井出草平の研究ノート

日本においてはゲームの使用時間と視力悪化には関係がみいだせない

学校で行う視力測定データ(学校保健統計調査)を用いた研究。

journal.nichigan.or.jp

  • 枩田亨二・ 横山連,2014,「政府統計による小学生の視力不良の経年推移と関係因子の解析」『日本眼科学会雑誌』 118: 104-110.

対象

学校保健統計調査における統計データを用い,小学生の裸眼視力不良者割合の経年推移について検討した.この調査は毎年4月~6 月に実施される大規模なものであり,2012年度の場合,身長体重などの発育状態調査は全国小学生の4.9%抽出270,720人,視力などの健康状態調査は23.4%抽出1,333,838人を対象としている.

結果

年度ごとに行ったすべての単回帰分析において,身長と視力不良との間には高身長の県ほど視力不良者が多い正の関係(p<0.01)が認められた.この回帰関係は説明変数から日照時間を除いて重回帰分析を行った場合でも明瞭に認められたが,日照時間を含めた重回帰分析では身長と視力不良との聞に有意の関係は認められなかった.一方,日照時間と視力不良との間には単回帰分析, 重回帰分析ともに4つの対象年度のすべてで日照時間が長い県ほど視力不良者が少ない負の関係が認められた(単回帰p<0.01, 重回帰p<0.05). これに対し,学習時間,テレビゲーム時間,睡眠時間は,2010年度に睡眠時間が負の関係を示した(単回帰p<0.05,重回帰p<0.01)ことを除くと, 視力不良と有意の関係を認めなかった(表2).

f:id:iDES:20200712065904p:plain

感想

47都道府県のマクロデータでの単/重回帰分析を行われている。 分析は単年度ごとにされているようだ。
この分析でも、他の分析でも結果は変わらないとは思うが、経年データがあるのであれば、パネルデータとして扱うのが望ましい。単年度ごとに分析をしてしまうと47ケースの分析だが、経年要素を含めると47都道府県×年数のケースで分析を行えるので、より望ましい。ただ、時系列・タイムシリーズデータは「変化」をみる分析で、この研究の目的とは使い方が異なる。他にとれる選択肢は、すべて年次のデータをプールして解析することではないかと思う。