井出草平の研究ノート

娯楽ゲーム利用はインターネットゲーム障害と比較して、実行制御能力が高く、報酬処理時には動機付けプロセスに関係する脳領域の活性化が大きく、損失処理時には皮質の活性化が大きい

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  • Dong, G., H. Li, L. Wang, and M. N. Potenza. 2017. “Cognitive Control and Reward/loss Processing in Internet Gaming Disorder: Results from a Comparison with Recreational Internet Game-Users.” European Psychiatry: The Journal of the Association of European Psychiatrists 44 (July): 30–38.

インターネットゲーム障害における認知的コントロールと報酬・損失処理。娯楽としてのインターネットゲーム利用者との比較による結果
概要 インターネットゲームのプレイはインターネットゲーム障害(IGD)につながる可能性があるが、ゲームユーザーのほとんどは問題を発症せず、IGDを経験するのは比較的少数のサブセットのみである。ゲームで遊ぶことは健康に良い影響を与える可能性があるが、IGDは健康に悪い影響を与えることが繰り返し指摘されている。したがって、IGDの人、娯楽的な(問題のない)ゲーム利用(RGU)、非・低頻度ゲーム利用(NLFGU)の違いを理解することが重要である。IGD患者は、非ゲーマーとの神経活動の違いを示しているが、IGD患者、RGU、NLFGUの間の神経の違いを調べた研究はほとんどない。IGD患者18名、RGU患者21名、NFLGU患者19名を対象に、カラーワード・ストループ課題と報酬・損失処理を評価する推測課題を実施した。また、行動データと機能画像データを収集し、グループ間で比較した。RGUとNFLGUの被験者は、IGDの被験者と比較してStroop効果が低かった。RGU被験者は、IGD被験者と比較して、Stroopパフォーマンス中の前頭皮質活性化の脳内活性化が少なかった。推測課題では、RGU被験者はIGD被験者と比較して、勝った結果の処理時に皮質-線条体の活性化が大きく、負けた結果の処理時に前頭脳の活性化が大きかった。これらの結果から、RGUはIGDと比較して、実行制御能力が高く、報酬処理時には動機付けプロセスに関係する脳領域の活性化が大きく、損失処理時には皮質の活性化が大きいことが示唆された。これらの知見は、RGUとIGDを区別する神経および行動の特徴を示しており、RGUがオンラインゲームを頻繁にプレイする動機を持ちながら、IGDを発症しないメカニズムを示唆していると考えられる。