ニアワーク(Near work)とは読書、勉強(宿題、ライティング)、コンピュータの使用、ゲームのプレイ、テレビの視聴など、近距離で行われる活動である。ゲームが視力に悪影響を与えるという話を好んでする眼科医がいるようだが、研究レベルで問題になっているのは読書と勉強である。
近視の中には高度近視(high myopia)があり、近視性網膜変性症、網膜剥離、緑内障、白内障、視覚障害、失明などのいくつかの眼疾患のリスクの増加と関連しているため、重要な公衆衛生上の問題となる。
傍証の一つとして挙げられるのは法学部生や医学生など高学歴集団では近視の有病率は80%を超えていることである。
また、放課後に塾に通う国の学生ほど近視の割合が高いという指摘もある。
ことから長時間の勉強が視力に悪影響を与えることが指摘されてきた。 しかし、ニアワークと近視の関係はそれほど単純ではないようだ。
ニアワークと近視
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov シンガポール。社会経済的地位とニアワークは近視の進行とは関係がなかった。
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 中国農村部、西昌市。ニアワークに費やされた時間と屋外での時間は、年齢、性、および親の教育を調整しても、近視との関連は認められなかった。
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 中国広東省の農村部と都市との比較。人口密度が高いほど近視リスクと関連しているが、学業活動、屋外で過ごす時間、家族の教育レベル、経済発展とは無関係であった。
シンガポールの中国人学校。近視の家族歴は、就学前の近視に関連する最も強い要因。ニアワークや野外活動は初期の近視に関連がなかった。
メタアナリシス
ニアワークと近視のメタアナリシスもある。
ニアワーク活動に費やす時間が多いほど近視のオッズが高くなることが分かった。ただし、オッズ比は1.14(95%信頼区間[CI]=1.08~1.20)と決定的な要因とは言いづらい。また。矯正視力で週1時間ニアワークが増加すると近視のオッズは2%増加した(OR:1.02;95%CI =1.01~1.03)。
近視とニアワークの時間比較
近視と近視ではない者のニアワークの時間を比較をしたのが下記の表である。
1週間あたりの平均差時間(95%CI) | 異質性(I2) | |
---|---|---|
読書 | 0.66 (0.16 to 1.17) | 8% |
勉強 | -0.01 (-0.60 to 0.57) | 71% |
テレビ視聴 | -0.22 (-0.96 to 0.51) | 66% |
コンピュータまたはゲームのプレイ | 0 (-0.60 to 0.57) | 54% |
考察
今のところのエビデンスを総合すると、家族歴が最も強い要因であるのは間違いなさそうである。つまり、近視の親の子ども近視になりやすいということだ。農村よりも都市部の方が明らかに近視になる率は高いが、教育レベル、屋外で過ごす時間、経済状態などの指標とは関連を見い出せていない。これらの指標では測れない都市化が影響があるのだろう。都市生活そのもの(遠くを見ることがないなど)が視力に悪い影響を与えている可能性も考えられるだろう。メタアナリシスでは、ニアワークも効果は弱いものの、近視への影響がみられている。勉強、読書、ゲーム、テレビなど近くを見る作業をする際には、20-20-20ルール(参照)を導入するなど眼をできるだけ守ることが推奨される。