井出草平の研究ノート

監訳者・川島隆太さん「反抗期」を精神疾患にしてしまう-ダンクリー『子どものデジタル脳 完全回復プログラム』

日本語訳

研究から、メディアの消費量とそのような問題行動との間に関連性があるとわかっている。「反抗期障害」は、「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」に掲載されている実際の診断名だが、現実には、それらの症状はほとんどの場合、ADHDやトラウマなどより具体的なものと関連している。(p.118)

日本語版を読んでいて思わず「そんな診断名ねーよ」と突っ込んでしまったが、前後の文脈で翻訳の問題であることは明らかだったので、原文を確認してみた。

原文

research suggests that there ’s a link between amount of media consumption and such disruptive behaviors. Although “oppositional-defiant disorder” is an actual diagnosis listed in the DSM, in practice these symptoms are virtually always related to something more specific, such as ADHD or trauma.(p.78)

証拠としてはDSM-5の日本語版(p.454)のスクリーンショットを掲載しておこう。

反抗挑発症、もしくは反抗挑戦性障害と翻訳するのが正しい。
些細なことだが、原文も間違っていて、oppositionalとdefiant間にハイフンは不要である。

もちろん「反抗期」とは全く関係はない。

「反抗期障害」なんてものをよく知らない人が読んだら、精神疾患は「反抗期」まで精神疾患にしているのか!(怒)となってしまうだろう。はたまた、反抗期はADHDやトラウマに関係しているととんでもない読み方をしてしまうかもしれない。

川島隆太さんの監訳、大丈夫なのだろうか。