新型コロナ流行下におけるゲームと#HealthyAtHome

akjournals.com

  • Daniel L. King, Paul H. Delfabbro, Joel Billieux and Marc N. Potenza, 2020, Problematic online gaming and the COVID-19 pandemic, Journal of Behavioral Addictions: 184–186.

ゲーム時間の増加

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによってデジタルエンターテインメント、特にオンラインゲームや関連活動(例:esports視聴やビデオゲームストリーミング)の消費が増加している(Javed, 2020; Perez, 2020)。例えば、米国に本拠地を置く通信プロバイダーであるベライゾンは、当初のステイ・アット・ホーム指令と一致してオンラインゲーム活動が75%増加したと報告している(Pantling, 2020)。イタリアでは、Fortnite関連のインターネットトラフィックが70%増加したと報告されている(Lepido & Rolander, 2020)。ゲーム配信大手のSteamは、16年の歴史の中で最多となる2000万人以上の同時アクティブユーザー数を報告し、ライブストリーミングプラットフォームのYouTube GamingとTwitchは、視聴者数が10%増加したと報告している(Stephen, 2020)。

#PlayApartTogetherと#HealthyAtHome

オンラインゲームの増加は、空間的な距離感を促進する公衆衛生の取り組みを補完するものとして認識されている(Abel & McQueen、2020年;Businesswire、2020年)。世界保健機関(WHO)は、オンラインゲームの奨励と併せてコロナウイルス予防ガイドラインに関するWHOのメッセージを盛り込んだゲーム業界のオンラインソーシャルメディアキャンペーン(#PlayApartTogether)への支持を表明している(Ghebreyesus, 2020; Maden, 2020)が、最近のWHOのメンタルヘルス情報(#HealthyAtHome - Mental Health)では、バランスのとれたスクリーンタイムとゲームを推奨している(WHO, 2020)。

HealthyAtHomeは以下のページ

www.who.int

Video games. While video games can be a way to relax, it can be tempting to spend much more time on them than usual when at home for long periods. Be sure to keep the right balance with off-line activities in your daily routine. ビデオゲーム:ゲームはリラックスする手段ですが、長時間家にいると、いつもよりずっと多くの時間をゲームに費やしたくなることがあります。日常生活の中で、オフラインの活動との適切なバランスを取ってください。

日本でも#PlayApartTogetherは話題になったが、#HealthyAtHomeはあまり知られていない。もちろん内容的には日本のニュースでも取り上げられていると思うが。

オンラインゲームの良い点

オンラインゲームは確かに人々の生活を豊かにするかもしれない(Granic, Lobel, & Engels, 2014)。ソーシャル化やストレス軽減のためにゲームを促進する#PlayApartTogetherのような取り組みは、良い結果をもたらす可能性がある。研究のエビデンスは、ゲームへの高い関与が必ずしも問題ではないことを示しており(Király, Tóth, Urbán, Demetrovics, & Maraz, 2017)、ほとんどの人にとってゲームは社会的に適応的な行動であり(Billieux, Flayelle, Rumpf, & Stein, 2019)、孤独感を軽減する可能性があることが示されている(Carrasら, 2017)。さらに、ゲームは一般的に、アルコールや薬物の使用(Corbin, Farmer, & Nolen-Hoekesma, 2013)や過食(Razzoli, Pearson, Crow, & Bartolomucci, 2017)など、ストレスや回避的な感情に対処するために使用される他の多くの潜在的な行動よりも有害ではない。ゲームはでにゲーム機器を所有している人にとっては比較的安価であるかもしれない。

オンラインゲームの悪い点

しかし、ゲームの大幅な増加は必ずしも有益なものではなく、未成年者やゲーム障害の影響がある人やリスクのある人を含む脆弱な人々にリスクをもたらす可能性があることを認識することは重要である(King, Koster, & Billieux, 2019)。精神的健康、睡眠パターン、身体的健康への害など、過度なゲームの悪影響が認められている(Saunders et al., 2017)、仕事や学校での家庭内での習慣が課せられているため、それを見極めるのは難しいかもしれない。長期間の孤立、テクノロジーに基づく活動、限られた対面での交流は、不健康なライフスタイルのパターンを定着させ、テクノロジーに関連した障害を強め、COVID-19の危機が去ったときに社会へ適応する難しさにつながる危険性がある。

論調

近年のジャーナルでは、ゲーム障害・依存症が誰にでも起こることではなく、ほとんどの人にとっては健康的なことであるという書かれ方である。他の依存症や精神障害でも、生得的なリスクが高い人=脆弱性への言及はよくあることである。脆弱性のある人が、パンデミックという環境の中で、避けられたかもしれない精神の不調に見舞われるリスクが上がる点への警鐘がされている。

国内世論や香川県の条例など日本で展開される議論は時代遅れなのだが、英語で一般のニュースを読んでいても、似たような論調のものはよく見かけるので、日本の世論形成だけが拙いというわけではない。むしろ気になるのは、日本でゲーム障害や依存症の指導的立場にある学者の時代遅れな考え方と保守層との結びつきである。