インターネット依存症になる要因はADHD、継続する要因は自閉症とADHD

弘前大学のグループの研究。

www.hirosaki-u.ac.jp

link.springer.com

インターネット依存症について潜在的移行分析(latent transition analysis)を用いて2年間の移行パターンと安定性について調べた研究。小学生を対象とした調査(9~12歳)で5483名が対象。2年間のインターネット依存症クラスの安定率は47%、インターネット依存症への移行率(非インターネット依存症からインターネット依存症へ)は11%であった。

維持、移行それぞれの要因を探るべく、回帰分析をした結果、自閉症特性はインターネット依存症の持続パターンを予測し、ADHD特性はインターネット依存症の維持と移行を予測した。

元論文のインターネット依存症はInternet Addictionである。計測した尺度はYDQ、ASSQ、ADHD-RSとすべて自記式であり、専門家による診断ではないという点は注意が必要だが、その代わりに5483名と大きな標本での分析ができているため、信頼性は比較的高いと思われる。

データ

2016年9月から2018年9月まで毎年地域密着型の調査を実施し、弘前市の国公立学校に通う児童生徒を対象に見込み調査を行った。調査開始時の年齢は小学4年生から7年生(9~12歳相当)であった。2016年、2017年、2018年の各時点をそれぞれ時点1(T1)、時点2(T2)、時点3(T3)と定義し。各時点で、各学生の保護者に研究に関する情報を記載した手紙を郵送した。

尺度

インターネット依存症

インターネット依存症の評価にはヤング診断質問票(YDQ)。

自閉スペクトラム症

自閉症スペクトラムスクリーニング質問票(ASSQ: Autism Spectrum Screening Question-naire)(Ehlers et al. 1999)。

  • Ehlers, S., Gillberg, C., & Wing, L. (1999). A screening questionnaire for asperger syndrome and other high-functioning autism spectrum dis-orders in school age children. Journal of Autism and Developmental Disorders,29(2), 129–141.

反復的で制限された興味や行動のような他のASDの特徴は、インターネット依存症の強迫的な性質を考えると、インターネット依存症でありつづけることに関連する可能性がある。自閉性を持つ人は、認知的硬直性のために、保続的であり、インターネット依存症の状態を維持したいと思っているのかもしれない(抄訳)。

議論のところで書かれている分析。

ADHD

ADHD Rating Scale(ADHD-RS)(DuPaul et al. 1998)の2つの質問票を用いて、神経発達障害の特徴を測定した。

  • DuPaul, G. J., Power, T. J., McGoey, K. E., Ikeda, M. J., & Anasto-poulos, A. D. (1998). Reliability and validity of parent and teacher ratings of attention-deficit/hyperactivity disorder symptoms. Jour-nal of Psychoeducational Assessment,16(1), 55–68. https ://doi.org/10.1177/07342 82998 01600 104.

潜在クラス分析

潜在クラス分析で発見されたのは下記の3つのクラスであったようだ。

  • pathological internet use(PIU)
  • excessive internet use (EIU)
  • normative internet use (NIU)

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この表をみると4クラス支持の方が多い気がするが、補足資料で3クラスを選択した理由が説明されている。クラス数をどのように決めるかは、探索的因子分析と確証的因子分析の関係と同じで、研究者の判断である程度決めてよいので、まったく問題はないと思う。

唯一、気にかかるのは表の下欄の略語の記載にBLRTと書いてあるが、表にBLRTがないことである。VLMR-LRTがあるので、BLRTはなくても問題はないと言えばないのだろう。VLMR-LRTはあまりよく知らないのでまた調べてみようと思う。

潜在移行分析

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時点1から時点3で病的使用から問題がなくなった(NIU)のは14%で、やり過ぎ(EIU)は40%である。足せば、1から維持率0.47を引いたものになる。問題がなくなったグループのほとんどは、まったく問題がなくなったわけではなく、和らいだと理解した方が良さそうだ。

時点1で問題がなかった(NIU)だったのに、時点3で病的使用(PIU)となったのは3%であり、病的使用までエスカレートすることは稀であることがわかる。なお使いすぎ(EIU)に移行するのは8%で、3%と8%を足した数が要旨などで報告されている11%になる。

