井出草平の研究ノート

ゲームによる小児の弱視治療

小児の弱視をゲームで治療するという論文。ゲームは眼に悪いと言われているので意外な方法と思われる人もいるかもしれないが、ゲームを使った視力矯正の論文はたくさんある。今回は眼が悪いという感じのものではなく、眼鏡などで矯正しても1.0が出ない弱視についての論文である(弱視とは)

www.sciencedirect.com

標準的治療とゲームによる治療

3~8歳の小児でパッチを120時間当てた後の視力は平均で約1ライン(0.1 logMAR)改善するが、眼帯をすることになるため、実際には指示通り行うのは難しい。それに比べて、回復ペースの速いアクションビデオゲームは非常に魅力的だそうだ。

パッチというのはこういうもののようだ。 www.optometrystudents.com

実験の概要

弱視の子供を治療するための特注のアクションビデオゲームの試験を行った。
片側弱視(n = 12の不同視性弱視とn = 9の斜視)を持つ21人(n = 21)の小児(平均年齢9.95±3.14 [se])が対象。20時間のゲームプレイを行った。参加者の視力 (VA) 、ステレオ視力、読書速度をベースライン時、 10時間後、 20時間後に評価。追加の探索的解析により、トレーニング終了後6~10週間後の改善が検討された (フォローアップ) 。

ゲーム

Tournamentエンジンを使用して開発された子供向けのアクションビデオゲームを利用。Gambacorta et al.(2014)で使用されたで使用されたもの。約1時間、週に1〜3回のセッションで、合計20時間ゲームを行った。
https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S0042698918300580-gr2.jpg

結果

20時間の訓練後、 VAは、 2群間で平均0.14 logMAR (≈38%) 、単眼群で0.06 logMAR (≈15%) 改善した。同様に、両眼視トレーニング後の立体視力は0.07 log arcsec (≈17%) 、単眼トレーニング後の0.06 log arcsec (≈15%) 改善した。両治療群で不同視弱視の12人中7人が立体視力の改善を示し、斜視9人中1人のみが改善した。大部分の改善はフォローアップ時に維持された。

引用文献

Gambacorta, et al., Action video games as a treatment of amblyopia in children: A pilot study of a novel, child-friendly action game. Vision sciences society annual meeting abstract, Journal of Vision, 14 (2014), p. 665.
https://jov.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2144538