとか、いろいろ問題行動を起こす、それについてはやはり脳というのがかなり作用している。その脳については、社会的なつながりというものだけじゃなくして、いろいろ生活習慣の中でゲームに依存する、あるいは食生活でよく言われている缶コーヒーとかコーラとか、そういうものにかなり頼っている。そういうものが体のビタミンですか、そういう酵素とか、そういうものに大いに影響するということで、そういうものを多面的に認識した上で、現場で子供たちに当たっていくべきだろうと思っております。
 そういう面での、こういうような情報提供、まず、そういうことから取り組むということについては、現場のカウンセラーのほうにも伝えてございますし、今後きちんと伝えていければと思っております。

*1:わざわざ書く必要もないかもしれないが週刊誌には読み方が必要である。『週刊文春』は政治問題や収賄などを扱うこともあり、ニュースソースとして確かな場合もある。ただ、大山議員が引用したような記事は、ファクトチェックが甘い場合もあり、割り引いて読むことが必要である。週刊誌というものは、間違っているかもしれないが、間違いも含めて娯楽として読むものであろう。牟田武生さんがあげている60%という数字も、ゲームを主たる原因とした不登校児童の割合であれば多すぎるが、ゲームに熱中している不登校児童というとらえ方であれば、おかしな数字ではない。ゲームへの熱中によって社会生活が送れないのがゲーム依存・障害である。不登校になった原因は他にあり、不登校でゲームに熱中しているのはゲーム依存・障害とは言わない。

*2:2009年の3年前というと、2006年である。このことは大山県議が森昭雄著『ゲーム脳の恐怖』を読んだ旨は2006年10月の定例会でも発言している(参照)ため、発言は一致している。