潜在クラス分析の潜在変数を独立変数として使う場合には、いくつか方法がある。最も簡便なのは、潜在クラス分析の中に、従属変数を組み込んでしまう方法である。
パス図で示すとこの方法が合理的であることがわかるだろう。
近年になって一部の統計パッケージに実装されるようになった抹消結果(Distal Outcomes)を伴った潜在クラス分析であるDCAT法やBCH法を使う選択肢もある。詳細は、以前のエントリーを参照。現在は、DCAT法やBCH法が推奨されている。
この2つの推定法がどの程度違いがあるのかを検証してみたいと思う。
- モデル1 通常の潜在クラス分析。
- モデル2 潜在クラス分析の中に組み入れた分析。上記の図に相当するもの。表では独立変数をDistal Variablesとして表記。
- モデル3 DCAT法。表では応答確率とオッズ比を併記。
分析に使うのは、以前のエントリーと同じく、犯罪種別の潜在クラス分析である。婚姻ステータスを潜在変数の従属変数として設定している。従属変数の婚姻ステータスがカテゴリカル変数であるため、DCAT法を使用する。 分析の詳細はこちらを参照。
結果
結果の詳細は下部で示す。まずは結果をまとめる。
通常の潜在クラス分析(モデル1)と婚姻ステータスを従属変数とした抹消結果の推定(DCAT法)を用いたモデル3の応答確率(probability)は完全に一致している。また、フィッティングを判断する指標の数値も一致している。抹消結果を設定することによってクラス分類は影響を受けていない。
潜在クラス分析において、共変量や抹消結果を組み込んだ時に、もともとの潜在クラスの分類に影響を与えることがあり、時にはクラス数が変化してしまうこともある。これは分析をする上での悩みどころであるため、DCAT法は分析者にとつてはありがたい。なお、フィッテングの指標が完全一致しているということは、2ステップでの推定であるからである。
潜在クラスの中に従属変数を入れ込む方法(モデル2)と通常の潜在クラス分析(モデル1)を比較すると、クラス割合と応答確率は一致はしていない。詳細は下部の表を見てもらえるとわかるが、大きく異なるわけではなく、応答確率の小数点第3位以下で数値が変化している程度である。分析の重要な部分に影響を与えるほどの変化はない。この方法でも特段問題はなさそうである。
モデル2とモデル3の抹消結果/変数の応答確率は一致している。抹消結果を伴う潜在クラス分析(モデル3)は独立変数を潜在クラス分析の中に組み入れる方法(モデル2)の上位互換ととらえることができる。
DCAT法(モデル3)ではオッズ比(95%信頼区間)を利用して5%水準の有意差が見ることができる。検定で有意差を示すことができると、論文でも説得的に論を展開できるため、非常に有意義である。
まとめると、潜在クラス分析の中に従属変数を組み込む方法(モデル2)でも分析に問題はないが、DCAT法を使うと、ノーマルな潜在クラス分析と同じ応答確率が得られる結果が得られるという利点がある。また、潜在変数である各クラスと従属変数の有意差も示すことも利点である。もし、DCAT法やBCH法が実行できる環境であるならば、これらの方法をとるのが望ましいだろう。
フィッティング
モデル1 | モデル2 | モデル3 | |
---|---|---|---|
ΔG2 | 1043.653 | 1576.245 | 1043.653 |
Δd.f. | 472 | 980 | 472 |
BIC | 62480.379 | 70859.684 | 62480.379 |
Entropy | 0.665 | 0.665 | 0.665 |
クラス構成割合
モデル1 | モデル2 | モデル3 | |
---|---|---|---|
クラス1 | 0.20471 | 0.20407 | 0.20471 |
クラス2 | 0.26878 | 0.23642 | 0.26878 |
クラス3 | 0.11204 | 0.11138 | 0.11204 |
クラス4 | 0.41447 | 0.44813 | 0.41447 |
モデルごとの指標(顕在変数)の条件付き応答確率
クラス1
モデル1 | モデル2 | モデル3 | |
---|---|---|---|
PROPERTY | 0.141 | 0.141 | 0.141 |
FIGHT | 0.177 | 0.179 | 0.177 |
SHOPLIFT | 0.389 | 0.384 | 0.389 |
LT50 | 0.236 | 0.236 | 0.236 |
THREAT | 0.236 | 0.361 | 0.358 |
POT | 0.950 | 0.944 | 0.950 |
DRUG | 0.520 | 0.519 | 0.520 |
CON | 0.190 | 0.187 | 0.190 |
GOODS | 0.093 | 0.091 | 0.093 |
Single(Distal Variables) | 0.203 | ||
Single(Distal Outcomes) | 0.203 0.847[0.693-1.035] |
クラス2
モデル1 | モデル2 | モデル3 | |
---|---|---|---|
PROPERTY | 0.234 | 0.232 | 0.234 |
FIGHT | 0.494 | 0.495 | 0.494 |
SHOPLIFT | 0.259 | 0.259 | 0.259 |
LT50 | 0.172 | 0.169 | 0.172 |
THREAT | 0.640 | 0.632 | 0.640 |
POT | 0.311 | 0.308 | 0.311 |
DRUG | 0.021 | 0.017 | 0.021 |
CON | 0.335 | 0.335 | 0.335 |
GOODS | 0.095 | 0.095 | 0.095 |
Single(Distal Variables) | 0.317 | ||
Single(Distal Outcomes) | 0.317 1.538[1.288-1.838] |
クラス3
モデル1 | モデル2 | モデル3 | |
---|---|---|---|
PROPERTY | 0.773 | 0.771 | 0.773 |
FIGHT | 0.721 | 0.718 | 0.721 |
SHOPLIFT | 0.833 | 0.832 | 0.833 |
LT50 | 0.688 | 0.686 | 0.688 |
THREAT | 0.797 | 0.796 | 0.797 |
POT | 0.882 | 0.881 | 0.882 |
DRUG | 0.534 | 0.531 | 0.534 |
CON | 0.629 | 0.629 | 0.629 |
GOODS | 0.599 | 0.598 | 0.599 |
Single(Distal Variables) | 0.333 | ||
Single(Distal Outcomes) | 0.333 1.658[1.365-2.014] |
クラス4
モデル1 | モデル2 | モデル3 | |
---|---|---|---|
PROPERTY | 0.015 | 0.015 | 0.015 |
FIGHT | 0.075 | 0.072 | 0.075 |
SHOPLIFT | 0.051 | 0.050 | 0.051 |
LT50 | 0.037 | 0.037 | 0.037 |
THREAT | 0.066 | 0.066 | 0.066 |
POT | 0.184 | 0.183 | 0.184 |
DRUG | 0.007 | 0.006 | 0.007 |
CON | 0.060 | 0.060 | 0.060 |
GOODS | 0.001 | 0.000 | 0.001 |
Single(Distal Variables) | 0.231 | ||
Single(Distal Outcomes) | 0.231 1.000[1.000-1.000] |