井出草平の研究ノート

「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例に対する香川県弁護士会長声明に対する見解」の問題点

ねとらぼから。

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香川県ネット・ゲーム依存症対策条例に対する香川県弁護士会長声明に対する見解(香川県議会)

以前にでていた香川県弁護士会の声明に対しての香川県議会の返答である。
簡単ではあるが、問題点を指摘していこう。

ICD-11のゲーム障害

本条例の制定は、世界保健機関(WHO)が公表したICD-11において定義される「ゲーム障害」に定義される通り、持続的・反復的なゲーム行動が人の精神・行動に様々な障害をもたらすことが世界的な問題となっていることを背景としている。

ICD-11に「人の精神・行動に様々な障害をもたらす」といった定義はない。
下記のページから確認できる。

icd.who.int

ゲーム依存が学力・体力・精神に悪影響を及ぼす

これはまさに教育の現場において、臨床的に未成年者のゲーム依存が学力・体力・精神に悪影響を及ぼすあるいはその蓋然性が高いことが認知されており(別紙2参照)、本来は学校外のことであるにもかかわらず、その指導を行うことが社会的なコンセンサスを得ているためである。

「ゲーム依存が学力・体力・精神に悪影響を及ぼす」として示されている資料は「依存」ではなく「ゲームプレイ」についてのものである。依存と普通のゲームプレイの違いがわかっていないのだろうか。
加えて、相関関係は因果関係ではないので、このような分析は意味がない。この点は下記で説明している。

ides.hatenablog.com

社会的なコンセンサスが得られていないから、弁護士会も反対するし、他の多くの人たちが反対をしているのではないだろうか。社会的なコンセンサスが得られている問題というのは、反対運動など起きないものである。

憲法解釈と法律論

本条例は、子供に対し直接の義務を課すものではなく、また何らかの行為を禁止するものではないから、そもそも子供の自己決定権を何ら侵害しない。

義務と書かなければ、何を書いてもよいのが法律と思っているのだろうか。
憲法解釈や法律論がつたなく、香川県弁護士会の声明に何も反論できていないように思える。香川県弁護士会の声明にすでにきちんと書かれてあることなので、つけ加えることはない。

ゲームによる致命的影響

保護者が子供の余暇に無制限でネット・ゲームをさせることを許容し、あるいは子供に対する教育的責務を何ら果たさないことは、判断能力の未発達な子供に無限にゲーム等を行わせ、これによって、子供が学習するうえで大前提となる知性・精神に対する致命的な影響を及ぼす危険性があることは明らかである。

「致命的な影響」というのが説明されていないのだが、この条例の旗振り役である大山一郎さんの頭の中にあるのは、下記のようなものだろう。

ides.hatenablog.com ides.hatenablog.com ides.hatenablog.com

これが事実であればゲームは「致命的」な行動である。しかし、妄想でしかないので「どうしようもない人たち」としか言う他にない。