インターネット依存が稀なことか、よくあることかという判断は恣意的だが、おそらく、使いすぎグループ(EIU)が臨床的にどの程度問題を抱えているのか、という点が焦点になるように思う。

ロジステック回帰分析

維持要因の分析。 f:id:iDES:20200925004016p:plain

移行要因の分析。 f:id:iDES:20200925004025p:plain

先行研究

自閉症スペクトラム障害ASD)や注意欠陥多動性障害ADHD)などの神経発達障害(NDD)を持つ一般人では、典型的な発達の人に比べてIAの有病率が高いことが報告されている(So et al.2017)。

  • So, R., Makino, K., Fujiwara, M., Hirota, T., Ohcho, K., Ikeda, S., et al. (2017). The prevalence of internet addiction among a Japanese ado-lescent psychiatric clinic sample with autism spectrum disorder and/or attention-deficit hyperactivity disorder: A cross-sectional study. Journal of Autism and Developmental Disorders,47(7), 2217–2224. https ://doi.org/10.1007/s1080 3-017-3148-7.

一般集団サンプルにおけるASDスペクトラム(Liu et al. 2017)およびADHDスペクトラム(Wang et al. 2017)とIAの関連が報告されており、これらの障害および形質がIAのリスク因子となりうることが示されている(Gwynette et al. 2018; Wang et al. 2017)。

  • Liu, S., Chengfu, Yu, Conner, B. T., Wang, S., Lai, W., & Zhang, W. (2017). Autistic traits and internet gaming addiction in Chinese chil-dren: The mediating effect of emotion regulation and school con-nectedness. Research in Developmental Disabilities,68, 122–130. https ://doi.org/10.1016/j.ridd.2017.07.011.

  • Wang, B.-Q., Yao, N.-Q., Zhou, X., Liu, J., & Lv, Z.-T. (2017). The asso-ciation between attention deficit/hyperactivity disorder and internet addiction: A systematic review and meta-analysis. BMC Psychiatry,17(1), 260. https ://doi.org/10.1186/s1288 8-017-1408-x.

  • Gwynette, M. F., Sidhu, S. S., & Ceranoglu, T. A. (2018). Electronic screen media use in youth with autism spectrum disorder. Child and Adolescent Psychiatric Clinics of North America,27(2), 203–219. https ://doi.org/10.1016/j.chc.2017.11.013.

ASD患者の電子機器の使用率、特に社会的関与をほとんど必要としない問題のあるビデオゲームの使用率が、一般的な発達障害者と比較して高いことが報告されている(So et al. 2017; Mazurek et al. 2012)

既存の横断的研究では、インターネット依存症は人間関係の課題、幸福度の低下、学業成績の低下、不安やうつ病などの精神病理と関連していることが示されている(Yücens and Üzer 2018)

  • Yücens, B., & Üzer, A. (2018). The relationship between internet addiction, social anxiety, impulsivity, self-esteem, and depres-sion in a sample of Turkish undergraduate medical students. Psy-chiatry Research,267, 313–318. https ://doi.org/10.1016/j.psychres.2018.06.033.

横断的研究では、ASDを持つ個人におけるビデオゲームの使用は、インターネット依存症の中核症状とは関連していないことが明らかになっている(Mazurek et al. 2012)。

  • Mazurek, M. O., Shattuck, P. T., Wagner, M., & Cooper, B. P. (2012). Prevalence and correlates of screen-based media use among youths with autism spectrum disorders. Journal of Autism and Develop-mental Disorders,42(8), 1757–1767. https ://doi.org/10.1007/s10803-011-1413-8.

先行研究では、問題のあるインターネット利用と家族機能や子育てスタイルとの関連性が報告されている(Chen et al. 2015)

  • Chen, Y.-L., Chen, S.-H., & Gau, S.-F. (2015). ADHD and autistic traits, family function, parenting style, and social adjustment for internet addiction among children and adolescents in Taiwan: A longitudinal study. Research in Developmental Disabilities,39, 20–31. https ://doi.org/10.1016/j.ridd.2014.12.025