井出草平の研究ノート

齋藤万比古「義務教育期間に生じた不登校とひきこもりとの関連に関する研究(1)」

齋藤万比古・清田晃生・渡部京太・小平雅基・宇佐美政英・佐藤至子・林望美・瀬戸屋雄太郎,2006,
「義務教育期間に生じた不登校とひきこもりとの関連に関する研究(1)〜予備的研究〜」
『厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)総括研究報告書
 思春期・青年期の「ひきこもり」に関する精神医学的研究』


神経症*1にいる児童に対して随伴症状が調べられている。

 随伴症状としてひきこもりを一度でも認めたものは7名であった。この7名の特徴を表2に示した。このうち6名が全般的適応度の不適応群で,ひきこもりのない群に比べ有意に多い。一方,GHQ-28でみた精神健康度でも,有意差はないものの,臨床域に属する者が2/3と多かった。


この調査は「国府台病院」の児童精神科病棟に入院し、中学卒業をした94名に対する調査。回収は45名。神経症圏は28名で、その中でひきこもり状態を経験した者は7名という結果になっている。


研究要旨

 義務教育期間に生じた不登校と青年期におけるひきこもりとの関連を検討することが本研究の目的である。今年度は予備的調査として,国府台病院児童精神科病棟を退院または院内学校を卒業して3年以内の子どもを対象に,教育や仕事の状況,ひきこもりの有無,全般的適応度,精神健康度等について調査した。42名から回答(回収率45%)が得られ,診断別では発達障害圏5名,精神病圏9名,神経症圏28名であった。ひきこもりを一度でも認めたものは7名で,全般的適応度では不適応群が多く,また精神健康度でも2/3が臨床域のレベルであった。不登校の短期的予後として全般的適応度を考えると,登校状況,一仕事やアルバイト経験,ひきこもり,退院または卒業後1年目の適応度,精神健康度が関連する要因であった。
次年度の本調査では,ひきこもりの定義をより明確化すること/精神健康度や全般的適応度の両面から検討すること,教育上あるいは職業上の適応状態を経時的かつ具体的に把握することが重要であると考えられた。

*1:統合失調症などよりも軽症であり、病因が器質的なものによらない精神疾患のこと。社会不安障害パニック障害などが含まれる