井出草平の研究ノート

「性同一性障害」は病気なのか? 厚労省に当事者クレーム→削除の影にみられる複雑な事情(BuzzFeed News)

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「しかし、医療的対応を求める方も多く、医療により心身の状態が改善する方も多いため、医療が必要な状態として取り扱うことが必要なことは確かです。それにもかからず、健康保険の適用がなく、自費で多額の費用を払わなければならない状況があり、健康保険の適用を求めてきました」
「このときに『趣味で手術しているなら自費でよいでしょ』と言われるため、『疾患です』と主張することになります。このことを丁寧に説明していくことが重要と考えています」

性同一性障害に障害(Disorder)という言葉を使うか、違和(Dysphoria)を使うかは表現上は大きな問題にはなるが、学術的な些末な問題である。 DSMに掲載されるということは、精神障害である。つまり、Mental Disordersの一つなのだから、表現を変えたところでDisorderである。

本質的な問題はDSMに掲載するか否か、LGBT関連の事柄を診断基準に掲載するか否かである。
こちらは意見の分かれるところであろう。

ところで、精神障害(Mental Disorder)は病気・疾病(Illness)ではない。これが割と重要である。
うつ「病」や躁うつ「病」など病気の「病」を使う慣例があるため、混同されることが多いが、精神障害は全て「病気」ではない。

このあたり、用語の使い訳が不十分なところがある。
それは、疾病(Illness)と疾患(Disorder/Condition)が混同されて使われているところである。
Mental Disordersは精神障害精神疾患という2つの翻訳がある。これは日本語の表現であって、指し示すのはどちらもMental Disordersである。
疾患と疾病という日本語はよく似ているので、混同されて使われることが多いが、疾患は疾病は異なる状態のものを指すし、疾患は病気ではない。

つまり、性同一性障害が診断基準に掲載され、精神疾患と位置づけられていたとしても、疾病/病気ではない。

1)LGBT関連のものを診断基準に乗せることの是非と、2)精神障害が病気だという誤解を分けて議論する必要があるだろう。